年末調整とは?必要な書類や目的についてわかりやすく解説

2025年07月09日

カテゴリ:総務

年末調整は、給与所得者がその年に納めるべき所得税額を正確に算出し、過不足を調整するための重要な手続きです。

このプロセスの目的は、納め過ぎた税金を還付し、不足分を追加で支払う必要が生じないようにすることです。従業員が適切に申告を行うことで、税金に関する無駄な負担を避け、正しい税額を確定することが可能になります。

手続きを進める際には、必要な書類を正確に揃えることが重要です。

具体的には、扶養控除等(異動)申告書、基礎控除申告書、保険料控除申告書などが挙げられます。これらの申告書には、各種控除を適用するための情報をわかりやすく正確に記入することが求められます。

不備や遅延があれば、税務上のトラブルが発生するリスクが高まり、場合によっては還付金を受け取れない場合もあるため、十分な注意が必要です。

INDEX

年末調整とは何か?

年末調整は、給与所得者が支払うべき所得税額を正しく算出し、その過不足を調整するための手続きです。

毎月の給与から源泉徴収された所得税は概算であり、年末に実際の所得を元に再計算が行われます。これにより、納税者は納め過ぎた税金が還付される場合や、足りない場合には追加納税を求められることになります。

このプロセスは、企業側が行い、従業員は必要書類を提出することが求められます。

年末調整の基本的な目的

基本的な目的は、年間の所得に基づいて正確な税額を算出し、適正で公平な納税を実現することです。源泉徴収制度によって毎月の給与から一定の税金が差し引かれていますが、年末にはこれを精査して最終的な税額を確定させる必要があります。

この過程は、日本の税務制度特有の控除や特例を考慮しつつ進められ、制度全体の公平性を保つ役割も果たしています。

所得税の過不足を調整する仕組み

所得税の過不足調整の仕組みとして、毎月給与から天引きされる源泉所得税は、その年の総収入が確定した際に調整が行われます。

この調整は、年間の総収入から適用可能な控除を差し引くことで最終的な課税所得を算出し、それを基に実際に納めるべき所得税額を決定するためのプロセスです。

その結果、過剰に支払われた場合には還付が行われ、不足している場合には翌年の給与から差し引かれる手続きが取られます。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告は、いずれも所得税の調整に関わる重要な手続きですが、対象者やその目的には明確な違いがあります。

年末調整と確定申告の違いを把握することは、自分の状況に応じた適切な手続きを選択するために重要です。自分が該当する手続きに対して十分な理解を持つことで、税務上の余分な負担やミスを防ぐことにつながります。

それぞれの役割と対象者

年末調整は、主に雇用先から給与を支払われている人が対象になります。

会社勤めの人々にとって、年末調整はその年の給与に関連する基本的な税務処理の一環として位置付けられており、大多数が自動的にこのプロセスに含まれます。ただし、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一部の人は年末調整の対象外になります。

一方で、確定申告は、自営業やフリーランスといった個人事業主、さらには年収が高い人々や多様な収入源を持つ方々が主な対象者となります。

この手続きでは、納税者自身が1年間の所得を詳細に自己申告し、それに基づいて税額を確定させることが求められます。

年末調整で受けられる控除

年末調整では、さまざまな控除を受けられる機会があります。

中でも主な控除として、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などが挙げられます。これらの控除を適切に適用することで、課税対象となる所得額を減少させ、結果的に所得税を軽減できます。

給与所得者にとっては、年末調整を通じてこれらの控除を最大限に活用することが重要であり、場合によっては過払いとなっている税金の還付を受けることも可能です。そのため、控除の種類や具体的な内容を理解し、それに対応した必要書類を準備・提出することが大切です。

このプロセスを正しく行うことで、控除の恩恵を確実に受けることができるでしょう。

確定申告が必要になる場合

特定の条件下では、確定申告を行う必要があります。

例えば、給与所得以外に事業所得や不動産所得がある場合、または副業によって複数の収入源がある方は確定申告が必須となります。さらに、給与所得が2000万円を超える場合や、年の途中で退職後に再就職した場合も確定申告が求められます。

また、医療費控除や寄附金控除、住宅ローン控除の一部適用など、各種控除を受けたい場合にも適切な確定申告を行う必要があります。

自分がどの条件に該当するかを確認し、正確な手続きを進めることが大切です。

年末調整の対象者とは?

年末調整の対象者は、基本的に給与所得者を指しますが、いくつかの条件を満たしている必要があります。

具体的には、会社に勤める正社員や契約社員はもちろん、パートタイムやアルバイトとして働く方も対象者となります。

各条件や例外についてご紹介いたします。

年の途中で転職した場合

年の途中で転職した場合でも、年末調整が適用されるケースがあります。

新しい職場で働き始めた際、前職の給与も考慮した適切な所得税の計算が求められます。転職先の会社は、前職の源泉徴収票を基に、年間の総所得を把握し、正確な税額を算出する必要があります。

この場合、前職での年末調整は行われず、転職先で一括して調整が行われますので、スムーズに必要書類を提出することが重要です。

非居住者に該当する場合

非居住者については、年末調整の対象外となります。非居住者とは、日本国内に住居を持たない人や、勤務先が海外にある人々を指します。

このような場合、日本の税法に基づく年末調整の制度には該当しません。非居住者であるかどうかを確認することは、正確な税務手続きを行う上で非常に重要です。

年末調整の対象外となるケース

特定の条件によっても年末調整が適用されないケースがあります。

まず、自営業やフリーランスとして働いている方、もしくは年間の給与所得が2000万円を超える方は年末調整の対象外となります。

さらに、副業による収入がある場合も年末調整の対象外となることがあります。特に、副業の年間所得が一定の金額を超える場合には、主たる給与所得とは別に確定申告を行い、税金を精算する必要があります。

その他、年内に退職した人、年間の給与所得が103万円以下で源泉徴収を受けていない人なども対象外となります。

これら対象外のケースでは、事前に条件を把握し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。

年末調整で必要な書類

年末調整を行うためには、いくつかの重要な書類を正確かつ期限内に提出する必要があります。

年末調整で対象者全員の提出が必要な書類のほか、対象者のみ必要な書類もあるため、それぞれの役割を押さえておくことが重要です。提出書類の記載内容に不備があると控除が適用されない可能性もあるため、各書類をしっかりと確認し、漏れがないよう準備することが大切です。

扶養控除等(異動)申告書の役割

扶養控除等(異動)申告書は、年末調整において全員が提出する必要がある書類です。

この申告書は、扶養親族の状況を証明するために使用されます。
扶養親族がいる場合、その人数に応じて所得税の控除を受けることが可能です。年末調整を行う際には、扶養控除の適用を受けるためにこの申告書を必ず提出しなければなりません。

扶養親族がいない場合でも、必ずこの申告書を空欄で提出する必要があります。
これにより、会社側は正確な税額を算出することが可能となります。

基礎控除申告書と配偶者控除等申告書

基礎控除申告書は、基礎控除を受けるために提出する必要があります。この基礎控除を活用することで、実際に課税される所得を低減できるため、正確な記載が求められます。

一方、配偶者控除等申告書は、配偶者控除もしくは配偶者特別控除を受ける場合に提出が必要な書類です。

配偶者控除および配偶者特別控除は、納税者となる従業員の合計所得金額が1,000万円以下の場合に適用が可能で、配偶者の給与収入が133万円までであれば、配偶者特別控除を受けられます。

2024年度は定額減税が適用され、「定額減税に係る記載欄」が追加されています。

保険料控除申告書の記入方法

保険料控除申告書は、生命保険、地震保険、個人年金保険などに加入している場合、保険料控除を適用するために必要となる書類です。

記入の際には、保険会社から提供される「保険料控除証明書」が必須です。この証明書に記載されている保険料額を具体的かつ正確に転記し、必要な情報を漏れなく伝えることが求められます。

保険料控除申告書の提出により、対象となる保険料が控除され、課税所得の減少が期待できます。

住宅ローン控除申告書の必要な情報

住宅ローン控除申告書は、住宅を購入して住宅ローンを利用している納税者にとって重要な書類です。

この申告書では、ローンの借入金額、返済期間、利率、購入した住宅に関する詳細な情報が要求されます。特に、住宅ローン控除を最初に受ける初年度には確定申告が必要な場合が多く、必要書類を事前にしっかりと準備しておくことが重要です。

その後、2年目以降は年末調整によって継続的に控除を受けることが可能です。

住宅ローン控除は家計にとって大きなメリットとなるため、必要なプロセスを丁寧に進めることが重要です。

年末調整の計算手順

年末調整の計算には、年間の給与収入を算出し、それに基づいて源泉徴収された所得税を確認することから、給与所得控除の適用、所得控除の項目の確認などが含まれます。

正しく計算されれば、還付金が発生する場合が多いので、正確な手順による手続きが求められます。

年間給与収入の計算

年間給与収入の計算は、年末調整において基本的かつ重要なプロセスの一つです。

まず、社員の月給、ボーナス、手当など、すべての給与収入を合算し、その年の年間総収入を計算します。この際、課税対象となる給与収入に注意し、非課税部分はしっかりと除外する必要があります。

さらに、年収が変動した場合や、転職により異なる給与収入がある場合でも、漏れなく正確に集計することが重要になります。

給与所得控除の適用

給与所得控除は、年間の給与所得に対して適用される控除であり、給与収入の金額に応じて一律の計算方法が設定されています。

この控除額は給与収入が増えるにつれて増加する仕組みですが、上限額が定められているため、収入が一定額以上になるとそれ以上の控除は適用されません。

この仕組みにより課税対象となる所得が減少し、結果的に支払う所得税額を抑えることができます。

所得控除と課税所得の算出

所得控除は個別の事情によって変動するため、さまざまな控除項目を考慮して計算する必要があります。

これには、基礎控除、扶養控除、配偶者控除などが含まれ、その金額から引いた後の所得を課税対象として課税所得が算出されます。

例えば、医療費控除や寄付金控除など特定の条件がある控除も存在し、これらを適用することでさらに税額が軽減されることがあります。

過不足の所得税額の具体的な計算方法

過不足の所得税額を計算する際は、課税所得に対して適用される税率を確認し、税額を算出します。

具体的には、見積もった税額からすでに源泉徴収された税額を差し引きます。戻ってくる還付金額がある場合、適正な手続きを経て従業員に返金されます。逆に、追加で納付が必要な場合は、翌年の給与から差し引く形で調整されることが一般的です。

年末調整を忘れた場合の対応策

年末調整を忘れた場合、まずは焦らずに必要な手続きから順番に行うことが重要です。

年末調整を期限内に済ませなかった場合、確定申告を通じて過不足分の税額を調整する方法があります。この手続きは翌年の確定申告期間に実施され、収入や控除の情報を基に自ら税額を計算します。

もし申告を行わなかった場合、還付金を受け取る機会を失うだけでなく、将来の住民税額にも悪影響が出る可能性があります。さらに、必要な書類を適切に保管し、申告内容に誤りがないか再確認することが求められます。

不明な点や心配なことがあれば、税務署や専門家に相談することも視野に入れましょう。

確定申告で過不足分を調整する方法

任意継続制度は、退職後も以前の健康保険に継続して加入できる特別な制度で、加入期間は最長で2年間ですが、1年目と2年目とで保険料の負担に変わりはなく、全額自己負担となります。

退職前は保険料の半分を雇用者が負担していましたが、任意継続の場合、その負担がなくなるため、保険料が上がります。

そのため、任意継続を利用する前に金銭的な負担をしっかりと検討することが重要です。また、任意継続制度を選択することで、退職後も医療費に対する安心感を得られる一方、保険料の支払いを継続できるかどうか事前に計画を立てておくことが求められます。

提出しなかった場合のリスク

年末調整の申告書を提出しなかった場合、多くのリスクが伴います。

まず、税務署からの調査が入る可能性があり、不適切な税務処理や控除の不適用が指摘されることがあります。さらに、還付金を受け取ることができず、過剰に支払った税金が戻らない状況に陥ることもありえます。

また、正しい納税額を示すための書類が欠けていると、翌年の住民税額にも悪影響を及ぼすことがあります。

翌年の住民税額の影響を理解する

年末調整を忘れた場合、翌年の住民税額に大きな影響を及ぼす可能性があります。

住民税は前年の収入に基づいて計算されるため、正確な所得金額を反映させることが重要です。年末調整により適用される控除が適切に反映されないと、課税対象となる所得が増え、その結果として住民税額が高額になる危険性があります。

このような事態を避けるためにも、年末調整の仕組みや重要性をしっかりと理解し、忘れずに適切な手続きを行うことが重要です

2024年の年末調整に関する変更点

2024年の年末調整に関して、例年の手続きから変更された内容がいくつか存在します。

定額減税に関する内容のほか、特定の書類項目にも変更がなされています。年末調整の手続きに関わるすべての人がこれらの変更点をしっかりと理解し、正確に対応することが重要です。

定額減税の適用

2024年6月1日より、経済政策によって定額減税が実施されたことに伴い、年末調整の手続きにも影響が出ています。

定額減税とは、2024年6月より1年間実施となる、4万円(所得税3万円+個人住民税1万円)を減税する経済施策です。同一生計配偶者や扶養親族がいる場合、その人数分同額が減税されます。

定額減税の対象者は、2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与所得のみは2,000万円以下)の人になります。

異動届や控除書類の変更内容

2024年の年末調整においては、異動届や控除書類の内容が一部変更されています。

特に、扶養控除や配偶者控除に関連する申請書類が改訂され、これまで以上に正確で明確な情報の提供が求められるようになりました。この変更は、従業員が必要な控除を確実に受けられるようにすることを目的としています。

また、書類提出の際には、勤務先で異動が発生した場合の情報も正確に申告する必要があります。

年末調整のよくある質問

年末調整には複数の手続きや書類が関わるため、処理を進める上で疑問に感じる部分も少なくないと思われます。

以下の項目で、書類の提出期限や必要事項、還付金の扱いについて、ご説明いたします。

書類の提出期限や必要事項

年末調整の手続きは10月から翌年1月にかけて実施され、年末調整に必要な書類の提出期限は、11月の初旬から中旬にかけて設定されることが一般的です。ただし、具体的な期限は企業ごとに異なる場合があるため、それぞれの勤務先からの詳細な指示を必ず確認してください。

年末調整で提出が求められる代表的な書類として、扶養控除等申告書、基礎控除申告書、保険料控除申告書などが挙げられます。これらの書類には、年収、扶養家族の情報、支払った保険料に関する正確な内容を記載する必要があり、不備があった場合には再提出が求められる可能性があります。

そのため、書類作成時は、記入漏れや誤りがないよう細心の注意を払うことが重要です。また、提出期限を過ぎてしまうと手続きが遅れるリスクがあるため、期限内に全ての書類を揃えて提出するよう心掛けましょう。

還付金の受け取り方

還付金を受け取る方法は、年末調整後の手続きに依存します。

過剰に納めた所得税が還付される場合、その金額は通常、翌月の給与として支給されることが一般的です。具体的には、年末調整の結果を反映させた給与明細に還付金が記載される形で通知されます。

還付金を受け取るプロセスは比較的簡単ですが、時には還付金額が大きい場合やその他特別な事情がある場合、税務署から直接確認されることもあります。この際、正確な手続きが進められるよう手元の所得や必要な書類をきちんと把握しておくことが求められます。

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