2020年11月10日
カテゴリ:総務
確定拠出年金とは
確定拠出年金とは、企業や個人が月々掛け金を拠出して自ら運用し、その運用収益によって将来受け取る年金額が決まる年金制度です。確定拠出年金は、公的年金に給付を上乗せすることを保証する制度(私的年金)の1つとして存在しています。
確定拠出年金があることで、高齢になったときにより豊かな生活を送ることができるよう、自分で生活設計を立てることができます。
そもそも年金とは
年金とは、老後に安定した生活を送るために定期的に支給されるお金のことです。日本の年金制度は、国が運営する公的年金を土台とし、その上に私的年金が上乗せされています。
公的年金には、国民全員に加入の義務がある国民年金と、会社員や公務員に加入が義務づけられている厚生年金保険があります。これらに上乗せされるのが私的年金です。私的年金は、企業や個人が任意で加入する年金制度を指します。
退職金との違い
退職金と確定拠出年金は、どちらも老後の資金のための制度ですが、退職金は会社が主導権を握るのに対し、確定拠出年金は自分が主導権を握ることができます。
退職金は会社が資金調達・運用するため、将来受給できる金額は会社側で決定され、自分で決めることはできません。一方、確定拠出年金は、会社または個人、もしくは会社と共同で拠出し、自分で運用方針を決めるため、拠出額と運用収益の元利合計分を得ることができます。
確定拠出年金の種類2つ
確定拠出年金は2つの種類に分けられます。1つは企業型確定拠出年金、もう1つは個人型確定拠出年金です。
企業型確定拠出年金は、企業が掛け金を拠出し、従業員が年金となる資産を運用します。一方、個人型確定拠出年金は、自分で掛け金を拠出し、自分が選んだ商品で運用をします。
この2種類の確定拠出年金には、どういった違いがあり特徴があるのかを詳しく説明します。
企業型確定拠出年金の特徴
企業型確定拠出年金は「企業型DC(Defined Contribution Plan)」と略されます。企業型DCとは、企業が掛け金を拠出し、その拠出金をもとに従業員自らが運用するシステムです。
企業型DCの運用では、掛け金や企業型DCで運用した収益が非課税になります。さらに、企業型DCによって受け取る退職金や年金には各種控除が適用されます。また、企業型DCには節税優遇措置があるため、企業が拠出した資金は全額損金算入することが可能です。
企業型の対象者
企業型DCの対象者は、企業に勤務している従業員です。企業型DCでは、企業が掛け金を拠出し、従業員自身が金融商品の選択から資産分配などを行い運用します。そのため、将来的に受け取ることができる年金や退職金の金額に関しては、あくまで自己責任です。
さらに確定拠出年金は、運用成果によって将来的に受け取れる退職金や年金の金額が変わるため、どこまで資金を増やせるかは、自分の腕にかかっています。
企業型における拠出の限度額
企業型DCには拠出限度額が設けられており、確定給付型の年金を実施しているかどうかで拠出限度額が変わります。確定給付型による年金を実施している場合の拠出限度額は、月27,500円です。ただし、個人型への同時加入を認める場合は、月15,500円までになります。
一方、確定給付型の年金を実施していない場合の拠出限度額は、月55,000円です。個人型への同時加入を認める場合は、月35,000円までになります。
個人型確定拠出年金の特徴
個人型確定拠出年金は「iDeCo(イデコ)」という愛称で呼ばれています。iDeCoは加入者本人が申し込みから拠出、運用まで行なう私的年金です。より豊かな老後を送るための資産形成の手段の1つとして、注目されています。
iDeCoには企業型DCと同じように、掛け金や運用で得られた収益と、収益を受け取る際に、節税優遇措置があります。
個人型の対象者
個人型確定拠出年金であるiDeCoは、自営業者(国民年金第1号被保険者)や専業主婦・主夫(国民年金第3号被保険者)、非保険者などが対象です。基本的に20歳から60歳未満であれば誰でも任意に加入することができます。
ただし、企業型年金に加入している人は、企業型年金の規約において、個人型年金への加入が認められている人に限定されます。
個人型における拠出の限度額
iDeCoでは、対象者ごとに拠出限度額が定められています。第1号被保険者(自営業者など)の限度額は月68,000円です。第3号被保険者(専業主婦・主夫)は、月23,000円です。
第2号被保険者(会社員や公務員)のうち、確定給付型の年金や企業型DCの未加入者は月23,000円、企業型DCのみの加入者は月20,000円、確定給付型年金のみまたは確定給付型と企業型DCの両方への加入者は月12,000円、公務員は12,000円となっています。
企業型確定拠出年金のメリット
企業型DCのメリットは、大きく3つあります。1つめは、税制優遇措置があることです。税制優遇措置があることで運用収益は非課税対象になり、掛け金は損金算入できます。また、給付金として受け取る際に各種控除が受けられます。
2つめは、運用責任は従業員にあるため企業側の運用リスクが無いことです。3つめは、優秀な人材の確保につながることです。企業型DCは福利厚生でのメリットもあるため、優秀な人材の確保に一役買う存在となります。
企業型確定拠出年金のデメリット
企業型DCのデメリットは大きく3つあります。1つめは、将来もらえる金額が不確定なことです。運用次第では元割れする可能性もあるため注意する必要があります。
2つめは、60歳になるまで引き出せないことです。定期預金のようにお金を引き出すことはできないため気を付ける必要があります。3つめは、従業員の教育が必要なことです。企業型DCの導入を決定した際は、従業員へ投資についての教育やサポートが必要です。
個人型確定拠出年金のメリット
iDeCoには、大きく3つのメリットがあります。1つめは、掛け金が全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税を軽減できることです。
2つめは、運用収益も非課税になることです。運用で得た収益は、そのまま次の運用資金にすることができます。3つめは、年金または一時金として収益を受け取る際に、控除を受けられることです。このようにiDeCoは、税制優遇措置が非常に充実しています。
個人型確定拠出年金のデメリット
iDeCoのデメリットは、大きく3つあります。1つめは、企業型DCと同様に、原則60歳になるまでお金を引き出すことができない点です。いつでもお金を引き出すことはできないため注意する必要があります。
2つめは、iDeCo専用口座の開設や運用時にお金がかかる点です。できるだけ安い金融機関を選ぶと良いでしょう。3つめは、運用で損をする可能性がある点です。資金が増えることもあれば減ることもあるため、慎重に運用する必要があります。
確定拠出年金を導入するには
確定拠出金を導入すると従業員との確定拠出情報のやり取りが発生するため、確定拠出年金を導入する際は、まずは労使の合意を確認します。その上で、確定拠出年金に関する規約書を作成し、厚生労働大臣へ作成した規約の承認申請を行います。
承認が下りたら、運用するにあたって「運営管理機関」「資産管理機関」を決めます。その後、運用商品を選定し、制度を開始します。他に従業員への運用方法などの教育も必要です。
確定拠出年金への理解を深めよう!
「人生100年時代」に向けて、退職金や年金など、老後の資金について考えることはとても重要です。公的年金の状況を確認することも大切ですが、現在は、より豊かな老後生活を送ることができる確定拠出年金の利用が拡大しています。
なお、企業での確定拠出年金に関係する情報の管理は、WorkVisionの提案する人事給与ソリューションを活用することで効率化できます。確定拠出年金運営機関へのデータ作成も可能です。確定拠出年金への理解を深め、ぜひ運用を検討してみて下さい。
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