ちょっと待って!ペーパーレス導入で失敗する5パターンと成功のヒントとメリット

2021年09月29日

カテゴリ:総務

新型コロナウイルス感染症対策として多くの企業で導入が進むテレワークでは、業務環境や業務プロセスの見直しが求められ、電子決裁による申請用紙の廃止や、Web会議の導入による配布書類の廃止など、これまで書面・対面で行われていた様々な業務でペーパーレスが進んでいます。

テレワークは、移動に伴うCO2排出量の削減や、ペーパーレスによる環境保全効果など、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みにも有効とされる働き方です。

しかし、テレワークが普及してもオフィスに出社する従業員が一定数いるために、結果としてペーパーレスが浸透していない企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、ペーパーレスのメリットや失敗パターンと成功のヒントなどを解説します。

INDEX

ペーパーレスのメリットとは

ペーパーレスとは、様々な情報や帳簿をデジタル化していくことです。

デジタル化には「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「DX」という概念がありますが、ペーパーレスはITで業務効率化やコスト削減を進める「デジタイゼーション」に含まれます。

ペーパーレスには、環境保全効果に加え、保管スペースの削減、バックアップによる書類の紛失防止、端末からのタイムリーな情報確認、閲覧権限の設定による機密情報の漏洩防止など、多くのメリットがあります。

企業の経営課題としてのペーパーレスの位置づけ

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が発表した「企業IT動向調査報告書 2021」では、IT投資で解決したい短期的な経営課題として、「働き方改革(テレワーク、ペーパーレス化等)」が第2位であると報告されています。これは、1位の「業務プロセスの効率化」に次ぐものです。

しかし、IT投資で解決したい中長期的な経営課題では「働き方改革(テレワーク、ペーパーレス化等)」は導入済みの企業に比べて未検討の企業の方が2倍以上高く、プロセスのデジタル化においてその傾向が顕著となっています。

印刷・情報用紙の国内出荷は5ヶ月連続で増加している

2020年度の印刷・情報用紙の国内出荷は、オフィス向け需要の減少により大幅に低下しました。これは、テレワークの普及でペーパーレスが浸透していることが要因であるとみられています。

しかし、2021年8月度の需給速報では、印刷・情報用紙の国内出荷が前年比で6.0%増加しており、オフィスで消費される情報用紙も5ヶ月連続で増加傾向にあります。

テレワークが普及しているにも関わらず情報用紙が増えているということは、先の調査報告で明らかとなった未検討の企業に加え、ペーパーレスに失敗して紙文化に逆戻りしている企業が増えているとも考えられます。

デジタル化が定着しない理由とは

令和3年版の総務省情報通信白書では、デジタル化が定着しない理由として「従来の価値観からの転換が困難」「機器等のコスト負担」などの課題が挙げられています。

また、総務省が2021年に実施した「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」では、デジタル化が進まない理由として「利用者のリテラシー不足」「デジタルでの業務利活用が不十分」「利用者のデジタルに対する抵抗感」などの回答が上位となっています。

ペーパーレス導入で失敗する5パターン

ペーパーレスが定着できない理由は、デジタル化が定着しない理由と共通すると考えられます。ここでは、ペーパーレス導入で失敗する5パターンを挙げてみましょう。

ペーパーレス失敗パターン1.ITリテラシー不足

ペーパーレス失敗パターンの1つ目は、ITリテラシーの不足です。 申請フローがデジタル化されている企業でも、従来の根回しの習慣から脱却できずに関係者への説明用として紙を印刷する従業員が存在します。また、PDF保存のために、わざわざ紙を印刷してスキャンしている従業員も少なからずいるようです。

ITシステムを導入していても、その目的と意義やツールの機能を正しく理解できていなければ、ペーパーレス導入は失敗してしまいます。

ペーパーレス失敗パターン2.デジタル化への不安感や抵抗感

ペーパーレス失敗パターンの2つ目は、デジタル化に対する従業員の不安感や抵抗感です。 慣れ親しんでいるシステムが刷新されるとき、新しいシステムによる運用に不安を感じ、これまでのオペレーションを変えたくないと考える従業員も少なくありません。

システム刷新の目的と重要性の認識が不十分な場合、システムは新しくなったものの、エビデンスの出力保存など従来の運用ルールが残ってしまうこともあり、ペーパーレス導入は失敗してしまいます。

ペーパーレス失敗パターン3.業務利活用が不十分

ペーパーレス失敗パターンの3つ目は、デジタルツールの利活用が不十分であることです。
例えば、オンライン会議を導入して会議資料のデジタル化を図ろうとしても、オンラインではコミュニケーションが取りづらいと考える上長が存在する場合、会議参加者に出社日を指定して対面会議を開いてしまうことがあるようです。

また、オンラインでの参加が承認されている会議であっても、会議前後の雑談を通じて出社している参加者とオンライン参加者の理解度に差が生じるため、オンライン参加者には出社せざるを得ない雰囲気が漂います。

また、自宅の通信環境が十分でない場合、オンライン会議の資料が見えない、また発言が聞き取れないなどの障害が発生することがあり、会議の度に出社が必要となります。

その結果、従来の対面形式での会議が復活し、配布資料や手元資料を印刷してしまうことに繋がります。

ペーパーレス失敗パターン4.手段の目的化

ペーパーレス失敗パターンの4つ目は、手段が目的化してしまうことで不完全なデジタル化が進むことです。 デジタル化の最終目的がDXの推進による競争優位性の確立であったとしても、デジタイゼーションのツール導入過程で停滞してしまうことがあります。

また、本来は手段であるはずのツール導入が、いつの間にか目的となってしまい、業務プロセスの効率化が一部にとどまっているケースもあります。このように不完全なデジタル化が進むと、ペーパーレスにも失敗してしまいます。

ペーパーレス失敗パターン5.紙のほうが確認しやすい

ペーパーレス失敗パターンの5つ目は、紙のほうが確認しやすいことです。 一般社団法人情報処理学会で発表されたタブレット端末と紙媒体の比較調査では、文字情報のみからなるコンテンツの場合、文章理解では紙媒体に優位性があることが報告されていました。

テレワークでは、オフィスで利用しているノートPCを自宅に持ち帰って使用するケースが大半です。画面サイズが小さいPCでは一目で資料全体を確認することが難しいこともあり、出社したタイミングで資料を印刷して再確認する従業員も一定数存在します。

ペーパーレス成功のヒント

紙を必要とする業務は、自社だけでなく取引先と関係するものもあることから、ある日を境に全てをペーパーレスにすることは不可能です。

まずは自社の業務で使用されている紙から段階的に始め、最終的にほとんどの紙をデジタル化する手法が現実的です。ここでは、ペーパーレス成功のヒントを幾つか挙げてみましょう。

ペーパーレス成功のヒント1:先ずは経営層のリーダーシップ

先ずは経営層がデジタル化のビジョンを企業内に明確に説明することです。ペーパーレスは単なるコスト削減ではなく、デジタル化を進めてDXを実現するための手段のひとつであることを全社で共有しておくことが重要です。

また、ペーパーレスによる従業員のメリットや、具体的な業務プロセスの改善効果についても十分に説明することで、一部従業員のデジタル化への不安感や抵抗感を払拭することができ、全社のITリテラシー向上にも有効です。

ペーパーレス成功のヒント2:経理業務のペーパーレス

経理部門では、ベテラン社員であればあるほど「仕訳作業は原本で行うもの」という想いが深く根付いていますが、逆の見方をするとペーパーレスで大幅な効率化を見込める部門です。

紙の書類を併用しながら徐々にスキャナーやOCRで保管書類のデジタル化を進め、ある程度達成できた時点で事務処理や運用の見直しに取り組み、電子帳簿保存法への対応を最終目的にするなど、段階的な導入がペーパーレスの成功に結びつきます。

「紙の電子化」で始めるペーパーレス

ペーパーレス成功のヒント3:契約業務のペーパーレス

取引先と大きくかかわる業務のひとつに「契約」があります。紙の書類への押印・郵送が必要となることで、テレワークでは対応できないとされていました。

電子契約サービスのクラウドサインは、クラウド上にアップロードしたPDFの契約書に取引先が合意ボタンを押すだけで契約を締結することができます。契約書には収入印紙を貼付する必要がなく、クラウドサインのみが発行可能な電子署名が付与され、真正な書類の判別が可能となります。

クラウドサインは契約業務のテレワーク化を実現できるサービスですが、取引先の中には電子契約に慣れていない(紙を望む)企業もあります。紙と併用しながら、段階的に取引先との電子契約を進めていくことがペーパーレスの成功に結び付きます。

電子契約サービス クラウドサイン

ペーパーレス成功のヒント4:申請業務のペーパーレス

事業計画を進めるときは計画書類を作成し、関係者に回付して承認を得ることが必要となりますが、承認者不在で決裁が遅延することが多々あります。

ワークフローシステムを導入することで、書類を回付して押印を行っていた承認業務をデジタル化することができます。その結果、テレワークでも申請や承認が可能となるため、決裁遅延が解消されると共にペーパーレスの成功に結び付きます。

ワークフローソリューション

ペーパーレス成功のヒント5:会議資料のペーパーレス

会議は意見交換による意思決定の場ですが、従来の対面型会議でも事前に議事内容が共有されていないことや、資料が細かすぎて内容認識に手間取ることがありました。

その結果、議事内容を認識していた立場(資料作成者と上司)と、その他の参加者の間で論点に関する認識差が発生し、意思決定までに余分な時間を費やしていました。

これは、オンライン会議でも同様です。事前に会議資料を共有して参加者に考える時間を与えておくことができれば、論点が明確となりオンライン形式でも効率的に議論を進めることができます。

但し、会議資料が細かすぎると資料を印刷して会議に臨む従業員を増やすことになりかねません。細かな文字を使用せずシンプルな形式とすることが資料の印刷抑止に繋がりペーパーレスに有効です。

ペーパーレスの必要性は更に高まる

経済社会のデジタル化が進む中、企業の生産性向上などを目的に電子帳簿保存法が改正され、2022年1月1日より施行されることとなりました。改正法では、帳簿書類を電子的に保存する際の手続きなどについて抜本的な見直しがなされていることで、ペーパーレスに取り組む必要性は更に高まっています。

この記事では、ペーパーレスのメリットや失敗パターンと成功のヒントなどを解説しました。DX推進においてもペーパーレスは欠かせない手段のひとつです。目的やメリットを十分に理解したうえで段階的に進めていきましょう。

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