WorkVision®コラム「経営テレスコープ」

Vol.1信じてみよう、自社の現場力。

経営と現場の情報共有

「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ。」この台詞に大きく頷いたビジネスマンはきっと多かったのではないか。あくまで映画の中の世界ではあるものの、会議室から口先だけの指示を送られても、現場には現場の判断があり、現場を知ることこそ事件解決の本筋であることをこの台詞は物語っている。ビジネスマンにとって臨場感ある名言として心に焼き付いたはずだ。なぜ、心に響いたのか。理由を一つだけ上げるとすれば、現場のことを経営層が解っていないと普段から感じる現場人が多いからだろう。これは、ビジネスにおいて一致しなければならないベクトルにギャップが生じていることと言い換えることができる。

ここで実際のビジネスシーンを思い浮かべてみよう。仕事のプロセスでは、往々にして過去の経験、定められた規準、固定化された仕事の進め方によって、取り組むべき本当の課題を見失い、気付かないままになっていることがある。本来なら、経営層と現場はこの課題を常に共有しておかなければならない。そして、共有すべき課題のほとんどは、過去の現場の教訓から生まれていることも忘れてはならない。

現場力は三層構造

このような状況下で、「現場の気付き」が企業競争における勝敗を左右する時代になってきた。今、気付きをビジネスの発展に変換するのが「現場力」と言われている。現場力は、第一に組織の「基礎力」でなければならないはずだ。つまり、ビジネスにおいて当たり前を当たり前に実践する能力だ。次に、「改善力」という側面を持つべきだろう。現状に満足せず、少しでも前に進めようとする意識が、現場を構成する個々に宿っていなければならない。さらに、「革新力」も必要だ。これは、日々の気付きを吸収し、未だ見ぬ価値を生み出す能力だ。新商品や新サービスといった最終形はもちろん、時代を先取りするコンセプトメイクでもある。組織の「基礎力」が盤石であると、その上に「改善力」が自然に蓄積されてくる。同様に、「改善力」の延長線上には「革新力」が養われてくるものだ。一足飛びに新規ビジネスに成長の場を求めるのも良いが、自社の現場力を確かめ、改めて現場を信じてみるのも必要ではないだろうか。

※1998年公開「踊る大捜査線THE MOVIE」(監督:本広克行 脚本:君塚良一 主演:織⽥裕⼆ 製作会社:フジテレビジョン 配給:東宝)より引用