2023年02月27日
カテゴリ:医療
電子カルテは、患者の診療内容や診断結果の経過などが記入された従来型の手書き紙カルテを、パソコンやiPadなどのタブレットを用いて記入し、電子データ化して管理できるシステムです。
電子カルテを導入することで、患者が受付してから会計するまでのすべての情報を院内でリアルタイムに共有することができるため、医師・看護師・事務の業務プロセスを効率化が図れるとともに、患者にとっては待ち時間の短縮につながるなどのメリットがあります。
また、紙カルテが不要になるため、紙カルテの保管場所も不要になります。
政府は、2022年10月に発足した「医療DX推進本部」で、電子カルテ情報の標準化を進めることを掲げました。
それによると、電子カルテの普及目標として2026年度までに80%、2030年までに100%とする目標が記載されています。
今回は、電子カルテを導入することでのメリット・デメリット等、電子カルテの普及率、導入ルールを中心に、電子カルテとは何か、簡単にわかりやすく解説します。
※参照元:厚生労働省「医療分野の情報化の推進について」
※参照元:厚生労働省「電子カルテ等の標準化について」
※参照元:自民党「「医療DX令和ビジョン2030の提言」
電子カルテとは
電子カルテとは、患者の診療内容や診断結果、経過、患者の基本情報(氏名、住所等)などが記入された従来型の手書き紙カルテを、パソコンやiPadなどのタブレットを用いて記入し、電子データ化して管理できるシステムです。
電子カルテは、従来の紙カルテに書かれていた内容のほか、問診・アナムネ・バイタル情報、画像、看護履歴など、患者のあらゆる情報を電子データとして保管するシステムもまとめて電子カルテと呼ぶ場合があります。
電子カルテの普及率
電子カルテは、年々普及率が増加しています。
2017年には、病床数が400床以上ある大病院で85.4%(603件)で導入されていましたが、2020年には91.2%(609件)と、2019年と比較すると6%(3件)増加しています。
一般病院で見ると、2017年は、全体の46.7%(3,432件)で導入されていましたが、2020年には57.2%(4,109件)まで伸びています。2017年と比較すると10.5%(677件)の増加となります。
※参照元:厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
電子カルテは、導入・運用コストがかかることから、200床未満の病院や、一般診療所での導入が2020年時点で50%程度となっています。
電子カルテの保存期間
電子カルテの保存期間は、下記の保存の義務があります。
●診療録(診療内容や診断結果、経過):一連の診療が完結した日から5年間
●診療記録以外の情報(画像、処方箋、手術記録):3年間
診療録の保存期間は、紙カルテと変わりありません。
※参照元「医師法(昭和二十三年法律第二百一号)(第二十四条)」
※参照元「保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)(第九条)」
電子カルテの保存三原則
電子カルテを使うには、電子カルテ保存の三原則(真正性、見読性、保存性)を守る必要があります。
真正性
作成された記録が虚偽のものではないことが保証されていること
・だれが作成したのか明確になっている(いつ、どこで、だれが作成したのか)
・虚偽入力、書き換え、消去、及び混同が防止されていること
見読性
必要な時にデータを表示・印刷して読めること
保存性
記録情報が真正性を保ち見読できる状態で保存されること
※参照元:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」
※参照元:厚生労働省「医療情報システムを安全に管理するために」
電子カルテのメリット
電子カルテは、導入・運用コストはかかりますが、多数の機能を利用できることで、業務の効率化や保管スペースの削減など、コスト以上のメリットが期待できます。
電子カルテを導入するメリットを以下にご紹介します。
●リアルタイムで情報共有ができる
●保管スペースを減らすことができる
●検査結果と紐付けが容易
●業務効率化
リアルタイムで情報共有ができる
電子カルテのメリットの一つは、同時に複数の端末で情報を閲覧できることです。院内ではリアルタイムで、いつでもどこでも閲覧可能になります。
電子カルテで情報をリアルタイムで共有できることから、医師のオーダー、検査結果の確認、他科での診察状況、処方データ、看護記録、既往歴などの患者情報を正確に素早く共有することが可能になります。
つまり、患者が受付してから、会計までのすべての情報を院内でリアルタイムに共有することができるため、医師・看護師・事務などスタッフの業務プロセスを効率化が図れるとともに、患者にとっては待ち時間の短縮につながるなどのメリットがあるのです。
保管スペースを減らすことができる
患者数の増加とともに、紙カルテは増加していきます。
紙カルテは、一連の診療が完結した日から5年間保存の義務があるため、年々紙カルテ保管のための広いスペースが必要となります。
また、情報の抽出は複雑性が増していきます。
電子カルテの導入で、紙媒体よりも省スペースで莫大な量のデータを保管(蓄積)できます。
また、長年の保管に伴う劣化を気にする必要もなくなるメリットがあります。
検査結果と紐付けが容易
電子カルテであれば、検査結果などのさまざまなデータを、簡単に紐づけすることができます。
紙カルテの場合、検査結果や処方履歴など、患者に関するあらゆる情報をすべて記述するには限界があります。加えて、基本的にはカルテと検査結果などの書類は別に保管・管理する必要があり、患者情報の照会に時間がかかる場合がありました。
電子カルテであれば、院内情報の一括管理が容易となります。
業務効率化
電子カルテによって、情報の検索・照会が瞬時にできるため、医師自身の業務効率はもちろん、看護師・事務などスタッフの業務プロセスも効率化を図れます。
電子カルテには、処方箋、紹介状などをはじめとする書類のテンプレートが多く用意されています。状況に応じた書式を使い分けることで、医師の書類作成業務が効率化できます。
また、紙のカルテを探す時間のロスや、算定ミスを防ぐなど事務処理の効率化も図ることができます。
電子カルテのデメリット
メリットの多い電子カルテですが、導入に際してはデメリットもいくつかあります。
●活用まで時間がかかる
●停電すると使えない
●セキュリティ対策が必要
●導入・運用コストがかかる
電子カルテのデメリットを把握し対策を講じることで、メリットを活かした運用ができます。
活用まで時間がかかる
電子カルテは多数の機能があるため、使いこなすまでには時間がかかるケースもあります。
パソコンに慣れていない、キーボード入力が得意ではない医師・看護師・事務などのスタッフに対しては、使いこなすまでの運用サポートが必要です。
また電子カルテは、メーカーごとに操作方法が異なるため、パソコンが得意な医師・看護師・事務などのスタッフでも使いこなすまでに時間を要します。
停電すると使えない
電子カルテには、パソコンやタブレット、インターネットが不可欠なため、停電すると使えなくなります。
実際に、停電によって電子カルテが使えなかった事例として
2018年9月6日に発生した 北海道胆振東部地震
2011年3月11に発生した 東日本大震災
などがあります。
病床数が多い大病院の場合は、自家発電システムを有している場合がありますが、一般的には停電に備え、紙カルテでの運用できる体制を整えておくことが必要です。
セキュリティ対策が必要
セキュリティが十分ではない場合、電子カルテに記載されている情報の漏洩が起こる可能性があります。
「パソコン・タブレットの持ち出しを禁止する」、「USBデータなどに情報をコピーさせない」、「ID・パスワードを共有しない」、「しっかりとログアウトを行う」など、医師・看護師・事務などのスタッフの意識を高める対策が必要です。
また、サイバー攻撃を受けてしまった場合、電子カルテが使えなくなって診療がストップし、情報漏洩が起こる可能性もあります。サイバー攻撃に備えたセキュリティ対策が必要です。
導入・運用コストがかかる
電子カルテを導入するには、初期導入コストと運用コストがかかります。
導入する電子カルテの種類によっては、導入コストとしてサーバーを医院内に設置する必要があり、多額の導入コストが必要となります。
また、初期導入として、パソコン・ネットワーク接続設備等にもコストが発生することがあります。
※参照元:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは」
※参照元:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」
電子カルテの種類
電子カルテの種類には、院内にサーバーを置く「オンプレミス型電子カルテ」と、インターネットを介してクラウド上で利用できる「クラウド型電子カルテ」の2種類があります。
病院規模などにより、選択するといいでしょう。
オンプレミス型電子カルテ
院内にサーバーを設置し、院内ネットワークでサーバーにアクセスするため、外部への情報漏洩しにくいことが最大のメリットです。
自院でサーバーを用意して管理する必要があるため、導入・運用コストが高くなる傾向があります。また、長年同じサーバーを利用することにより、「サーバー容量がひっ迫する」、「動作が重くなる」といった問題が発生する場合があります。
さらに、電子カルテシステム、機器のメンテナンス・トラブル対応を自らが実施する必要もあります。
オンプレミス型の電子カルテを使うことにより、電子カルテのカスタマイズ、他関連システムの連携等の自由度が広がるメリットがあります。
カルテだけを電子化するのではなく、院内の様々な業務を電子化することで更なる業務効率化や管理コストの低下をのぞめます。
例えば、各種同意書への署名情報を電子化することで、膨大な印刷がなくなり、保存も容易になります。他にも来院予約情報と電子カルテを連携させて効率的な受付業務を実現することもできます。
クラウド型電子カルテ
外部の専門企業が運用する外部サーバーを利用します。
自院にサーバーを用意する必要がないため、導入・運用コストを抑えられることが最大のメリットです。この場合は外部サーバーにアクセスするため、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ管理をしっかりと行う必要があります。
クラウド型の電子カルテは、電子カルテ自体のカスタマイズや、他関連システムとの連携に制限がある場合が多いことがデメリットです。
まとめ
電子カルテを導入する際は、機能やメリットを把握して選ぶことが大切です。
合わせて、電子カルテと連携できる関連システムの機能やメリットも把握しておきましょう。
例えば、電子カルテ化されている大病院でも、問診は紙運用で情報化に多くの看護師などの事務作業が発生しています。
来院患者の受付から問診票への回答、医師への情報伝達まで、院内の業務プロセス効率化を実現する問診・アナムネ・バイタルのクラウドサービスは、小規模クリニックから大病院まで幅広い形態への導入が可能です。
費用と機能のバランスを考え、最適なシステムを導入することで、院内業務の効率化を図りましょう。
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