2018年05月07日
カテゴリ:オピニオン
二番手の魅力
業界構図を表現する場合に用いられる手法として、企業の競争地位を「リーダー/チャレンジャー/ニッチャー/フォロワー」の4つに分類することがある。リーダー企業は市場規模拡大の恩恵を受け、仮にチャレンジャー企業が市場を拡大しても潜在的シェアの分だけ収益拡大が見込める。二番手のチャレンジャー企業は、リーダー企業との真っ向勝負で勝利するのは難しい。そのため、リーダー企業が強化していない領域で勝負するか、自社以下の企業からシェアを奪う戦略を取る。ニッチャー企業は、文字通りリーダー、チャレンジャーが参入しない部分を発見して攻勢をかける。フォロワー企業は、リーダー企業にとってあまり美味しくない市場にターゲットを絞る戦略を取るケースがよくある。
いずれにせよ、リーダー企業に比べるとその他は、経営資源やチャネルパワーなどが劣るので、戦略における工夫が重要になる訳だ。しかし、リーダーに最も近い二番手のチャレンジャーは、虎視眈々とリーダーの座を狙って当然で、むしろ狙わないといけないポジションのはずだ。最初は真似でも、次は自分自身の新たな持ち味を加えて未だ見ぬオリジナリティを生み出し、業界の新しいナンバーワンに取って代わることを目指すべきだろう。二番手にはそのような魅力が隠されているとも言える。
勇者の心得
とは言うものの、二番手戦略ばかり狙っていては面白みがない。このような考え方が経営的に芽生えるのは当然だ。常にハイリスク・ハイリターンを追求するのもどうかとは思うが、未踏領域に挑み、イノベーションを引き起こした数々の事例を目の当たりにすると、経営者はつい冒険心を掻き立てられてしまうのも無理はない。誰もしたことがないことを始めるには、勇敢なファーストペンギンの精神と通じるものがあるのだ。
ペンギンは、集団行動をとることで知られるが、不思議なことにその集団には特定のリーダーおらず、危険が迫った場合は、いち早く察知した一羽の後に続き皆が難を逃れる。同様に、エサの魚を獲るために海へ入る場合も、シャチやトドなどの天敵を恐れずに先陣を切って飛び込む一羽がいるのだ。まさにファーストペンギンは怖いもの知らず、リスクしらずの勇者としてイノベーションに挑む。経営でもこの「ファーストペンギン魂」が価値を生み、成功すれば大きな先行者利益が約束される場合が多い。しかし、たまたま天敵のシャチが居なかっただけ…と、発案したビジネスにリスクが無かったと謙遜する人もいるだろう。いや、それは違う。実は、天敵からの攻撃を巧みにかわしながら、大海原を泳ぎ切る体力を付けることも重要なのだ。運も実力も兼ね備えた者こそ、本当のファーストペンギンと称されるのではないだろうか。
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