「正社員と非正規社員の不合理な待遇差の禁止」への対応とは

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第5回 正社員と非正規社員の待遇差に関する裁判例、及び各社が取るべき対応②

2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)から施行される「パートタイム・有期雇用労働法」では、正社員と非正規社員との不合理な待遇差を禁止する規定が盛り込まれました。待遇差については、人によってとらえ方が異なるため、その合理性を簡単に判断することはできません。実際に、正社員と非正規社員の待遇差の合理性を争う裁判は、これまでに数多く行われてきました。

しかし、こうした判例が蓄積されてきたことにより、最近になって、「裁判では、どのような待遇差が不合理と判断されるか」ということが明確になってきました。

「パートタイム・有期雇用労働法」の施行に当たり、会社は、まず、正社員と非正規社員の待遇差を洗い出して、その中で過去の裁判において不合理と判断されたものについては、早急に是正することが必要です。今回のコラムでは、正社員と非正規社員の間の待遇差に関する判例を紹介して、それを踏まえたうえで、会社が取るべき対応について説明します。

正社員と非正規社員との待遇差に関する判決の概要

2018年6月1日、正社員と非正規社員との待遇差の合理性を巡る最高裁判決が2件出ました。1件は、同一の業務を行う契約社員と正社員の待遇差に関する判決(H社事件)、もう1件は、定年後に再雇用された嘱託社員と正社員との待遇差に関する判例(N社事件)です。

どちらの裁判も、正社員に支給されている手当が非正規社員には支給されていないこと、または非正規社員の支給額が低いことに対する合理性が争われたものですが、これらの判決をまとめると次のようになります。

裁判における待遇差の合理性の判断

〇:不合理ではない(合理性あり) ×:不合理 -:判断せず、または裁判の対象外

(1)職務に直接的に関係している賃金(基本給の中で職務を基準に決定されている部分、作業手当、精皆勤手当など)については、職務内容等が同じ場合には、非正規社員にも正社員と同じものを支給しなければならない。また、職務内容等に相違がある場合には、その相違に応じたものを非正規社員に支給しなければならない。

(2)職務に直接的に関係していない賃金(通勤手当など)については、職務内容の相違の有無に関わらず、非正規社員にも正社員と同じものを支給しなければならない。

(3)職務に関係せず、生活状況に応じて支給している賃金(住宅手当、家族手当など)については、非正規社員と正社員との間で生活費を補助する必要性の違い(例えば、転勤の有無など)があれば、両者の間で差があってもよい。

裁判では、このような考え方に基づいて、待遇差の合理性が判断されています。ですから、それぞれの会社で、正社員と非正規社員の基本給や手当等の支給実態を調べて、裁判で「不合理」と判断されそうな待遇差については、それを是正していくことが必要です。

待遇差の合理性の根拠を示すためには、正社員の待遇の見直しが必要となる

ところで、この2つの判決をよく見ると、次の共通点があることが分かります。

(1)待遇差の合理性の判断は、待遇の項目(基本給、手当、賞与など)ごとに細分化されて行われている。また、非正規社員の立場(定年後に再雇用された者かどうかなど)も考慮して判断が行われている。

(2)待遇差について「不合理ではない」と判断するときには、その根拠が明確に示されている。逆に言えば、「不合理ではない」という根拠を明確に示せなければ、その待遇差は「不合理」と判断される。

要するに、正社員と非正規社員の待遇差の合理性の判断は、①待遇の内容ごとに支給基準の違いなどを調べて、②それぞれの職務内容や立場の相違を考慮したうえで、③「明確な根拠を示せない待遇差は“不合理”とする」という考え方のもとに行っていくことが必要になるのです。

さて、そうなると「パートタイム・有期雇用労働法」の施行に当たり、非正規社員の待遇だけではなく、正社員の待遇についても見直す必要がある、ということになります。例えば、正社員と非正規社員の賞与に差がある場合、「正社員の業績貢献度が非正規社員と比べて高いこと」を示さなければならず、その根拠を示せるように正社員の賞与支給の仕組みを変えていくことが必要になるのです。

次回のコラムでは、「パートタイム・有期雇用労働法」の施行に向けて、正社員や非正規社員の待遇の見直しをどのように行えばよいか、先行企業の事例を挙げながら、具体的に説明します。

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社会保険労務士 深瀬 勝範

Fフロンティア株式会社代表取締役。人事コンサルタント。社会保険労務士。
1962年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社などを経て、経営コンサルタントとして独立。
人事制度の設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動など幅広く活躍中。

深瀬勝範

改正労働基準法への対応のポイントは…
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