2019年11月27日
カテゴリ:社会保険労務士
第6回 「正社員と非正規社員の不合理な待遇差の禁止」への対応③
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社会保険労務士 深瀬 勝範
2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)から施行される「パートタイム・有期雇用労働法」に対応するための、正社員・非正規社員の待遇の見直し方について説明します。
待遇差をリストアップして、合理性を説明できるかどうか考えてみる
まず、自社の正社員と非正規社員の待遇について調べて、一覧表にまとめてみることが必要です。
このときに、待遇については「基本給、○○手当…」のように項目ごとに細分化し、また、非正規社員にパートタイマー、嘱託社員(定年再雇用者)などの区分があれば、その区分ごとに支給実態を調べることが必要です。
一覧表ができたら、正社員と非正規社員との間で差がある待遇をチェックします。そして、その待遇差について合理性を説明できるかどうかを考えてみます。
合理性が説明できない「不合理な待遇差」については、その差を解消するような見直しが必要です。見直しの方法は、基本的に「正社員の待遇を非正規社員の水準まで下げる」か、「非正規社員の待遇を正社員の水準まで引き上げる」かのどちらかになりますが、前者には「正社員に労働条件の不利益変更が発生する」、後者には「人件費が増加する」というデメリットがあります。
このようなデメリットを小さくするため、待遇の見直しは、次のステップで進めるとよいでしょう。
①正社員の待遇を見直す余地がなく、かつ不合理な待遇差と判断されるものは、非正規社員の待遇を引き上げる。
②正社員の待遇を見直すことによって、非正規社員の待遇の引き上げを抑えつつ、不合理な待遇差を解消できる場合は、それを行う。
③「待遇差が不合理ではない」ことを示せるように、正社員、非正規社員の職務内容や待遇のベースとなる仕組みを見直す。
法改正に対応した正社員、非正規社員の待遇の見直し
通勤手当などは、非正規社員にも正社員と同じものを支給する
「同一労働同一賃金ガイドライン」等に基づくと、ステップ?「非正規社員の待遇を引き上げる」ものには、次の手当が該当します。
- 通勤手当、単身赴任手当など(正社員と同じものを非正規社員にも支給する)
- 作業手当、交替勤務手当など(職務内容や勤務形態等が正社員と同一である場合、正社員と同じものを非正規社員にも支給する)
- 役職手当など(職務内容等の相違に応じたものを、非正規社員にも支給する)
これらの手当は、待遇差の合理的な根拠を示すことは困難であると考えられますので、非正規社員の待遇を正社員に合わせるようにするしかありません。
正社員全員に支給されている手当は、手当そのものを廃止することも検討する
ステップ?「正社員の待遇を見直すことによって、不合理な待遇差を解消する」ものとしては、次の手当が該当します。
- 精皆勤手当(正社員全員について、ほぼ満額が支給されているもの)
- 食事手当、被服手当など(正社員全員に支給されているもの)
これらの手当は、「基本給の上乗せ」として支給されていることがあり、そうであれば、正社員に支給されている手当を廃止するという方法もあります。(ただし、廃止される手当の額を基本給に加算する等の措置が必要です。)こうすれば、労働条件不利益変更や人件費増加を発生させることなく、正社員と非正規社員の間の「不合理な待遇差」を解消することができます。
待遇のベースとなる仕組みも見直さなければならない
手当の支給や廃止を検討するだけではなく、ステップ?「『待遇差が不合理ではない』ことを示せるように、正社員、非正規社員の職務内容や待遇のベースとなる仕組みを見直す」ことも重要です。
例えば、裁判では「転勤がない非正規社員に対して住宅手当を支給しないことは、不合理ではない」という判断が下されていますが、そうなると、「地域限定社員(転勤がない正社員)に対して住宅手当を支給することは不合理」となってしまいます。地域限定社員にも住宅手当を支給している会社は、「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されるまでに、地域限定社員の住宅手当を廃止するか、あるいは非正規社員にも住宅手当を支給するか、を決めなければなりません。
また、賞与については、「正社員と非正規社員とでは、業績貢献度に差があるから、支給額も変えている(あるいは、正社員だけに支給している)」というケースが多く、そうであれば、正社員の職務が会社の業績と密接に関係していることを明確に示せるようにしておかなければなりません。目標管理制度を活用して、正社員一人ひとりの個人目標と組織目標との結びつきを示せるようにしておくことが必要です。
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投稿者プロフィール欄
社会保険労務士 深瀬 勝範
Fフロンティア株式会社代表取締役。人事コンサルタント。社会保険労務士。
1962年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社などを経て、経営コンサルタントとして独立。
人事制度の設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動など幅広く活躍中。
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