2020年10月16日
カテゴリ:総務
会社によってやり方が違う!給与計算とは
給与計算とは、会社の従業員に支給する給与額を計算する業務です。
会社が従業員に支給する給料は、全員が一律な会社というのはほとんどありません。雇用契約や会社のいろいろな規定に基づいて、従業員個々の勤怠状況や手当などを計算して給与総支給額を求めます。
給与総支給額を求めたら、控除すべき金額も算出します。健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料や、所得税や住民税を含む税金です。給与総支給額から控除すべき金額を差し引いたものが、手取りの給与支給額になります。
給与計算の概要は、どの会社でも共通していますが、実際の算出過程などは各社によって異なります。
給与計算に必要な情報とは
給与計算のやり方によって、必要となる情報にも多少の違いはありますが、給与計算の際に最低限必要とされる情報には、以下のものがあります。
事業所によって基本給や手当て、通勤費などが異なる場合があるため、複数事業所がある場合にのみ「勤務地」の情報が必要になる場合があります。
- 性別
- 住所
- 従業員の氏名
- 生年月日
- 入社年月日
- 雇用保険の被保険者番号
- 標準報酬月額
- 住民税
- 基本給、手当て
- 振込口座
- 扶養家族
- 勤務地
- 職種
- 職位、役職
- その他控除項目
給与計算のやり方5つ
給与計算のやり方は、会社によって異なります。
給与計算の主軸となる給与計算の要素について、やり方を紹介します。会社ごとにやり方が異なる場合でも、基本的な考え方として共通する部分が多いので、参考にしてください。
給与計算のやり方1:労働時間の集計
多くの会社では、労働時間に基づいて給与計算が行われます。特にパートやアルバイトといった雇用契約の場合は、「基本給」と呼ばれる毎月固定で支払われる給与がなく、毎月の労働時間によって給与支給額が決まります。
労働時間の集計の仕方は、会社によって異なります。営業職が多く、従業員が会社に立ち寄らずに外出するような業務形態の会社では、申告制をとっている場合もありますが、多くの会社では、タイムカードや入退室記録をもとに集計しています。
労働時間と、基本給に含まれない「残業時間」を就業規則に基づき、残業金額を確定させます。
給与計算のやり方2:諸手当の計算
残業手当以外にも、給与にはいろいろな手当が加算されます。給与総額を算出する際には、加算すべき諸手当の金額も算出する必要があります。
給与に加算される諸手当は会社によって異なりますが、ほぼすべての会社で支給されると考えられる通勤手当の計算方法についてみてみましょう。
支給額は就業規則に基づき算出します。通勤手当は課税対象外ですが、非課税となる範囲が決められていますので注意が必要です。交通機関の利用は月150,000円まで、自動車などの場合は距離によって4,100円から31,600円までが非課税です。
家族手当や皆勤手当などは就業規則に基づき計算します。
給与計算のやり方3:控除額の計算
控除額には、税金に含まれる所得税や住民税、社会保険料は健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険が含まれます。所得税については、次の項目で紹介します。
住民税は、本来従業員が市町村に収めるべき税金ですが、会社が給与天引きで代わりに収めるのが一般的です。毎年各市町村から納付書が届きますので、会社として計算する必要はありません。
厚生年金保険料と健康保険料は、「標準報酬月額」をもとに、「保険料額表」と「雇用保険料率」を確認します。雇用保険料は、総支給額に雇用保険料率を乗じて算出します。その他控除は、会社独自のもので、社宅利用費や親睦会費などがあります。
給与計算のやり方4:所得税の計算
所得税は国税庁「源泉徴収税額表」を使って求めます。
「源泉徴収税額表」を参照するためには「扶養親族等の数」と「課税所得」が必要になります。「課税所得」は、総支給額から社会保険料と通勤手当を引いた金額です。
所得税自体の計算は必要ありませんが、そのベースとなる課税所得を算出することになります。計算式は以下のとおりです。
課税所得 = 総支給額 -(社会保険料 + 通勤手当)
給与計算のやり方5:手取り額の確定
最後に手取り額を算出し、確定させます。手取り額は、総支給額から各控除額を差し引いた金額になります。
【手取り額確定までの流れ】
- 総支給額の確定「基本給(時間給)」+「時間外労働手当」+「超過勤務手当」+「資格手当」+「住宅関連手当」+「出張手当」
- 控除額の確定「健康保険」+「介護保険」+「厚生年金」+「雇用保険」+「所得税」+「住民税」
- 手取り額の確定総支給額(①) - 控除額(②) = 手取り額(③)
海外赴任者の給与計算方法とは
海外赴任者に対する給与計算方法は、購買力補償方式、別建て方式、併用方式の3つがあります。
赴任先の物価水準に給与を合わせて、赴任先でも日本と同程度の生活水準を維持できる購買力補償、国内と海外を別体系の仕組みにする別建て、購買力補償と別建てを組み合わせた併用と、方式によってそれぞれ特徴があります。
赴任先の生活を保障して帰国後の給与と差がないことや、為替の影響を受けにくくすることなどを配慮しています。
購買力補償方式
購買力補償方式は、海外赴任時でも日本にいる時とほぼ同じレベルの生活を維持できる給与を支給する方法で、多くの企業で採用されています。
民間機関の提供する生計費指数と、為替レートを組み合わせた購買力補償方式算出データをもとに計算されます。
メリットは、人事担当者の負担が軽減できると共に、客観的なデータを活用していることで、従業員と会社の双方が十分に納得できることが挙げられます。デメリットは、地域で計算するため、国によって待遇差が出る可能性があることです。
別建て方式
別建て方式は、海外赴任者に対して日本勤務時とは異なる給与基準で計算する方法です。基本的には現地通貨で支払われます。
海外に単身赴任する場合、赴任者に対しては現地通貨、残された家族に対しては日本円で支給されることもあります。
現地の給与水準を日本国内で人事担当者が把握しにくく、支給基準が曖昧になるデメリットがあるため、現在は採用している企業が少ないようです。
併用方式
併用方式は、購買力補償方式と別建て方式を組み合わせた方法で、日本での給与の手取り金額をベースとして、海外勤務で負担が増える部分を増額する方式です。
海外勤務で負担が増える部分を、手当てとして支給する形がほとんどです。日本円で計算するため、海外赴任者や会社は金額がわかりやすい反面、為替の変動により影響を受ける場合があります。
給与計算の正しいやり方を把握しよう!
給与は、基本給と諸手当の合計額から控除額を引いた金額が手取り額で、会社によって計算方法は異なります。
海外赴任者の給与計算は、客観的なデータと為替レートで算出する購買力補償方式が主流です。人事担当者や海外赴任者の負担を軽減し、国内と海外拠点ごとに格差が生じないように配慮しています。
給与計算は、必要な情報をもとに正しい方法で算出しましょう。
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