2025年07月08日
カテゴリ:総務
従業員の退職が決まった際に、会社側が行うべき手続きは多岐にわたります。
社会保険や雇用保険の手続き、税金の処理、必要書類の準備など、それぞれに期限が定められています。
退職における会社側の手続きを時系列で整理し、やるべきことの一覧をチェックリスト形式で解説します。
煩雑な業務を抜け漏れなく、スムーズに進めるためのポイントを確認してみてください。
INDEX
まずは確認!従業員の退職手続き全体の流れとスケジュール
従業員の退職が決定してから退職後まで、会社側が行うべき事務手続きは複数存在します。
これらの手続きにはそれぞれ期限が定められており、いつまでに何を行うべきかを正確に把握しておく必要があります。
まずは退職日を基準とした全体の流れを理解し、退職日までに対応することと、退職日以降に対応することを明確に区別することが重要です。
これにより、計画的に手続きを進め、遅延や漏れを防ぐことが可能になります。
【チェックリスト】退職日までに会社側が対応すべきこと
従業員の退職日当日までに、会社側は様々な準備と対応を完了させる必要があります。
これには、退職の意思確認から貸与品の回収、必要書類の準備などが含まれます。
特に正社員の場合、社会保険や雇用保険に関連する手続きも関わってくるため、事前の段取りが肝心です。
このセクションでは、退職日までに済ませておくべき具体的な項目をチェックリスト形式で紹介し、各手続きのポイントを解説します。
退職願・退職届を受理し退職日を確定させる
従業員から退職の申し出があった場合、まずは退職願または退職届を書類で提出してもらいます。
口頭での申し出だけではトラブルに発展する可能性があるため、必ず書面で意思確認を行いましょう。
その後、就業規則に定められた期限までに提出を促します。
書類の形式は会社で指定があればそれに従ってもらい、なければ従業員が用意したもので問題ありません。
近年ではメールでの提出を認めるケースもありますが、その場合でも正式な書類として扱えるよう、提出方法のルールを明確にしておくことが望ましいです。
受理後、双方の合意のもとで最終的な退職日を確定させ、その後の手続きの起点とします。
従業員に今後の退職手続きの流れを説明する
退職日が確定したら、従業員に対して今後の手続きの流れを具体的に説明します。
退職日までに返却が必要なもの、退職後に会社から送付される書類、社会保険や税金に関する手続きについて、口頭だけでなく書面でも案内するとより丁寧です。
特に、離職票の要否や健康保険の切り替え方法については、本人の希望を確認しておく必要があります。
また、自己都合退職か会社都合退職かによって失業保険の給付条件も変わるため、その点も正確に伝えなければなりません。
双方の認識の齟齬を防ぎ、退職者が不安なく次のステップに進めるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけます。
健康保険被保険者証の回収について案内する
従業員が退職すると、会社の健康保険の被保険者資格を喪失します。
そのため、退職日当日までに本人および被扶養者分の健康保険被保険者証(保険証)をすべて回収する必要があります。
退職日の翌日以降は、その保険証は使用できないため、誤って使用しないよう事前に注意喚起することが重要です。
もし退職日までに回収が難しい場合は、郵送での返却を依頼します。
万が一、紛失してしまった場合は「健康保険被保険者証回収不能届」を提出してもらいましょう。
回収した保険証は、社会保険の資格喪失手続きの際に年金事務所へ返却します。
社員証やPCなど会社からの貸与品を返却してもらう
退職日までに、会社から従業員へ貸与している物品をすべて返却してもらいます。
対象となるのは、社員証、名刺、制服、PC、携帯電話、鍵など、業務上使用していたもの全般です。
会社側の手続きとしては、事前に返却物リストを作成し、従業員に渡して確認してもらうと回収漏れを防ぎやすくなります。
特に、PCや携帯電話などの電子機器は、内部に機密情報が含まれている可能性があるため、データの取り扱いについてもルールを定めておく必要があります。
最終出社日に担当者が立ち会いのもと、リストと照合しながら現物を確認し、返却漏れがないように徹底してください。
秘密保持に関する誓約書を取り交わす
在職中に知り得た会社の機密情報が、退職後に外部へ漏洩することを防ぐため、秘密保持に関する誓約書を取り交わします。
入社時に同様の誓約書を交わしている場合でも、退職時に改めて署名・捺印を求めるのが一般的です。
誓約書には、秘密情報の定義、退職後の守秘義務、違反した場合の措置などを明記します。
特に、秘密保持義務が有効な期間については、退職者の職業選択の自由を不当に侵害しないよう、適切な期間を設定することが重要です。
一般的には、退職後2年から5年の間で期間を定めることが多いとされています。
また、秘密保持の対象となる情報の範囲を具体的に限定することが、誓約書の有効性を保つうえで重要です。
これにより、退職者に対して情報管理の重要性を再認識させるとともに、企業の情報資産を保護します。
最終給与や退職金の支払準備を進める
退職者の最終給与の計算と支払準備を進めます。
最終給与は、通常の給与支払い日に支払うのが一般的ですが、退職者から請求があった場合は請求日から7日以内に支払わなければなりません。
退職金制度がある場合は、規程に基づいて金額を算出し、支払日や方法を本人に通知します。
退職金は所得税の計算が特殊であり、「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらう必要があります。
この申告書の有無で源泉徴収税額が大きく変わるため、忘れずに案内しましょう。
また、確定拠出年金に加入している場合は、移換手続きについても情報提供が求められます。
【チェックリスト】退職日以降に会社側が行う手続き
従業員の退職日を過ぎた後も、会社側には社会保険や雇用保険、税金に関する様々な手続きが必要です。
これらの手続きは「退職日の翌日から何日以内」といった形で提出期限が厳密に定められており、遅延すると追徴金などが発生するリスクもあるため、迅速かつ正確な対応が求められます。
ここでは、退職日以降に会社が行うべき主要な手続きをチェックリスト形式で整理し、それぞれの提出先や期限について詳しく解説していきます。
社会保険の資格喪失手続きを進める
従業員が退職した場合、退職日の翌日に健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。
会社は、事実発生日(退職日の翌日)から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を管轄の年金事務所または事務センターへ提出しなければなりません。
この際、退職者本人および被扶養者から回収した健康保険被保険者証を添付します。
退職者が60歳以上で、かつ再就職先が決まっていない場合など、特定の条件下では別の書類の提出も必要になることがあります。
社会保険の手続きは期限が短いため、退職後速やかに行いましょう。
雇用保険の被保険者資格喪失手続きを行う
従業員の退職に伴い、雇用保険の被保険者資格喪失手続きを行います。
会社は、従業員が退職した日の翌々日から10日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書(離職票)」を管轄のハローワークへ提出します。
離職証明書には、退職前の賃金支払状況や離職理由などを正確に記載する必要があり、特に離職理由は失業給付に影響するため、退職者本人に記載内容を確認してもらった上で署名または記名押印を求めます。
ハローワークでの手続きが完了すると離職票が交付されるので、それを退職者本人へ送付します。
住民税の特別徴収に関わる手続きをする
従業員の退職に伴い、住民税の徴収方法を変更するための手続きが必要です。
1月1日から5月31日までに退職した場合は、原則として最後の給与または退職金から5月分までの未徴収税額を一括で徴収します。
6月1日から12月31日までに退職した場合は、本人の希望に応じて一括徴収か、普通徴収への切り替えかを選択できます。
会社は「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を作成し、退職日の翌月10日までに従業員の居住する市区町村へ提出しなければなりません。
この届出書で徴収方法の変更などを報告します。
忘れずに!退職者へ送付・返却する重要書類一覧
従業員の退職手続きが完了した後、会社から退職者本人へ送付または返却すべき重要な書類がいくつかあります。
これらの書類は、退職者が失業保険の受給手続きや転職先での年末調整などを行う際に必要不可欠です。
手続きの遅れは退職者に不利益を与える可能性があるため、速やかに準備し、郵送などで確実に届けましょう。
このセクションでは、退職者へ渡すべき書類を一覧で紹介し、それぞれの役割と発行のタイミングを解説します。
離職票を発行し送付する
離職票は、退職者がハローワークで失業保険の受給手続きを行う際に必要となる書類です。
会社はハローワークでの手続きを経て交付された離職票を、退職者本人へ速やかに送付します。
離職票の交付が遅いと、退職者の失業保険の受給開始が遅れてしまうため、迅速な対応が求められます。
原則として、離職日の翌日から10日以内にハローワークへ書類を提出し、交付され次第、本人へ送付する流れとなります。
ただし、本人が希望しない場合は発行不要ですが、トラブル防止のためにも希望の有無を書面で確認しておくと良いでしょう。
雇用保険被保険者証を本人へ返却する
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入した際に交付される、被保険者番号が記載された書類です。
この番号は労働者一人ひとりに対して割り振られ、転職しても変わりません。
在職中は会社が保管しているのが一般的ですが、従業員が退職する際には本人へ返却する必要があります。
転職先の会社で雇用保険の加入手続きを行う際に提出を求められるため、退職者にとっては重要な書類です。
最終出社日に手渡すか、他の書類と一緒に郵送で送付します。
万が一紛失した場合は、ハローワークで再発行が可能であることを本人に伝えます。
源泉徴収票を作成し交付する
源泉徴収票は、その年に会社が支払った給与総額と、そこから徴収した所得税額を記載した書類です。
会社には、退職後1ヶ月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。
この書類は、退職者が年内に再就職した場合は転職先での年末調整に、再就職しない場合は自身で確定申告を行う際に必要になります。
最終給与の金額が確定してから作成するため、通常は退職後に郵送で送付します。
退職金の支払いがある場合は、給与所得とは別に「退職所得の源泉徴収票」も作成し、同様に交付してください。
健康保険資格喪失証明書を発行する(希望者のみ)
健康保険資格喪失証明書は、退職によって会社の社会保険の資格を喪失したことを証明する書類です。
退職者が国民健康保険へ加入する際や、家族の被扶養者になる際に提出を求められることがあります。
この証明書の発行は会社の義務ではありませんが、退職者から希望があった場合には速やかに発行します。
特に決まったフォーマットはないため、被保険者氏名、生年月日、資格喪失日、事業所名などの必要事項を記載した書面を作成します。
退職後の健康保険への切り替えをスムーズに進めるために、会社として協力する姿勢が求められます。
退職証明書を作成する(希望者のみ)
退職証明書は、その従業員が確かにその会社に在籍し、退職したことを証明する書類です。
転職先の企業から提出を求められたり、国民健康保険などの手続きで必要書類として扱われたりする場合があります。
労働基準法により、退職者から請求があった場合には、会社は遅滞なくこれを交付しなければなりません。
記載事項は、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由のうち、本人が請求した事項のみを記載します。
注意点として、本人が請求しない事項を記入してはなりません。
退職手続きで会社側が特に注意すべき4つのケース
一般的な退職手続きの流れに加えて、個別の状況によっては特別な対応が求められるケースがあります。
例えば、有給休暇の消化や、会社都合による退職、外国籍の従業員など、通常とは異なる配慮や追加の手続きが必要となる場合も少なくありません。
これらの特殊なケースへの対応を誤ると、後々トラブルに発展する可能性もあります。
ここでは、会社側が特に注意すべき4つのケースを取り上げ、それぞれの対応方法と留意点について解説します。
従業員から有給休暇の消化を申請された場合の対応
従業員が退職日までの期間に、残っている年次有給休暇の消化を申請した場合、会社は原則としてこれを拒否できません。
これは労働基準法で定められた労働者の権利であり、退職を理由に取得を妨げることは認められていません。
会社は事業の正常な運営を妨げる場合に時季変更権を行使できますが、退職予定日を超えての変更はできないため、退職時の行使は事実上困難です。
そのため、引き継ぎ期間などを考慮し、退職の申し出があった時点で有給休暇の残日数を確認し、計画的に消化できるよう従業員と話し合うことが望ましいです。
財形貯蓄や社内貸付制度を利用している従業員への対応
退職する従業員が財形貯蓄や社内貸付制度を利用している場合、追加の事務手続きが発生します。
財形貯蓄については、退職後も一定の条件を満たせば継続できる場合があるため、金融機関への手続き方法などを本人に案内します。
社内貸付制度を利用している場合は、退職時に残債を一括で返済してもらうのが原則です。
最終給与や退職金から相殺することも可能ですが、そのためには労使協定の締結や本人の個別同意が必要となります。
金額が大きい場合は分割返済の相談に応じることもありますが、その際は返済計画に関する念書などを取り交わしておきます。
外国籍の従業員が退職する場合の追加手続き
外国籍の従業員が退職する際には、通常の退職手続きに加えて、ハローワークへの届出が必要です。
雇用対策法に基づき、事業主は外国人労働者の離職の際に、「外国人雇用状況届出書」を提出する義務があります。
この会社側の手続きは、離職日の翌日から10日以内に、管轄のハローワークへ提出しなければなりません。
オンラインでの届出も可能です。
この届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となる可能性があるため、忘れずに行う必要があります。
在留資格に関する手続きは基本的に本人が行いますが、会社として必要な情報提供を行うことが望ましいです。
退職した従業員の個人情報の保管期間と管理方法
退職した従業員の個人情報を含む書類は、法律で保管期間が定められています。
労働基準法では、労働者名簿や賃金台帳などの重要な書類について、従業員の退職日から5年間(当面の間は3年間)の保存が義務付けられています。
社会保険関連の書類の保管期間は、書類の種類によって2年、3年、4年、5年、7年、10年など多岐にわたります。
例えば、健康保険・厚生年金保険に関する書類は完結の日から2年間、雇用保険の被保険者に関する書類は完結の日から4年間、労災保険に関する書類は完結の日から3年間と定められています。
これらの書類には機微な情報も含まれるため、施錠できるキャビネットで保管するなど、厳重な管理体制を構築し、情報漏洩のリスクを防ぐことが重要です。
法定の保管期間が過ぎた書類は、速やかに適切な方法で廃棄してください。
退職手続きの負担を軽減する効率化のポイント
従業員の退職手続きは、提出書類が多く、期限もタイトなため、人事労務担当者の負担が大きい業務の一つです。
特に、複数の従業員が同時期に退職する場合には、業務が煩雑化し、ミスが発生しやすくなります。
こうした負担を軽減し、事務手続きを正確かつ迅速に進めるためには、業務の効率化が不可欠です。
ここでは、労務管理システムの導入や電子申請の活用など、退職手続きの効率化に役立つ具体的なポイントを3つ紹介します。
労務管理システムを導入して手続きのミスをなくす
労務管理システムを導入することで、退職手続きに関わる様々な業務を自動化・効率化できます。
例えば、社会保険や雇用保険の資格喪失届などの書類を、システム上の従業員情報をもとに自動で作成することが可能です。
これにより、手作業での書類作成に比べて、転記ミスや計算ミスを大幅に削減できます。
また、システムによっては、手続きの進捗状況を可視化したり、タスクの期限が近づくとアラートで通知したりする機能も備わっています。
これにより、担当者は対応すべき業務を抜け漏れなく把握し、計画的に進めることができます。
電子申請(e-Gov)を活用して手続きを迅速化する
社会保険や雇用保険に関する手続きは、e-Gov(イーガブ)という政府の電子申請システムを利用して、オンラインで行えます。
例えば、雇用保険の資格喪失届などは、ハローワークの窓口へ出向くことなく、24時間いつでも申請が可能です。
これにより、移動時間や窓口での待ち時間が削減され、業務を大幅に効率化できます。
また、申請データの再利用や、入力内容の自動チェック機能などもあり、手続きの正確性向上にも寄与します。
近年、多くの労務管理システムがe-Govとの連携機能を搭載しており、システムから直接電子申請を行うことも可能になっています。
抜け漏れ防止に役立つ社内用チェックリストを作成する
退職手続きは多岐にわたるため、抜け漏れを防ぐには社内用のチェックリストを作成し、活用することが非常に有効です。
チェックリストには、「退職日までにやること」「退職日以降にやること」といった時系列でタスクを整理し、それぞれの項目に「担当者」「期限」「完了日」などを記載する欄を設けます。
これにより、誰がいつまでに何をするべきかが明確になり、進捗管理が容易になります。
また、貸与品の返却リストなども併せて作成しておくと、より確実な業務遂行が可能です。
このチェックリストを社内で標準化することで、担当者が変わっても手続きの業務フローを維持できます。
まとめ
従業員の退職の手続きは、法的に定められた義務が多く、期限も厳格に設定されているため、会社側には正確かつ迅速な対応が求められます。
退職願の受理から始まり、社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、住民税の処理、各種書類の作成・交付まで、その業務は多岐にわたります。
これらの手続きを円滑に進めるためには、まず全体の流れを把握し、時系列でやるべきことを整理することが重要です。
本記事で紹介したチェックリストを活用し、一つひとつのタスクを確実にこなしていくことで、手続きの抜け漏れや遅延を防ぐことができます。
また、労務管理システムや電子申請などを活用し、業務の効率化を図ることも検討すると良いでしょう。
注目のコラム記事
よく読まれている記事
新着記事
PICKUP

