グランドデザインが鍵となるIoT

2017年08月01日

カテゴリ:オピニオン

ビジネスで旬なキーワードであるIoT。情報技術分野の第一線で活躍する東京大学大学院情報学環 越塚登教授に最近のトレンドを伺いました。

IoTは、ユビキタスコンピューティングと言われていた30年前から変わってない部分と変わった部分があります。たとえば、「地震の予知・検知のシステム」や「電車の制御システム」などは、昔から今でも活躍しているIoTの一種です。

ユビキタスと言われていた時との一番の違いは、IoTでは製品レベルだけでなく社会の仕組みも見据えての設計が必要になってきている点でしょう。政策なども含めた、利用する状況のグランドデザインが重要です。たとえばヘルスケアデータや行動履歴などを各個人が自身の意思で管理する「PDS」(Personal Data Store)や、他者に預託する「情報銀行」は、個人情報を管理するシステムを用意するだけではなく、個人情報保護法も含めた枠組みを考えなくてはいけません。

家電は技術的にはすぐにでもIoT化が可能です。しかし、なぜいまだに実現していないのか。要因のひとつは製造物責任(PL)法です。家電をIoTでつなげて使うということは、製品出荷時に想定された使い方とは異なる使い方をする可能性があります。想定外の使い方で事故が起きた場合でも、今のPL法ではメーカー側に責任を問われます。このような制度を変えないと、家電のオープンなIoTの実現にむけてメーカーは動けません。

また、物をテクノロジーでつなげていくうえで、標準化の議論も欠かせません。ユビキタスと言われた時代はプレイヤーが少なかったのですが、今はプレイヤーが多いうえに、標準化団体も数多く存在します。これでは標準化を進めるのは厳しい。もちろん、Amazonのプラットフォームのように、業界ごとのプラットフォームの標準化はできるでしょう。しかし、IoT全体で標準化されたプラットフォームづくりはなかなか難しい。

第一次産業では、IoTを活用できる可能性にあふれています。トマトやキュウリの園芸農業で、日本の単位面積当たりの収穫量と比較して4倍採れるオランダは、気象情報などのデータを活用した環境制御が進んでいます。日本ではまだこれからの分野なので、データやリソースの共有や活用を支援することが、ビジネスになるでしょう。

これらをリードする、トップアーキテクトと言われるような人材を日本で育てていくことが急務です。いわばWindowsやAndroidなどのOSを開発できるような人です。昔は私もプログラミングだけ担当していればすみましたが、IoTになり、さまざまな役割でプロジェクトに関わるようになりました。ニッチな隙間を見つけるのではなく、既存のものを壊していくくらいの人材を育成する。これが、全体を見据えたデザインができる人材育成にもつながり、日本のIoTの発展を後押しすることにもなるでしょう。

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