2020年08月26日
カテゴリ:総務
知的財産権とは?
知的財産権とは、人や企業が生み出した創造物を財産とみなし、他者の侵害を受けないよう保護をするための権利です。知的財産権の権利期間は、特許庁や文化庁などが定めた権利ごとの期間内で保護されるようになっています。
一般的に、知的財産権といえば「特許権」や「著作権」が思い浮かびますが、実際には数多くの権利や法律が存在しています。知的財産権は、知れば知るほど企業や個人の知財がどのように保護されているのかが明白に分かるでしょう。
知的財産権の3つの種類
ここでは、知的財産権にまつわる12個の権利や法律を、3つのカテゴリに分けて詳しくご紹介します。
1つ目は、企業などが独自で生み出した新しい技術や商品のデザインを守る「産業財産権」、2つ目は、オリジナルの創作物を保護する「著作権」、そして3つ目は、半導体集積回路の回路配置の利用を保護する「回路配置利用権」など、そのほかの権利です。
知的財産権の種類1:産業財産権
産業財産権には、特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つがあり、全て特許庁が管轄しており、いずれも産業の発達を目的としています。
産業財産権を保有するには、独自で生み出した技術やデザインなどを特許庁へ出願し、所定の審査を経る必要があります。無事権利が認められると、決められた期間に利用を独占できる仕組みです。
特許権
特許権は、自身が発明した技術などを保護する権利です。発明の「保護」と「利用」を図ることで発明を奨励し、産業の発達に寄与することを目的としています。
例えば、消せるボールペンとして有名なパイロットの「フリクションボール」など、産業で利用が可能な発明品に対して与えられます。権利期間は、特許庁への出願から20年で終了します。なお、試験の必要なものについては5年間延長されることもあります。
実用新案権
実用新案権は、物品の形状、構造または組み合わせに係る「考案」の保護と利用を図ることで、産業の発達に寄与することを目的としています。
例えば、スマートフォンのボタン配置や構成は、実用新案権の権利を得られます。権利期間は、特許庁への出願から10年で、出願から3年以内に、実用新案登録に基づく特許出願をすることも可能です。
意匠権
意匠権の「意匠」とは、物品の形や色、デザインを考案する意味を持ちます。
意匠権とは、商品や画像のデザインから建築物の外観まで、あらゆる商品デザインを保護する権利です。
新しく創作された意匠を創作者の財産と位置付け、その保護と利用のルールについて定めることで、産業の発達に寄与することを目的としています。物品の「部分」のデザインも意匠法の保護対象となる「意匠」に含まれます。権利期間は、特許庁への出願日から最長25年で終了します。
※ 平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願は設定登録の日から最長20年です。
※ 平成19年3月31日以前の出願は設定登録の日から最長15年です。
商標権
商標権は、企業が自社製品などに利用するロゴやオリジナルのマークを保護する権利です。商標を使用者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護するために、商標法に基づいて設定されています。
例えば、Apple製品のリンゴマークなどにあたります。権利期間は、特許庁への登録から10年で、更新が可能です。
知的財産権の種類2:著作権
著作権は、文芸・学術・美術・音楽などを創作したことにより著作者に発生し、あらゆる創作物を保護するための権利です。権利期間は、人であれば死後70年まで、法人であれば公表後70年まで権利が与えられます。
著作者は、人格的な利益である著作者人格権と、財産的な利益である著作権(財産権)の二つの権利によって保護されています。
また、著作物の創作者でなくても、著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者・有線放送事業者は、著作隣接権で保護されています。
知的財産権の種類3:そのほかの権利
知的財産権には、商業で重要な権利のほかにもさまざまな権利があります。
植物の新しい品種を独占して育成する権利や、半導体集積回路(IC)の回路配置利用を保護する権利、そして産業のマーケットで公平な状態を保つための権利などがあります。
ここでは、7つの権利と法をご紹介します。
種苗法
種苗法とは、新しく生み出された植物の品種を保護し、育成の権利を占有することができる法律です。
この法律は、新しい品種の栽培・育成を推進することで、農林水産業を発展させることを目的として作られました。育成者権とも言われます。権利期間は、農林水産省への品種登録から25年(樹木30年)で終了します。
回路配置利用権
回路配置利用権は、あらゆる家電に使われている半導体集積回路(IC)の回路配置の利用を保護する権利です。
権利期間は、一般財団法人ソフトウェア情報センターへの登録から10年で終了します。
商号
商号とは、企業が営業上重要な名称を独占して利用できる権利です。商号は商法によって保護され、所在地の法務局に登記します。
商号権は、商号に関する権利です。登録企業の商号に類似している商号がある場合は、排除することも可能です。
肖像権
肖像権とは、個人の容姿などの肖像を無断で撮影・使用することを禁止するための権利です。
個人の許可なく写真や動画に使用されていた場合、映っている個人が誰か判別できる状態で受忍の限度を超えていれば、侵害を主張することが可能です。
不正競争防止法
不正競争防止法は、周知されているマークの不正使用、原産地の偽装表示、形態コピー商品の販売などの「不正競争」を規制するなど、似たデザインや名称の使用を規制する法律で、音や香りや動きも対象としています。
企業が営業をするうえで重要な「商品等表示」では、企業が編み出したデザインや名称の不正使用を規制します。
また、企業が持つ秘密情報が不正に持ち出されるなどの被害にあった場合に、民事上・刑事上の措置をとることができ、企業の研究・開発や営業活動の過程で生み出された顧客名簿や新規事業計画、価格情報、対応マニュアル、製造ノウハウ、設計図面など、様々な「営業秘密」 を保護します。
独占禁止法
独占禁止法は、公正取引委員会が管轄している法律です。独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。
1つの企業が市場の売上を独占する行為や、業界内で繋がっている複数の企業が口裏合わせをし、入札を高く見積もる行為などを禁止するためにあります。
独占禁止法では、不当な低価格販売などの手段を用いて、競争相手を排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占する「私的独占」や、事業者間で相互に連絡を取り合い、商品価格や販売・生産数量などを共同で取り決める「カルテル」、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し、事前に受注事業者や受注金額などを決めてしまう「入札談合」などの行為を規制しています。
弁理士法
弁理士法は、弁理士として活動をするうえでの職責や業務など、さまざまな制度を定めた法律です。
弁理士とは、産業の財産権に関わる手続きを、全て代理で行える国家資格保有者のことです。弁理士の資格を持っていない者が、特許出願等に係る手続の代理や出願書類等の作成等を業として行うことは、弁理士法により禁止されています。なお、弁護士も弁理士の事務を行うことができます。
知的財産権について詳しくなるための資格とは?
知的財産権を詳しく学ぶには、「知的財産管理技能検定」の受験がおすすめです。知的財産管理技能検定は、 知財マネジメントに関する技能の習得レベルを公的に証明するための国家試験で、 合格者には知的財産管理技能士という国家資格が与えられます。
試験は等級が分かれており、1級から3級まで選ぶことができます。受けられる内容は、1級が「特許専門業務・コンテンツ専門業務・ブランド専門業務」、2級が「管理業務(中級者)」、3級が「管理業務(初級者)」です。
どれも自社製品などを持つ企業にとって、重要な知的財産管理にまつわる構成内容となっています。そのため、数多くの企業で人材育成や昇格要件としても使用されているでしょう。
知的財産管理技能士の資格を取得するメリット
知的財産管理技能士の資格を取得することで、知財マネジメントのスキルを公的に証明できるほか、あらゆる職種や業務上で実際に使いながらスキルアップを図れるメリットがあります。
また、企業全体で取得を目指すことにより、専門部署に関わらず、一般的な部署でも高度な知財マネジメントを意識して経営能力を高めていくことも期待できるでしょう。
知的財産管理技能検定を受ける際には過去問の挑戦が有効?
知的財産管理技能検定の過去問は、全て実際に試験で出題された内容なので、検定の受験を考えているのであれば、挑戦しておくことがおすすめです。
また余裕があれば、ひとつ上のランクの過去問に挑戦することも有効でしょう。過去問は、検定の公式ホームページで確認することができます。
過去問へ挑戦をする際に注意すべきこと
公式の過去問はとても有益ですが、試験後に法改正された部分については訂正や改訂はされない決まりとなっているため注意が必要です。
例えば、下記の表にある2020年4月1日から改正された「意匠法」の部分も、現時点では改訂されていません。
意匠法の改正項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
意匠法の保護対象 | 物品に限る | 物品に加え、画像・建築物・内装のデザインが登録可能に |
関連意匠制度の拡充 |
関連意匠の出願可能期間が本意匠の意匠公報発行前まで(本意匠の出願から8か月程度) |
基礎意匠の出願から10年を経過する日前まで |
意匠権の存続期間 | 意匠権の満了日は登録から20年経過した日まで | 出願日から25年経過した日まで |
創作非容易性の水準の明確化 | 創作非容易性の根拠となる資料は公然知られたものに限定 | 公然知られたか否かに関わらず、刊行物やウェブサイト等に掲載された形状・模様等も根拠資料となった |
組物の意匠の拡充 | 組物部分の登録は認められなかった | 登録可能に |
間接侵害の対象拡大 | 権利を侵害している品を構成部品に分割して製造・輸入等することは侵害行為とみなされなかった | 悪意を持ってした行為は侵害とみなされるように |
損害賠償算定方法の見直し | 権利者の生産・販売能力等を超える部分が損害賠償請から除かれていた | 該当部分が除かれないことに |
複数意匠一括出願の導入(施行予定) | 意匠ごとに出願する必要があった | 複数にまとめた出願が可能に |
物品区分の扱いの見直し(施行予定) | 出願書に記載する物品を「物品区分表」により定めていた | 廃止・「一意匠」の対象となる基準を設ける |
手続救済規定の拡充(施行予定) | 指定期間などが経過した後の出願等の救済が認められていなかった | 指定期間などの後の出願等の救済が認められることに |
資格・スキル管理におすすめの人財管理ソリューション
WorkVisionでは、知的財産管理技能士などの企業に欠かせない重要な資格やスキルを管理し、適材適所の人材を配置する人財管理ソリューションを提供しています。
人財管理ソリューションは、事業統合、M&Aなどの大規模な業務・組織変更にも柔軟に対応できる優れたシステムです。従業員の個人情報管理や所属管理、採用、異動、退職、教育・育成、配置、人事考課など、人事にまつわる業務を担い、効率化・負担軽減を可能にしてくれます。
従業員の資格・スキル管理を行い、戦略的な人財活用や人財育成を支援します。
どの知的財産権を保有しているか確認しよう
自社製品などを扱う企業にとって、どの知的財産権を保有しているのか、または保有可能であるかの判断やマネジメントはとても重要です。数多くある知的財産権の中で、企業が保有できる知財のマネジメント能力が不足していると、経営力の停滞や不利益にも繋がりかねません。
また、適切な人材配置は、企業にとって大きな課題です。業務経歴・スキル・取得資格などの情報を参考に人的配置を検討する会社がほとんどですが、情報の軸が多いほど管理は複雑になります。
WorkVisionのソリューションは、従業員の情報に評価やスキルなどの情報を紐付け、データベース化できますので、条件を設定して人材を抽出することがスムーズに行えます。
注目のコラム記事
よく読まれている記事
新着記事
PICKUP