DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
注目されている理由を解説

2023年02月27日

カテゴリ:デジタルトランスフォーメーション

近年注目されているDX(デジタルトランスフォーメーション)。よく耳にする言葉ではありますが、DXとはそもそも何か?IT化と同じような意味なのでは?と思われている方も多いのではないでしょうか。

INDEX

1. デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?

DXは(Digital Transformation)の略で、日本語では「デジタルトランスフォーメーション」と呼びます。IoT、AI技術、5G環境などのデジタル技術によるビジネスや生活スタイルの変革のことを指します。

DXの定義

DXは2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された、「デジタル技術の浸透が人々の生活を良い方向に変えていく」という概念です。

上述の内容を日本向けに定義したものが2018年に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」となります。

ガイドラインでは、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や 社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。つまり、最新のICT技術を駆使して、企業内部に変革を起こしていくことが、企業運営において非常に重要ということを言っています。

例えば、経済産業省がまとめた「中小企業白書2019」の中には、IoTやAIを活用した生産性向上の例として、三重県伊勢市の飲食店が紹介されています。この企業は、AIによる来客予測システムを導入し、食品ロスの削減や店舗運営の効率化を実現しています。さらに、寺社の経営変革のノウハウを活用して「来客予測分析」などを行える飲食、小売業などの店舗運営をサポートするサービスを展開することで、別会社を設立して、新たな収益構造をつくることを実現しました。このように単に最新のICT技術を導入するだけでなく、新たな価値観や競争優位性を生み出すことが、経済産業省が説くDXです。

2. DXとIT化 どういった違いがあるのか?

DXと同じ意味として利用されることの多いワードとして「IT化」が挙げられます。
DXとIT化は関係性の近いワードではありますが、厳密に言えば異なります。DXがビジネスなどの仕組みを根本から変革することに対して、IT化はデジタル化による効率化を目指す内容となっています。

例えば、今までチラシで広告していた企業が、Webサイトを運営することで印刷やポスティングなどの手間がなくなったとします。この場合、業務を効率化出来た、つまりIT化に成功したと言えるでしょう。

一方でDXは、大手ECサイトのように、商品販売の窓口がWebサイトに移行するような、ビジネススタイルの変革のことを指します。

3. デジタイゼーション・デジタライゼーションの違いについて

DXとよく似た言葉で「デジタイゼーション」、「デジタライゼーション」という2つの言葉があります。

経済産業省のDXレポートでは下記のように定義されております。

デジタライゼーション(Digitalization)
 -個別の業務・製造プロセスのデジタル化

デジタイゼーション(Digitization)
 -アナログ・物理データのデジタルデータ化

※引用元:経済産業省「経済産業省D X レポート 2 中間取りまとめ」

デジタイゼーションが、紙で保管していたデータを電子で管理するなど、「アナログデータをデジタルデータへ変換すること」を指すことに対し、デジタライゼーションの場合は変換するだけではなく、ビジネスモデル全域をデジタル化で変革することを指しています。

デジタイゼーションとデジタライゼーションの結果として、社会にとって良い影響を与えるのがDXと言えます。

4. DXが注目されている理由とは?

新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及により、これまで以上に業務の効率化・働き方改革への注目度が高まっています。DXへの取り組みは、業務の効率化に繋がることはもちろん、会社の利益にも影響します。

また、経済産業省が2018年に発表したDXに関するレポートでは、2025年までにDXを実施できなかった場合、既存システムの老朽化やIT人材の不足などが発生する「2025年の壁」問題が指摘されています。

※参照元:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」

上記レポートでは、DXが2025年まで社会に浸透しなかった場合、他国との競争上の優位性を失い、2025年以降は毎年12兆円の経済損失が生じる可能性がある、と想定しています。

今でも老朽化・複雑化によるシステム障害で生じる経済損失は年間4兆円くらいと言われており、この先の従来のERPシステムのサポート終了などを考えると、経済損失額は今の3倍にも及ぶことになります。

タイムリミットが迫ってきている状態であることも、注目される要因の一つと言えるでしょう。

5. 現状の企業の状況や課題について

現状の企業の課題としては、主に「レガシー問題」と「人材の確保」の2つが挙げられます。
以下に、各課題について解説いたします。

レガシー問題

経済産業省のレポートでは、既存システムが事業部門ごとに構築され、過剰なカスタマイズがなされていることなどにより、老朽化・複雑化・ブラックボックス化していると指摘しています。既存システムとは、販売管理や購買管理、在庫管理などの基幹システムのことで、20~30年前に作られたシステムをそのまま使い続けている企業は多くあります。

それらは、オフコンと呼ばれる60~90年代に活躍したコンピュータで開発されたシステム、COBOL資産を移行しPCサーバーで開発されたシステム、メーカーサポートの終了したツールで開発されたシステムなどで、レガシーシステムと呼ばれています。

DXレポートでは、約8割の企業がレガシーシステムを抱えていると指摘。また、これらのレガシーシステムの保守・運用にIT投資が割かれており、最新ICT技術を駆使した企業運営とは、相反するものになっています。

DXを行うためには、レガシーシステムを刷新しなければなりません。これに対して、中小企業ではシステムに専任できる人材が限られるため、対応が難しいことが課題となっています。また、大企業でもシステム開発に関わっていた人材の退職、異動、組織再編等で、当時を知る人がいなくなり、システムの老朽化・複雑化やブラックボックス化を招いています。

DX人材の確保について

DXを進めていく上で重要なのが、DX人材の確保とチームの作成です。

デジタル技術に詳しく、事業の変革を考えられる柔軟な人材を集め、チームを作る必要があります。

DX推進人材は、IPAの調査報告の中で以下6つのカテゴリーに分けられています。

プロデューサー

最高デジタル責任者を含む、DXやビジネスモデルの実現を手動するリーダーとなる人材

ビジネスデザイナー

DXやデジタルビジネスの企画や立案、推進などを担当する人材

アーキテクト

DXやデジタルビジネスのシステム設計が可能な人材

データサイエンティスト/AIエンジニア

AIやIoTなど、DXに関するデジタル技術やデータの解析に詳しい人材

UXデザイナー

DX、ビジネスモデルに関するシステムのユーザー向けデザインが可能な人材

エンジニア/プログラマ

上記以外のデジタルシステムの実装、インフラ構築などが可能な人材

上述したDX推進人材を集めることが理想ではあるものの、日本企業ではDX人材の不足が問題となっています。

そのため、既存社員をDX人材として育成していくことが重要になってきます。

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6. DXを進める上でのポイント

DXレポートでは2025年までの間に、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現することをDX実現シナリオとしています。

このことからも、DXを進める場合はまず自社の現状を把握し、課題を改善していく方法を考えていく必要があります。

業務別にDXに取り組む場合、管理部門と営業部門ではDXを進めるポイントが異なります。改善例としては以下が挙げられます。

管理部門の場合

管理業務でDXに取り組むべきポイントは、ペーパーレス化とテレワークです。新型コロナウイルスの感染症対策としてテレワークを導入する企業が増え、それに伴い業務の標準化が進み、書類の電子化も加速しています。

ペーパーレス化やテレワークは、会社全体ではなく一部の業務から導入することも可能です 。また、単純なデータ入力作業などのデスクワークを自動化するRPAも、省力化に向けたDXの取り組みとして有効です。

営業部門の場合

営業部門の業務をDXで改善できるポイントはSFAとCRMです。

SFAは、日々変化する行動計画や報告業務などを標準化したうえで、自動化・共有するツールを活用します。CRMは顧客管理ツールを指し、顧客情報の集計管理を容易にします。

いずれも、これまでメールや電話でやり取りしていたことをDXで自動化することで、営業業務の効率化に繋がります。他にも、Web上での接客やAIチャットボットの活用も有効です。


業務の効率化、改善だけでは単なるIT化止まりとなってしまうため、業務改善後にどういったビジネススタイルで進めていくのか といった目標をしっかりと決めておくことも重要です。

目的を決めた後はDX推進人材の確保を確保して、DX専門チームを設置します。

DX専門チームで決めた目標が、顧客のニーズに合致したビジネススタイルなのか、実現するためにはどういったデジタル技術が求められてくるのか、ブラッシュアップしながらデジタル施策を進めていきましょう。

7. DXを導入している企業例

実際にDXを導入して成果を出している企業や業界を、いくつか紹介いたします。

Spotify

Spotifyとは、数千万曲以上を無料で聴ける音楽配信サービスです。
音楽と言えばCDのレンタルやダウンロードをすることが当たり前でしたが、Spotifyが登場したことで音楽を聴くスタイルが大幅に変わりました。

Netflix

Netflix は登録系のストリーミングサービスで、インターネットの繋がっている状態であれば、スマホでも豊富な映像作品を視聴することが出来ます。ひと昔前までは、専門店でビデオ、DVDを借りるのが主流でしたが、Netflixを始めとするストリーミングサービスが登場したことで、自宅にいても好きな作品を見ることができるようになりました。
Netflixは、映像業界のビジネスモデルを大きく改革したサービスと言えるでしょう。

8. DXの実現に向けて活用されるテクノロジー

技術革新が進み、現代ではDX実現のためにさまざまなテクノロジーが活用されています。中でもIoT、AI技術、5G環境の活用は、今後の本格的なDX推進に向けて特に重要なテクノロジーです。 この3つのテクノロジーについて、わかりやすく紹介します。

IoT

IoTとは、さまざまなモノをインターネットと接続し制御することで、モノの機能性や拡張性を高める技術です。

スマートスピーカーなどは日常生活にも浸透しつつある技術ですが、農業における水やりの自動化や、製造業における生産ラインの最適化、設備状態の可視化によるトラブル防止など、さまざまな分野でIoTの応用が進んでいます。

AI技術

AIとは人工知能のことですが、すでにさまざまな電子機器に導入されています。身近な例では、人間の質問に返答するスマートフォンやスマートスピーカーの機能、Webショップやホームページのお問い合わせにAI技術を活用している企業もあります。

また画像を認識するコンピュータービジョンや、人の声を再現する音声合成、将棋や囲碁といったゲームにおける最善手の推測など、活用分野は多岐にわたります。

5G環境

5Gとは2020年からサービスが開始された、高速大容量の移動通信システムです。今までよりも少ないタイムラグで高精細な映像をオンラインで配信することが可能です。VR技術を用いて、まるでその場にいるかのような感覚でスポーツ観戦を楽しめるサービスも展開されています。

また医療現場では遠隔操作での手術への活用など、これまで難しいと言われていた医療現場のテレワークを可能とすることが期待されています。

9. まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及により、これまで以上に業務の効率化や働き方改革への注目度は高まっています。DXへの取り組みは業務の効率化に繋がることはもちろん、会社の利益にも影響します。

自社で実現可能なDXを検討して組織改革を進めることは、これからの社会で企業が生き残っていくための手段となるため、一度導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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