コストセンターとは?役割やプロフィットセンターとの違いについてわかりやすく解説

2025年08月12日

カテゴリ:デジタルトランスフォーメーション

企業の組織は、直接利益を生み出す「直接部門」と、それをサポートする「間接部門」に分けられます。

この間接部門が「コストセンター」と呼ばれ、その意味と役割は企業経営において非常に重要です。

本稿では、コストセンターの基本的な概念から、利益を生み出す「プロフィットセンター」との違い、さらにはコストセンターをプロフィットセンターへ転換することの重要性や具体的な方法について解説します。

INDEX

コストセンターの概要

企業活動におけるコストセンターの概念を理解することは、組織全体の効率性と収益性を高める上で不可欠です。

ここでは、コストセンターとは具体的に何を指すのか、そしてプロフィットセンターとの明確な違い、さらには各部門の分類が企業によってどのように異なるかについて掘り下げていきます。

コストセンターとは何か

コストセンターとは、企業活動において直接的な売上を上げることはなく、コストのみが発生する部門を指します。

主に人件費、設備費、材料費などの費用を発生させるものの、部門単体では外部からの収益を生み出す仕組みを持たない点が、要素として挙げられます。

コストセンターの役割は、これらの費用を最小限に抑え、企業全体の利益を最大化することにあります。

たとえば、経理部、総務部、人事部などは、企業運営に不可欠なサービスを提供しますが、それ自体が直接的な収益源となることはありません。

そのため、コストセンターでは、業務の効率化やコスト削減が主な目的とされます。
コストセンターは「間接部門」や「バックオフィス」とも呼ばれる場合があります。

プロフィットセンターと異なる点

コストセンターの反対語、または逆の概念として、プロフィットセンターが存在します。

プロフィットセンターとは、直接的に収益を生み出すことを目的とした部門であり、「利益を最大化すること」を第一に活動します。

両者を比較すると、プロフィットセンターは売上や利益を直接集計するのに対し、コストセンターはコストのみを集計します。

例えば、営業部門や販売部門は典型的なプロフィットセンターであり、収益を直接的に支える存在です。

プロフィットセンターの成果は売上高や利益率などの収益関連の指標が重視される一方、コストセンターの成果は主にコスト削減額や業務効率改善の指標で評価されます。

このように、コストセンターとプロフィットセンターは、目的と評価基準において明確な違いがあります。

部門分類の具体例

企業内の部門をコストセンターとプロフィットセンターのどちらに分類するかは、企業の事業戦略や各部門の役割の捉え方によって大きく異なります。

たとえば、コールセンターは一般的に顧客からの問い合わせに対応し、直接的な利益を生み出さないためコストセンターと見なされがちです。

しかし、質の高い顧客対応によって顧客満足度を高め、それがリピート購入や企業のイメージ向上につながる場合、プロフィットセンターとしての役割を果たすことも可能です。

同様に、製品を製造する工場も、製造コストの管理に焦点を当てればコストセンターと捉えられますが、高付加価値製品の生産や短納期対応などによって収益に貢献できればプロフィットセンターとなり得ます。

研究開発部門も、新たな技術や製品開発にコストがかかる点ではコストセンターですが、それが将来的な売上や市場競争力の源泉となることを考慮すればプロフィットセンターとしての側面も持ちます。

また、マーケティング部門は、商品やサービスが継続的に売れる仕組みづくりが役割であり、広告宣伝費などのコストが発生することからコストセンターと見なされることもあります。

しかし、顧客に経験価値を提供し、購買行動に直接的または間接的に貢献していると捉えればプロフィットセンターに分類されます。

この場合、月間売上や顧客満足度などの具体的な数字目標を設定し、その成果によって評価されることになります。

経理部や人事部、総務部といったバックオフィス部門は、一般的にコストセンターに分類されますが、業務効率化や組織力強化を通じて間接的に企業全体の利益向上に貢献しています。

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせる重要性

近年、多くの企業でコストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせようとする動きが活発化しています。

この転換は、単なるコスト削減に留まらず、企業全体の収益性向上や競争力強化に繋がる重要な戦略として認識されています。

転換が必要な理由

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせる必要性が高まっている背景には、激化する市場競争と企業が直面する収益性向上の課題があります。

企業が持続的に成長し、市場で生き残るためには、効率性だけでなく収益性を重視した運営が不可欠です。

従来のコストセンターでは、評価基準が主にコスト削減額や業務効率改善に置かれがちでした。

しかし、この考え方に固執すると、業務改善の範囲がコスト削減に限定され、新たな価値創出や収益機会の追求が見過ごされる可能性があります。

例えば、コスト削減ばかりに注力しすぎると、提供するサービスや製品の質が低下し、結果的に顧客満足度を損なう事態も起こりかねません。

プロフィットセンターへの転換は、各部門が自ら収益を生み出す意識を持つことで、企業全体の生産性向上と利益最大化を目指す戦略です。

これにより、これまでコストとみなされてきた部門が、企業全体の利益に貢献する「攻め」の部門へと変革することが期待されます。

また、グローバル化による国際市場の広がりや企業間競争の激化により、企業全体で利益を追求する意識がより一層求められています。

各部門が利益への貢献を意識することで、組織全体の競争力が高まり、持続的な成長を可能にする土台が築かれるのです。

意識転換によるメリット

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせることによって、企業全体において多岐にわたるメリットを得られます。

この転換は、単なるコスト削減を超え、組織全体の成長戦略や顧客満足度、さらには従業員満足度にも深く関係する重要な取り組みです。

収益性の向上

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせることで、企業全体の収益性は大きく向上します。

これまで費用を生み出すだけだった部門が、直接的に売上を上げることに貢献できるようになるため、企業全体の利益が増加します。

例えば、人件費やその他の費用削減によるコスト削減は企業の利益を増加させる上で重要ですが、部門が直接利益を生む方法へ発展させることで、さらなる利益の増大が期待できます。

これまでとは異なる形で利益を生み出す可能性が広がり、企業の収益構造がより強固なものとなるでしょう。

特に、顧客対応を「売上に直結する業務」として再設計すれば、アップセル(より高価な商品やサービスへの買い替え)の提案や解約防止策が実行され、LTV(顧客生涯価値)の最大化も可能となり、企業にとって大きな強みとなります。

競争力の強化

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせることは、企業全体の競争力を強化する上でも非常に効果的です。

プロフィットセンターの意識を持つことで、従業員は業務の先に「顧客」がいることを意識し、自分が価格に見合った価値を提供できているかを考えるようになります。

これは、競合他社が数多く存在する市場において、自社が選ばれるための重要な視点となります。

各部門が収益を意識することで、従来のコスト削減だけでなく、スキルアップや設備投資など、より高い付加価値を生み出すための工夫を行うようになります。

これにより、従業員の競争意識が高まり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

例えば、顧客からの問い合わせに対応するカスタマーサポート部門が、顧客からの声やフィードバックを経営戦略に反映させることで、新たな提供価値の創出に貢献できます。

顧客から集めた生の声をたたき台とした施策は、競合他社との差別化ポイントにもなり、市場での優位性を確立する上で不可欠です。

このように、コストセンターのプロフィットセンター化は、企業が市場で生き残り、持続的に成長するための重要な戦略となります。

各部署の価値向上

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせることで、各部署の価値が向上します。

これまでコストを生み出す部門と見なされていた部署が、収益を生み出すことを目指すようになるため、「この部署が収益を生み出すにはどうすればいいか」という利益向上の意識が芽生えます。

この意識の変化は、結果的にその部署自体の価値増加へとつながります。

加えて、企業利益だけでなく、企業発展への取り組み、顧客対応の改善といった、企業成長にもつながるメリットがあります。

各部門の従業員は、自部署が企業全体の利益にどのように貢献できるかを深く考えるようになり、自己啓発や効率化などの取り組みを積極的に行うようになります。

例えば、他部門のサポートが中心だった部門も、「社内の利益を最大化する業務」と位置づけることで、生産性の向上や収益性の観点から業務に取り組むようになります。

これにより、今まで見過ごされがちだった各部署の潜在的な価値が顕在化し、組織全体の活性化に貢献します。

このように、部署ごとの意識を変革していくことは、生産性を高めるために非常に重要であり、企業の持続的な成長を支える基盤となります。

顧客満足度の改善

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせる過程では、収益化に向けた業務の見直しが行われます。

この見直しによって、顧客に対してこれまで以上に質の高いサービスを提供できるようになり、結果として顧客満足度の向上が期待できます。

例えば、カスタマーサービスのような部門は、従来コストセンターに分類され、コスト削減のために通話時間の短縮や処理件数の増加が求められがちでした。

しかし、これをプロフィットセンターの意識を持たせることで、顧客からの問い合わせを単なるコストではなく、新たな収益機会や顧客関係強化のチャンスと捉えるようになります。

有償サポートへの移行や、FAQ、チャットボットなどのシステム導入により、顧客は時間を問わず回答を得られるようになり、簡易的な問い合わせはセルフサービスで解決できる一方で、複雑なニーズに対してはより時間をかけた質の高い対応が可能になります。

こうした対応の変化は、サービス品質の向上に繋がり、クレームの減少や解約率の低下といった成果にも結びつきます。

このようにして得られる顧客満足度の改善は、長期的な顧客関係の構築とリピート購入の促進に不可欠であり、企業の持続的な成長に大きく貢献します。

プロフィットセンターへの意識転換方法

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせるためには、明確な手順と潜在的な課題への対処が必要です。

主に、戦略的なアプローチと組織全体の協力が、この変革を成功させる鍵となります。

転換のための手順

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせるための手順は、以下の通りです。
まず、目標と目的を明確に設定することが重要です。

プロフィットセンターの意識をもつことによって「何を達成したいのか」という具体的な目標を定め、それを部門全体で共有します。

例えば、収益性の向上、顧客満足度の改善、市場競争力の強化などが挙げられます。この目標が明確であれば、各部門の従業員は自身の業務が企業全体の利益にどのように貢献するかを理解しやすくなります。

次に、役割分担と責任の所在を明確化します。

プロフィットセンターへの意識の転換は、従業員の目的や業務内容を大きく変えるため、誰がどのような責任を持ち、どのような指標で評価されるのかを明確にする必要があります。

例えば、KPI(重要業績評価指標)を設定し、各部門や個人の貢献度を定量的に評価できるようにすることが効果的です。

これにより、従業員は自身の業務が収益に直結しているという意識を高め、目標達成に向けて主体的に行動するようになります。

さらに、適切な人材配置も不可欠です。

プロフィットセンターへの意識の転換の目的やプロセスを理解し、従業員をまとめ、リードできる運営管理者を育成・配置することが重要となります。

企業が主体となり、プロフィットセンターへの意識の転換に対応できる運営管理者育成のための研修やセミナーを実施するのも良いでしょう。

最後に、部門間の連携を強化することが求められます。

プロフィットセンターへの意識の転換には、他部門とのスムーズな情報共有と連携が不可欠です。

例えば、顧客情報を一元管理できるCRM(顧客関係管理システム)や、ワークフロー管理システムなどのITツールを導入し、部門を超えた情報アクセスやコミュニケーションを円滑にすることが効果的です。

「チームとして利益を上げる」という意識を醸成し、共通の目標に向かって協力し合う体制を築くことで、転換を成功へと導きます。

意識の転換における課題と解決策

コストセンターにプロフィットセンターの意識を持たせる際には、いくつかの課題に直面する可能性があります。

しかし、適切な解決策を講じることで、これらの課題を乗り越え、変革を成功させることが可能です。

一つの大きな課題は、従業員の意識改革です。

これまでコスト削減を主な目的としてきた部門の従業員が、利益を生み出すという新たな視点を持つことは容易ではありません。

解決策としては、まず企業全体の事業戦略とプロフィットセンターへの意識改革の目的を全従業員に共有し、理解を深めてもらうことが重要です。

各部署がどのように収益に貢献できるかを具体的に示し、従業員一人ひとりが「どうしたら企業の利益につながるのか」を思考し、実行に移せるような環境を整備することが求められます。

また、プロフィットセンターとしての役割に応じた新たな評価基準を設定し、従業員のモチベーション向上につなげることも有効です。

加えて、転換に伴うコストやリソースの不足も課題となり得ます。

解決策の一つとして、外部リソースの活用、つまりアウトソーシングの検討が有効です。
専門的な知識や技術を持つ外部企業に業務の一部を委託することで、コスト削減を実現しながら、企業は主要な業務に集中できるようになります。

例えば、コールセンターの運営管理業務をアウトソーシングすることで、関係部署との連携業務にリソースを投入できるといった効果が期待できます。

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