公認会計士 Mrナカタ
リモートの”先”にある「勤務指標」の転換とは?

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1. そもそも『働き方改革』の目的とは?

2020年、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のために、テレワークは国内のみならず海外でも企業間に広がりました。政府の自粛要請や緊急事態宣言を受けて、半ば強制的に導入が進んだというのが否めませんが、それでも政府が目指していたテレワークの導入が進んだことは事実です。

政府はもともと「働き方改革」の一貫としてテレワークの導入を進めていました。そこで働き方改革について、今一度、整理してみましょう。

働き方改革とは、ひと言で表すと「一億総活躍社会を実現するための改革」です。この一億総活躍社会とは、「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しも活躍可能な社会」を指しています。これから日本は、超高齢化社会を迎えます。生産年齢人口が総人口を上回るペースで減少しており、労働力人口は2060年にはピーク時の半分くらいになると試算されています。

このままでは、国全体の生産力低下・国力の低下は避けられません。そこで「働き方改革」を推し進めることにより、労働力不足を解消するというのがその目的です。政府は、次の3つを対応策として挙げています。

  • 長時間労働の解消
  • 非正規と正社員の格差是正
  • 高齢者の就労促進

政府はこの「長時間労働の解消」のために、闇雲に「残業時間の削減」や「休日出勤禁止」を推進しました。長時間労働でなければ、労働者の満足度が上がり、労働生産性の向上に繋がるとしているのです。しかし実際のところ、「残業時間の削減」や「休日出勤禁止」が、労働者の生活を充実させているのでしょうか。

いつの間にか、手段であるはずの「残業時間の削減」や「休日出勤禁止」が目的となってしまい、「なんのために」という本来の目的はどこかに置き忘れられているのが現状です。

そして翻って、「テレワーク」の問題です。新型コロナウイルス感染から「社員の命や健康を守る」ことが、テレワーク導入の最大の目的でした。しかし、いつのまにか「テレワークの導入」が目的となってしまったために、いざ導入しようとすると「費用対効果云々…」という話になり、導入が一向に進まない企業も見られます。さらに導入している企業においても、経理の社員は依然として出社を余儀なくされていたという事実があります。

テレワークの導入にあたっては、たとえ経理社員であっても在宅で作業ができる環境を整えていかなくてはいけません。この前提のもとでテレワークを導入することによって、はじめてどのような問題が生じるのかが見えてきます。

2. 「見えない」テレワークにおける業務評価

実際にテレワークを導入した場合、課題となるのが、どのように社員の業務を管理すべきかという点です。出社すれば、タイムカードなどで勤務時間を管理できるため、どれほど社員が働いたのか、その仕事ぶりは可視化され、会社側は容易に社員の勤務時間や態度を把握・評価することができます。

しかしテレワークであれば、社員は上司の目から離れたところで業務を行うことになるため、本当に「8時間働いているのだろうか?」という疑念が生まれるのは当然といえます。
厚生労働省の調査によると、雇用型テレワークの課題として「労働時間管理が難しい」というのが上位に挙がっています。

このような疑念を払拭するために、社員のPCへのログイン状況や仕事内容を遠隔で管理できるツールも開発されています。従来からの業務管理が通用しなければ、このようなツールを利用することもひとつの解決策かもしれません。しかしながら、そもそも業務評価を「何時間働いたか?」という時間管理によって行うことが問題です。

テレワークを導入するためには、「何時間働いたか?」という従来の時間基準ではなく「何をやったのか?」という仕事の質を評価する仕組みや制度が新たに必要なのではないでしょうか。

3. 「8時間勤務」その背景にある”実態”とは?

それでは、なぜ勤務時間は「8時間」と決まっているのでしょう。本来、やるべき業務が完了さえすれば、「8時間勤務」である必要はないはずです。例えば経理の場合は、その仕事内容は大きく「日常経理業務」と「決算業務」のふたつにわけられます。

「日常経理業務」とは、日々の請求書や領収書の処理のことです。具体的には、領収書による経費精算や請求書に対する支払い、入金されたかどうかの確認など及びこれらの取引の仕訳処理が挙げられます。「決算業務」に関しては、決算スケジュールに沿って、それぞれ担当する業務のスケジュールがきっちりと決まっています。

いずれの業務にしても、やるべきことが決まっているので、その業務が終われば仕事は完了したといえるでしょう。自分の業務が終われば、余った時間は自由に使ってもかまわないはずです。逆に、効率良く業務を進めようという意識が働き、仕事の効率化が図られる結果、自由な時間が増え、ワークライフバランスの向上という好循環が生まれることでしょう。

しかし現実は、「8時間勤務」と決まっているために、「ただ8時間会社にいればいい」という考え方に偏り、やるべき業務がないにも関わらず”忙しそうなフリ”をしなければならないというのが実情です。「なぜ会社は時間単位で評価するのか?」というと、その方が「単に楽だから」というひと言に尽きます。そして残念ながら、確実に一部の人はこのような思考で物事を考えているのです。そのような人たちの根底には、「何かを変えることは面倒だ」というのが本音としてあります。

しかし今後、テレワークが一般化した社会においては、「その人がどういう業務をしたのか?」という質的観点から評価していく必要があります。
テレワークを導入することで企業の生産性を上げるためには、今までのように社員の業務を時間単位で評価するのではなく、新しい「就業規則」や「人事評価制度」が必要なのです。

4. 時間単位から”クオリティー評価”への移行は可能なのか?

今後、時間単位から業務の完了度合いによって評価される「クオリティー評価」へ移行できるのでしょうか。今のところ、社員の評価を「業務が完了したかどうか」という基準で測ることは難しいため、依然として時間管理により評価がなされています。効率良く早く業務を終わらせることより、長時間働くことのほうが評価が高いというのはなんとも皮肉な話です。

このように、現在の人事管理は「時間を管理する」ことが目的となっており、本来の社員の能力を見極め、適切に評価するということができていません。今回、新型コロナウイルス感染症の拡大がきっかけとなり、テレワークに注目が集まりましたが、テレワークはあくまでも手段でしかありません。社員を新型コロナウイルスの脅威から守るために、テレワークに適した新たな就業規則や人事評価制度が取り入れられれば、従来の時間管理をもとにした評価のあり方を変える転換点となり得るでしょう。

そのためにも、パフォーマンスとしてのテレワークではなく、社員の生活を充実させる新しい働き方のひとつとして、企業が率先してテレワーク環境を整備し、社員の命と健康を守っていく必要があるでしょう。

監修: 公認会計士 中田清穂

一般社団法人日本CFO協会主任研究委員。公認会計士。
1984年明治大学商学部卒業、1985年青山監査法人入所。2005年に独立し有限会社ナレッジネットワークにてIFRS任意適用、連結経営、J-SOXおよび決算早期化など、決算現場の課題解決を主眼とした実務目線のコンサルティングにて活躍中。

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