総務人事システムの再構築
アウトソーサー選定のポイント
第15回 アフターコロナに向けて行うべき総務・人事業務の見直し③
2020年09月29日
Index
社会保険労務士 深瀬 勝範
アフターコロナに向けて総務・人事業務の抜本的な見直しを行う中で、現行の総務人事システムの再構築や給与計算を委託している業者(アウトソーサー)の入れ替えを検討することにもなるでしょう。
ここでは、アフターコロナを見据えたうえでの、システム再構築やアウトソーサー選定のポイントについて、説明します。
1. システム選びの主なポイントは、「情報の一元管理」と「電子化への対応」
システムの再構築にあたっては、以下の点をポイントに検討されると良いでしょう。
(1)人事情報を一元的に管理できること
前回のコラムでは、総務・人事業務の見直しにおいて、採用支援、勤怠管理、給与計算などの業務ごとに運用されているシステム間のデータの受け渡しに伴う確認作業や重複作業を削減することの必要性について説明しました。これを実現するためには、それぞれのシステムを別個に構築するのではなく、従業員に関するすべての情報を管理するデーターベースの上に業務ごとのシステムが構築・運用されている、「人事情報を一元的に管理できるシステム」を選ぶと良いでしょう。
このようなシステムは、業務の無駄を省くだけではなく、今後、人事情報を活用した人材配置の適正化を行うときなどに大きな力を発揮します。
(2)リモート、電子化に対応していること
今後、業種や職種によっては、テレワークが常態化することが見込まれます。テレワークを行う従業員の勤怠管理ができることは当然のこととして、総務人事部員が在宅勤務する場合も安全に使えるシステムを選ぶと良いでしょう。
また、行政手続きの電子化が急速に進むものと見込まれていますから、官公庁等に提出する書類の作成から、申請、保管までをペーパーレスで一貫して行うことができるシステムを選ぶべきです。
(3)複雑な労働時間管理に対応していること
在宅勤務の広がり、働き方改革の進行により、労働時間管理が複雑化しています。これに対応するために、次のような機能をもつシステムを選ぶことが必要です。
- 残業時間の上限を超えそうな従業員等に注意喚起を促すメールを自動発信する機能
- 就業と休憩(中抜け時間)を繰り返す等、変則的な働き方にも対応できる機能
- 就業場所ごとの労働時間、健康管理時間(出社していた時間と社外での労働時間の合計)、勤務間インターバル時間(前日の終業から始業までのプライベートな時間)、および副業先での労働時間の記録や集計もできる機能
- 従業員本人が申告した労働時間以外にも、パソコンのログイン・アウトの時刻、または会社の入退室時刻を記録する等、仕事に関わっていた時間のデータを収集、管理することができる機能
2. アウトソーサーは、複数の拠点をもつ事業者を選定すること
給与計算などを委託している業者(アウトソーサー)の見直しを検討するときにも、システムと同様に、「電子化への対応」や「今後の法改正に的確に対応できること」などがポイントになります。
なお、アウトソーサーを見直す場合は、それに加えて「複数の事業所をもつこと(災害発生時に、別の事業所で業務を継続できること)」も重要な選定基準となります。
アフターコロナの時代になっても、地震や台風等の自然災害により、一部の地域が一時的に事業ができない状態に陥る危険性があります。複数の事業所を持ち、データを複数の事業所で管理している(データのバックアップ体制が万全である)アウトソーサーであれば、ある地域の営業がストップしても、別の地域で委託された仕事を続けることができます。
3. 今は、システムやアウトソーサーの見直しを行う絶好のチャンス
「総務人事システムやアウトソーサーの見直しを行いたいが、今は、新型コロナウイルス対応で忙しくて、それどころではない」と思われるかもしれませんが、むしろ逆に考えるべきです。
新型コロナウイルスによって、働き方や仕事の進め方に大きな変化が起こっている今だからこそ、その変化に対応できるように、システムやアウトソーサーの見直しを行わなければなりません。そして、現在の厳しい状況下においても、業務フローの抜本的な見直しを行い、業務効率化と戦略人事化を実現できた会社が、アフターコロナの時代を勝ち抜くことができるのです。
このコラムでは、日本企業が行うべき総務・人事業務の見直しのポイントや進め方などについて解説してきました。これを参考にして、皆様の会社におかれましても、アフターコロナに向けた総務・人事業務の見直しを進めていただきたいと思います。
著者プロフィール
社会保険労務士:深瀬勝範
Fフロンティア株式会社代表取締役。人事コンサルタント。社会保険労務士。
1962年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社などを経て、経営コンサルタントとして独立。
人事制度の設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動など幅広く活躍中。