公認会計士 Mrナカタ
変わる社会との距離感。”リモート新時代”の人材育成とは

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1. 日本社会に蔓延する”間違えてはいけない”空気

日本の社会には、どこか間違えてはいけないという空気があり、このような風潮は、すでに学校教育の場でも見られます。例えば、先生に「この問題が分かる人?」と問われると、自信のある子どもしか手を挙げません。なぜなら、間違えると先生に指摘されクラスのみんなから笑われ、恥ずかしい思いをするからです。

ここに、日本教育と海外教育の決定的な違いがあります。海外では間違えても、その間違いを指摘されたり笑われたりするどころか、まず積極的に発表したことを褒められます。正解を導き出したのかどうかが重要なのではなく、自分の考えを積極的に発表することが大切という共通認識があるため、先生からの問いに対しても躊躇することなく手を挙げることができるのです。そして、「なぜ学ぶのか?」「なんのために勉強するのか?」を、きちんと学校で教えられます。世界のトップクラスの教育を誇るフィンランドを見てみると、授業では他人と比較するようなテストは行われません。日本のような詰め込み式の教育ではなく、自分で考え答えを導き出すことに重点が置かれるため、「なぜ?」と考える思考が根底から養われます。

一方、日本では、良い成績を取るため、良い大学に入るため、そして良い企業に就職するために勉強します。最も大事な「勉強する目的は?」という問いの答えは、「良い企業に就職するため」です。成績を上げるよう、ひたすら目の前の課題をクリアすることに集中するため、フィンランドのような「なぜ?」という目的志向が育たないのでしょう。

この”差"はとても大きなものです。そして目的志向が育たないまま就職し、企業の管理職となっても「なぜ?」と問うことはありません。 「なぜ今、テレワークを導入するのか?」という問いに、「費用対効果が…」と返答することが何よりも目的志向の欠落した現状を物語っています。

2. 内向的で人見知りの強い70万人は人材の宝庫!?

今回の新型コロナウイルス感染拡大によって、他者との距離感が、以前とは異なってきていると実感している人も多いことでしょう。政府の自粛要請や緊急事態宣言を受けてテレワークが増え、ミーティングなどもリモート用のツールを使って行われています。仕事のみならず、オンライン飲み会やオンラインコンサート、オンラインセミナーなど、プライベートでも画面越しのコミュニケーションが急激に増えています。

従来、社会で働くうえで、対面でのコミュニケーション能力は必要不可欠です。ホワイトカラーにとって、必須スキルといっても過言ではないでしょう。しかしながら、テレワークで仕事をするようになると、この能力はそれほど重要ではなくなります。そのため、新しい働き方やコミュニケーションスタイルは、対面でのコミュニケーションが苦手な人にとって、社会との関わりを築くチャンスでもあります。

本来、社会にはさまざまな人がいるのが自然な形です。大人になっても内向的な人、人見知り傾向の人、他者と上手くコミュニケーションが取れない人などが一定数いるのは、考えてみればごく当たり前のことでしょう。このような人たちは、学校に馴染めなかったり社会に溶け込めなかったりしたことがきっかけで引きこもりとなり、辛い思いをしながら生活しているケースもあります。

実際のところ、日本の引きこもり問題は深刻です。 「8050問題」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。親が80代、当事者が50代という状況を放置しておくと、やがて孤独死が大量に発生するだろうという問題です。引きこもりの問題に社会としてどのように関わっていくのか、その対応が迫られていますが、テレワークはその解決策のひとつとなり得る可能性があります。さらに、内向的な人たちのなかには、特殊なスキルを持っている人も少なくありません。テレワークであれば、対面でのコミュニケーションを必要としないため、内向的な人も自分の能力を最大限発揮することが可能でしょう。

今では、100%の在宅勤務を取り入れている企業も現れ、面接までリモートで行われている企業もあるほどです。テレワークによって「個の能力」が評価されるような制度が整えば、これまで日本の教育や社会にフィットできなかった人々にも活躍の場が広がることでしょう。

このようにテレワークで働くシーンが増加する世の中になっていくと、従来のホワイトカラーの価値観の中では、あまり日の目を見ることの叶わなかった人たちにも、活躍の場が広がる可能性があります。内向的だけではなく、障害を抱えている人、介護のために退職せざるを得なかった人、子どもが小さく外で働くことを躊躇している人など、これまで働きたくても働けなかった多くの人たちに就労の機会が訪れ、これまでとは異なる多様なかたちで社会へ生産性をもたらすことも考えられるでしょう。

3. リモート新時代が招く「勤勉なホワイトカラー像」の崩壊

日本の企業は、真面目に勤勉に働く社員を採用する傾向にあります。しかし、一体「真面目な社員」とはどのような社員を指すのでしょうか。実際は、企業のためではなく、上司によく思われたいと「真面目さ」や「勤勉さ」を演じている社員も少なくないでしょう。テレワークになると、「評価する」人が目の前からいなくなるため、「勤勉さ」を演じている社員は不安になるかもしれません。なぜなら、上司に自分の働きぶりを見てもらえる機会がなくなり、自分の評価が下がることも考えられるからです。

話は変わりますが、大学入試の英語の配点が他の教科より高く設定されているのは、「勤勉力」の高い学生をとりたいという大学側の思惑が作用しているという話があります。英語ができる学生は「勤勉力」が高いというデータがあり、勤勉であれば中途退学者が少なくなり、引いては大学にとって利益があるからです。大学経営上は、いかに中途退学者を出さないかが最重要課題ですから、「意味が感じられなくてもやり続けられる学生」を囲い込むことで、大学経営の安定を図っているというのです。大学側の思惑がいずれにせよ、このような背景のもとで育った学生は、日本の社会にジャストフィットし、内向的で人見知りの強い人と比べると、全く正反対の道をたどってきた理想的な日本人像といえるでしょう。

もうひとつ、教育に関していえば、テレワークを導入するときに新人教育をどうするかという問題もあります。新人が社会に出て働くには、社会人としての人との関わり方やビジネスマナー、自社で取り扱っている商品やサービスなどの最低限の知識が必要です。また、対面で会ったことのない先輩や上司との関係性もリモート環境ではなかなか掴めず、質問がある場合に誰に聞けばいいのかすらわからないということも起こり得ます。

テレワークを導入している企業の新人社員への、「テレワークでの仕事をどのように感じていますか」という調査結果を見たところ、「孤独で寂しい」という回答が目につきました。本来ならば、時間をかけて築き上げる社内の人間関係を、テレワークを活用しながら同様な関係性を築くことができるのか、またどのような研修方法が適しているのかを、今後は真剣に考える必要があります。ただ、日本マイクロソフトのように、社員の勤務環境を素早くテレワークへとシフトした企業もあります。

今回、テレワークを導入した企業が増えたことを踏まえると、完璧ではないにしても新人教育ができないわけではないはずです。すでに実施している企業の例を参考にしながらロールモデルを模索していき、今後も新しい形の人材採用や新人教育のあり方を考えていく必要があります。そしてこの問題を考えることは、これからのリモートの時代における「いい人材とは?」ということのひとつの答えに繋がっていくはずです。未だ、収束の見えない新型コロナウイルスの感染拡大という状況のなかで、ひとりひとりが目的志向を持ち、正しい答えを導き出すために”考えていく”ことが強く求められています。

監修: 公認会計士 中田清穂

一般社団法人日本CFO協会主任研究委員。公認会計士。
1984年明治大学商学部卒業、1985年青山監査法人入所。2005年に独立し有限会社ナレッジネットワークにてIFRS任意適用、連結経営、J-SOXおよび決算早期化など、決算現場の課題解決を主眼とした実務目線のコンサルティングにて活躍中。

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