2023年02月28日
カテゴリ:財務会計
テレワークの普及や、紙書類の電子化に関する政府の法整備に伴い、ペーパーレス化に取り組む企業が増えています。
以前まで原則紙で保存が義務付けられていた帳簿書類について、一定の要件を満たすものは電子データによる保存が可能となる「電子帳簿保存法」が2022年1月に施行される予定でした。
しかし、2021年12月に公表された令和4年度税制改正大綱により、2022年1月から2年間は電子取引の保存要件を満たせないやむを得ない理由がある場合には、書面での保存を認められることとなりました。
現在電子取引の情報を紙で出力し、書面で保存している場合は、2年間の猶予期間のうちに電子化へ向けた準備を始める必要があります。
※参照元:国税庁「電子帳簿保存法の改定」
※参照元:国税庁「令和4年度税制改正大綱」
また、働き方が多様化しテレワークが広く普及したため、紙の書類や資料を用いることが難しくなっていることも、ペーパーレス化が進んでいる要因になっているようです。
また、ペーパーレス化の取り組みは、企業ができる環境保護活動の1つにもなり得ます。
ここでは、ペーパーレス化の意味やメリット・デメリット、推進のためのポイントについて詳しく紹介していきましょう。
ペーパーレス化とは?
ペーパーレス化とは、“紙を使わずに、情報や帳簿などを電子化していくこと”。
ビジネスにおいて、今まで紙で運用されていた文書や書類などを電子化して管理することは、業務効率の改善やコスト削減に繋がります。
政府も推進している取り組みであることから、現在ペーパーレスに関する法整備が進んでいます。これからペーパーレス化を進める方へ、メリットやデメリット、ペーパーレス化推進のポイントをご紹介いたします。
ペーパーレス化の必要性
ペーパーレス化に取り組む企業が増えている、また今ペーパーレス化が必要とされている理由はなぜでしょうか?
働き方改革とテレワークの推進
政府の働き方改革の一環でテレワークが推進される一方、活動拠点が異なる者同士での紙の書類や資料のやり取りは、時間がかかる上に手間が多く、効率的に業務を進めることは困難です。このような場合、業務を効率よく進められるよう紙の書類や資料を電子化し、クラウド上でやり取りできる必要が出てきました。
ペーパーレス化を推進する法制度について
ペーパーレス化を推進する法整備も進められています。
改正後の電子帳簿保存法では、原則紙で保存が義務付けられていた帳簿書類について、「一定の要件を満たすものは電子データによる保存が可能」となるなど、帳簿書類の電子保存に関する要件が緩和されました。
これまで電子取引のデータは、原則として電子データ保存が必要でしたが、印刷した文書を紙で保存することも認められていました。
しかし、改正後の電子帳簿保存法では、電子取引データは電子データで保存を行う必要があります。
これは、個人事業主や法人を問わずすべての人が対象となるため、ペーパーレス化は必然のことになります。
ペーパーレス化は政府の方針であり、その必要性を垣間見ることができます。
- 電子帳簿保存法とは?要件などを解説
電子帳簿保存法改正について詳しく紹介!
ペーパーレス化の5つのメリット
ペーパーレス化を進めるには、さまざまな努力や労力が必要となります。スムーズにペーパーレス化を浸透させることができれば、多くのメリットを得ることができるのです。
ここでは、以下のペーパーレス化のメリット5つについて詳しくご紹介します。
- コスト削減につながる
- 文書検索が容易になる
- 業務の効率化や生産性の向上につながる
- テレワークなど さまざまな働き方に対応できる
- 企業イメージの向上につながる
ペーパーレス化の5つのメリット
コストの削減につながる
ペーパーレス化の大きなメリットの1つは、コストの削減が見込める点です。
紙の書類や資料の作成には、多くのコストがかかります。紙の購入代、購入した紙の輸送代、印刷代、プリンターなど印刷機器の費用やトナー代、それら機器のメンテナンス費用、印刷機を借りる場合はリース代、書類や資料の郵送代や廃棄費用、社内で廃棄するためのシュレッダーの用意や、保管するためのキャビネットやファイル代など…。
また、それらの書類や資料を整理するための人件費や、保管する場所も必要となります。
ペーパーレス化が進めば、人件費の削減にもつながります。保管するためのスペースが不要になる、あるいは縮小するとなれば、オフィス自体の縮小も検討可能に。賃料を下げることで、さらなるコスト削減が期待できるでしょう。
文書検索が容易になる
電子化された書類・資料のメリットは、「簡単に文書検索できること」です。逆に紙の資料のデメリットは、「必要な文章を見つけ出すのに時間がかかること」ではないでしょうか。紙の資料の場合、整理されずに紛失してしまうものや、期限が過ぎたら破棄されてしまうものもあり、必要なときに見つけられないことがあります。
ペーパーレス化を進め、紙の文書を電子化することで、キーワード検索やファイル名検索等が可能となり、書類を探す手間や時間を大幅に減らすことができます。セキュリティが確保されている端末があれば、必要な書類をすぐに閲覧できる点もメリットと言えるでしょう。
業務の効率化や生産性の向上につながる
ペーパーレス化のメリットとして、業務の効率化や生産性の向上が挙げられます。
先にご紹介した通り、紙の文書を電子化することで、キーワード検索やファイル名検索などが可能となり、多くの書類から必要な書類をすぐに探すことが可能になります。この点も、文書管理業務の効率化に一役買っているといえるでしょう。
また、契約書などの書類を電子化することで文書作成を効率化することができます。
紙の書類は、記載漏れや誤字脱字などのミスが起こりやすく、作成書類のチェックや修正に時間がかかります。電子化されている書類は、一から書類を作成する必要はほとんどなく、変更が必要な箇所を修正し利用することが可能です。
他にも、ペーパーレス化に伴い、業務効率化の仕組みづくりとしてワークフローシステムの導入が増えています。
これは、社内の申請書類等の業務手続を電子化する仕組みです。例えば、今まで紙の書類で行ってきた申請書や稟議書などを電子化することによって、書類作成や金額などの計算、各担当者への承認依頼(回覧)、承認作業(押印)、書類の保管など、手間や時間がかかる作業をシステム上で行うことが可能です。
各担当者のPC端末やモバイル端末で確認することができ、決済時間の短縮や承認状況の把握などがスムーズに行えることから、業務の効率化につながります。
このようなペーパーレス化に伴う書類電子化の流れが、業務効率を高め、生産性の向上につながることがわかります。
テレワークなど さまざまな働き方に対応できる
テレワークの普及、テレワークの推進などにより、ますますペーパーレス化の必要性が高まる中、ペーパーレス化による文書の電子化は、在宅勤務の場合でもメリットとなります。電子化された文書はオンライン上でやり取り可能なため、場所を問わず業務を進めることができるからです。
テレワークによる社員個人の自宅、商談中の外出先からアクセス可能な点もメリットと言えるでしょう。
企業イメージの向上につながる
ペーパーレス化を推進することで、企業のイメージアップにつながると言うメリットがあります。ペーパーレス化は、紙の消費を減らし森林資源を保護する取り組みであり、環境問題やSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)への取り組みの一環となります。
このような環境問題やSDGsに積極的に取り組む企業であると認識されることで、企業のイメージ向上につながります。
ペーパーレス化の4つのデメリット
ペーパーレス化には多くのメリットがある一方で、紙の書類や資料で業務を行う文化が根強く残っているのも事実ではないでしょうか。ペーパーレス化は、メリットだけでなく、デメリットも理解した上で慎重に導入を進めることが重要です。
ここでは、以下のペーパーレス化のデメリット4つについて詳しくご紹介します。
- 導入コストがかかる
- システムやネットワークの状況に左右される
- 紙に比べると見え方が劣る部分がある
- 社員のITリテラシーが必要となる
ペーパーレス化の4つのデメリット
導入コストがかかる
ペーパーレス化を導入する場合、電子化された資料を見るためのディスプレイなど、電子機器の準備やネットワーク環境の整備が必要です。これらは、人数分の用意が必要となりコストの負担も大きくなることが予想できます。
また、過去に作成した紙の書類や資料を電子化するコストも考慮しなくてはなりません。その量が膨大な場合は、それらのデータを保存するため、大容量のサーバー等を契約する必要があり、月単位や年単位でその使用料金がかかります。
これらのことから、ペーパーレス化を実現させるためにはそれなりのコストがかかると言えます。
システムやネットワークの状況に左右される
電子化した文書や資料は、サーバーなどに保管し管理するため、システムやネットワークの状況に左右されます。
ネットワークに接続する機器の不具合など、個人の端末の問題はもちろん、サーバーやネットワーク自体に問題が発生した場合も、アクセスできなくなったり、データが消去されてしまう可能性があります。これらは、業務に支障をきたすため、万が一に備え、定期的にバックアップを取るなど、システムやネットワークに障害が発生した場合などに、被害が最小限に食い止められるように体制を整えておくことが必要となります。
紙に比べると見え方が劣る部分がある
電子化された書類や資料の見え方は、利用する端末やディスプレイの画面サイズに依存します。
例えば大きな図面の全体像を把握したい時や、複数のデータを同時に並べて見比べたい時などは、不便に感じることがあります。他にも、ディスプレイが小さいスマートフォンなどでA4サイズの資料を閲覧する際には、全体の文字は見づらくなるでしょう。また、資料自体が複数のページにわたる場合は、利用する端末やディスプレイによっては知りたい情報を探すことが難しくなります。
上記の原因により、作業効率が下がる可能性も考えられます。
社員のITリテラシーが必要となる
文書や資料など電子化したデータを活用し業務を遂行するためには、システムを使いこなすことができるITリテラシーが必要となります。
ペーパーレス化が進まない要因として、今まで紙の文書や資料に対応しているため、社員のITリテラシーが低く、システムの操作方法が分からない場合や、そのシステムになかなか馴染めない場合が考えられます。
さらに、「ITリテラシーの低さから、電子化された機密データの取り扱いを誤る」などの事態が発生するリスクもあります。ペーパーレス化を進める際は、システムの操作方法や使い方の指導をし、社員のITリテラシーを高めるとともに、端末のセキュリティ対策なども万全にしておく必要があります。
ペーパーレス化 推進のためのポイント
ペーパーレス化のメリット、デメリットを理解した上で、今後どのように取り組みを進めると良いか、ペーパーレス化を推進する際に、押さえておくべきポイント3つについて以下に詳しくご紹介します。
- ペーパーレス化の必要性について理解を深める
- 段階的にペーパーレス化を進めていく
- ITシステムやITツールを導入する
ペーパーレス化の推進ポイント3つ
ペーパーレス化の必要性について理解を深める
ペーパーレス化を進めるためには、経営陣から現場の社員まで企業全体でペーパーレスについて理解を深める必要があります。
経営陣は、まずペーパーレス化の必要性、そこから得られる効果を理解した上で、その取り組みを推進することが大切です。現場の社員にはどのようなメリットがあるか、また業務を遂行する上で具体的にどのような作業の変更点があるかを、分かりやすく周知することが求められます。
ペーパーレス化を行う目的を明確にし、その意義を理解した上で取り組むことが重要です。
段階的にペーパーレス化を進めていく
全ての書類を一気にペーパーレス化しようとした場合、あまりに大きな変革なため、社内に混乱を招く恐れがあります。現場の社員の負担が大きくなり、理解を得られず、ペーパーレス化の取り組みがスムーズに浸透しない可能性が出てくるかもしれません。
ペーパーレス化をスムーズに進めるためには、まず部署や業務単位で導入を進めることが重要です。
部署や業務またはプロジェクトといった小さい単位から、ペーパーレス化を試験的に運用し、効果を検証しながら進めると良いでしょう。問題点があれば改善し、その情報を共有・運用することで成功体験を積み重ね、徐々に他の部署や他のプロジェクトへの段階的に導入を進めていくことがポイントです。
ITシステムやITツールを導入する
ペーパーレス化を進めるためには、ITシステムやITツールの活用が有効です。
ペーパーレス化に役立つツールは多くありますが、目的にあったシステムやツールを選択することが重要です。また、それを利用する社員が使いやすいもの、わかりやすいものを選ぶことも、ペーパーレス化を促進する重要なポイントです。
- 紙の書類や資料を電子化するための、OCRソフトやPDF変換ソフトなどの利用
- 契約書のやり取りをクラウド上で行うことができる、電子契約システムの利用
- 社内文書の管理のための、ワークフローシステムの利用
- 資料をネットワークで共有し、紙を使わないペーパーレス会議を実施できるツールの利用
など、有効なツールを自社の目的に合わせて選択し、利用することがペーパーレス化の促進につながります。
まとめ
こちらの記事では、ペーパーレス化の意味やメリット・デメリット、ペーパーレス化の推進ポイントをご紹介しました。
ペーパーレス化は、コスト削減や書類の利便性の向上、業務の効率化など多くのメリットがあることがご理解いただけたと思います。
また、ペーパーレス化をスムーズに浸透させるためにかかせないものが、電子化に対応するITシステムやITツールです。
WorkVisionでは、電子契約サービスやワークフローソリューション、財務・会計周辺ソリューションなどペーパーレス化に役立つ様々なITサービスを提供しています。
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