机上の空論にならないカスタマージャーニーマップ

2017年11月01日

カテゴリ:オピニオン

顧客行動の可視化および体験の最適化をするために作られる「カスタマージャーニーマップ」。けれども、せっかく作ったのに活用されないケースも少なくない。

カスタマージャーニーマップとは、顧客の商品に関する情報接触から、購入、そして購入後の行動に至るまでを「旅」と捉え、その一連の行動を時系列で視覚的にまとめたマップである。

登場した背景として、従来の属性や新規・既存顧客といったセグメントの切り方だけでは、時代とともに変化する顧客行動を捉えるのが難しくなってきていたことが挙げられる。そこで顧客理解をするために、カスタマージャーニーマップを作るのであるが、作っただけでは安心できない。

落とし穴の一つ目は、具体的なマーケティング施策に落とし込まれないケースがあることである。

カスタマージャーニーマップ作成には、顧客の定性と定量データの活用が欠かせない。しかしマーケティング全体の最適化を図ろうとして盛り込む情報が膨れ上がってしまうと、何を追えばよいのかわからなくなってしまう。

これを防ぐためには、ブランドロイヤリティを上げることが最優先課題なのか、来店獲得なのかなど、マーケティング効果を最大化するための優先順位を明確にするとよい。

二つ目の落とし穴は、現場のオペレーションやシステムとのミスマッチである。顧客視点からサービスのあるべき姿を考える際に、それを実現するためのスタッフやシステムの視点が抜け落ちると、絵に描いた餅になってしまう。

より現場に即したものにするには、顧客の視点で描いたカスタマージャーニーマップを、サービスを提供する側の視点で、お店のスタッフの行動や裏側のシステムの運用などを如何にするかを明らかにしておく。手法のひとつが「サービスブループリント」を作成することである。業務フローやシステム設計のインプットを図式化して、カスタマージャーニーマップと統合する。

三つ目は組織・部署間の壁である。いざカスタマージャーニーを作ったものの、次のアクションを実行しようとした時に、各部門担当者の共感・協力が得られず、前に進まないということが多々ある。各部門担当者の意見を反映させないままマップを作成してしまったため、現状の施策と各部門の利害がマッチしないと捉えられてしまうからである。

そうならないためには、部門をまたいでワークショップを行い、抱える課題をすりあわせながらマップを作ることである。

顧客体験を最適化するための意思統一をし、組織一丸となって施策を実行する。カスタマージャーニーマップはそのための羅針盤である。これまでは購入フェーズのデータが中心だったが、今後は、IoTの発展によりサービスの体験データの取得や可視化もできるようになるだろう。しかし、接点が広がったとしても、顧客データの取得・分析、結果を顧客コミュニケーションに落とし込むことが鍵となる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

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