WorkVision®コラム「経営テレスコープ」

Vol.7マーケティングの様変わりを直視せよ。

内向き志向が今の本流

Question「外国人観光客が選ぶ日本の人気の観光地は?」→Answer「京都」
Question「外国人観光客が選ぶ人気の日本食は?」→Answer「寿司」
この類いのアンケートは数々あると思うが、この二つの回答は、かなりの確率で1位にランクするだろう。一年を通じて観光客で溢れかえる京都も、廻る/廻らないに限らず多店舗展開する寿司チェーンにも、今では外国人の姿を見かけない日はない。

私たちは、彼らのことをいつしか「インバウンド」と呼ぶようになった。「Foreign tourists」ではだめなのか、と言いたくなるが、「Inbound」はそもそも「内向き・中に入ってくる」という意味をもつことから、旅行業界では「インバウンドツーリズム」としてこれまでも使われてきた。

さらに、インバウンドはマーケティング用語としても定着している。消費者の行動様式に合わせた様々なコンテンツがWeb上で公開されていることを受け、人々は自らの意志で情報を取りに行くようになった。見込み客を獲得するために、検索エンジンで上位に表示させたり、SNSで情報を拡散させたりする企業の動きも目立ってきている。自分の関心事だけに自発的行動を起こす内向き志向者に応えるため、売る側から有意義な情報を受け取る仕組み、インバウンドマーケティングが主流になっているのだ。

内と外のバランスがミソ

世の中、入口があれば出口もある。だから、インバウンドマーケティングもあれば、外向きで追いかけ型のアウトバウンドマーケティングもある訳だ。しかしこれは、明らかにその効力に翳りが見えてきた。訪問販売員による勧誘、電話によるセールス、繰り返し投入されるポスティングチラシなど、これらがあまりに執拗だと押し売りを受けている気分になってしまう。

では、マスメディアを用いた広告はどうだろう。情報発信のタイミングや情報内容によって、メディアとの接触度に差が出るため、外向きの情報発信だけを基準に広告活動を行ってもロスが大きくなるのは当たり前だ。とりあえずメディアの特性を生かして購買者の注目を集めた後は、「詳しくはWebで検索」という伝家の宝刀を取り出し、インバウンドマーケティングの助けを乞うようになった。これなら、見込み客自身が自分で調べる余地を残すので、情報がシャットアウトされる可能性は低くなる。こう考えれば、入口と出口のバランスを考慮したマーケティング戦略が立てられるというものだ。

外向き発信だけに頼る時代は既に過ぎた。内向きを上手く取り入れれば、日本人がこれまでのように接していた「京都」や「寿司」でも、外国人観光客が使うマネーを当てにする以外に、まだ見ぬ “インバウンド効果”が見込めそうな気がしてくる。