2020年08月21日
カテゴリ:総務
「経営とは、人を通じて結果を出す業(わざ)である」という言葉は、ドラッカーが残した名言です。
この言葉は、経営者はもちろん「管理職や人事総務の責任者」の方も肝に銘じたい言葉といえます。 また、この言葉を言いかえるとすれば、「優秀なリーダーは人を通じて結果を出す人である」と言えるかもしれません。
理想的なリーダーは、メンバーひとり一人が成し遂げた小さな成果の積み上げで、組織として大きな成果を残します。そしてメンバー個々が最高のパフォーマンスを発揮するためには、モチベーションを保ち続けることが重要であることは言うまでもありません。
今回は、組織として最高の結果を残すために「社員のモチベーションを保つ方法」について深く考えてみます。「社員のモチベーションダウンを招く原因はなにか?」また、「モチベーションアップのためにはどんな秘策があるのか」詳しくみていきます。
「成果を出したいのに部下が動いてくれない」「部下のモチベーション維持について悩んでいる」という管理者はもちろん、「部下を育てられない上司が増えている」と悩んでいる人事総務部の方もぜひ参考にしてください。
INDEX
1. モチベーションを保つために必要な3つのポイント
以下は、社員のモチベーション管理に役立つ興味深い実験の結果です。「単調な課題を命じられた4チームに対し、どのような意識付けがあったのか?」といった視点で、一度実験結果をご覧ください。
「被験者にコンピューターの画面に小さな光の点が現れるのを、ただじっとみつめて待ってもらうという退屈極まりない課題に取り組んでもらう」
A:集中力を高めるための実験です。航空管制官の訓練とほぼ同じものです。と理由を説明した。
B:こんなことやりたくないですよねと同情した。
C:「やっても、やらなくても結構です。もしよかったら。」と選択できるようにした。
D:ただ課題をやらせた。
実験の結果、DチームよりABCチームのほうが自発的に課題に取り組んだ。
参考:心理学者エドワード・L・デシの実験より
では、この実験で「なぜABCチームの人が自発的に課題をこなし、Dチームの人は課題の進捗が悪かったのか」、実際のビジネスの現場で活用する方法もまじえながら、具体的に考えてみましょう。
①やるべき「理由」を理解するまで説明する
上司が部下に仕事を指示し、その仕事をモチベーション高く遂行してもらうためには「仕事をする目的や理由」をきちんと説明することはとても重要です。さきほどの実験で、Aチームには「集中力を高めるための実験」と、課題の理由がきちんと伝えられています。その理由を聞いたAチームは「自分の集中力はどれくらいなのか試してみよう!」とモチベーション高く課題をやったに違いありません。
実際のビジネスの現場でも同じです。仕事をやる「意義」や「その目標を達成した先には何があるのか?」といった「やるべき理由」を腹落ちさせることが、社員のモチベーションアップにつながります。
②「同情」社員の気持ちに寄り添う
Bチームは同情の精神を示してもらったおかげで「辛そうなテストだけど頑張ってみるか!」と、課題に取り組んでくれたようです。この点も社員のモチベーションアップには重要なポイントです。「自分のことを理解してくれない上司」や「自分の仕事を正当評価してくれない上司」からの指示に対し、自発的に動く部下は少ないでしょう。
社員への同情は、決して「甘やかす」ことではありません。上司はもちろん、人事組織全体が社員ひとり一人の家庭環境や仕事の成果を理解し「本当の意味で個々を認めること」が、社員のモチベーションアップにつながります。
③「選択」自発的に考えさせる
Cチームは「選択する機会」を与えられました。もちろん選択の段階で課題をやらないという選択肢もあったわけですが、Cチームはこの課題に興味があったのか「自発的に考えて課題をやる」という選択をしました。
実際のビジネスの現場でも、社員ひとり一人の「動機付け」はとても重要なポイントです。社員を奮い立たせるためには「他人と競争させる」「短期的なインセンティブを与える」「恐怖モチベーションを与えて指導する」など、さまざまな方法がありますが、いずれも「やらされ感」でやる仕事には結果が伴いません。
管理者が組織のパフォーマンスを最大化するために、上司は部下に「仕事をする意義」をきちんと説明し、「自分はどうしたいのか?」を自発的に考えさせてサポートすることがとても重要なのです。
2. 社員のモチベーションダウンを招く上司の3つの行動
ここからは、モチベーションアップのポイントとは逆に、実際の職場にありがちな「モチベーションダウンを招く行動」について見ていきます。
①関心がある「フリ」
部下は上司が想像する以上に、真剣に上司のことを見ています。上司が部下を評価するのは当然ですが、部下も上司を評価し「従うに値しないボス」だと判断した時点で個人のパフォーマンスは半減します。
「あなたは部下のことを理解していますか?」と管理者に質問すると、ほとんどの方は「理解しています」と答えます。しかし、実態は「表面的な理解」にとどまっているのが現状です。
自分に関心を持ってくれない会社や上司のために「頑張ろう」と思う社員はいないのです。
・部下の名前をフルネームで言えますか?
・部下ひとり一人の誕生日を手帳に書いていますか?
・社員の家族構成や、個人が抱える問題をきめ細やかに把握していますか?
・部下の目標達成度をいつでも把握していますか?
本当に部下のことを理解している上司は、上記のようなことは当たり前にこなしています。また、ここまで理解されてフォローされた部下は「この上司のためなら頑張ってみるか!」と一肌脱いでくれるのではないでしょうか?
②コミュニケーションをとっている「つもり」
個人のモチベーション維持のために「飲みニケーションが大事」と答える方は少なくありません。たしかに酒の席では本音も引き出せますので、飲み会がモチベーションアップにつながることもあります。
ただ、社員のひとり一人の意識をさらに高めるためには、飲み会などの表面的なコミュニケーションだけでは十分とはいえません。
真のコミュニケーションは、「部下のためにどれだけの時間を割けるか?」ということにかかっています。管理者になればなるほど忙しく、部下のための時間も取りづらくなります。しかし冒頭で申し上げた「人を通じて最高の結果を出す」ためには、部下を理解し鼓舞する時間を確保することが、何よりも優先されるべきです。
具体的には「最低1ヶ月に1回30分以上の面談時間を確保する」など、面談時間を増やすことはもちろん、面談の方法にもこだわることが大切です。
③自分の言葉で「語れない」
部下に仕事を指示する際に、「上が言ってるから」「会社の指示だから」と、自分自身が腹落ちしないまま指示するようでは、伝えたいことの半分程度しか部下へは伝わりません。ひどい上司になると「俺も上から言われて大変なんだよ」と自分への同情を求める人まで出てきます。
個人的に納得できない仕事でも、管理者には企業として結果を出すことが求められます。 組織としての成果を出すために部下ひとり一人に動いて欲しいなら、まずは自分自身で「仕事の意義」を消化してから、「自分の言葉」で部下へ指示するようにしましょう。
3. 社員をやる気にさせる目標のたて方
モチベーションアップのコツをつかんだら、つぎはモチベーションを維持するための「適切な目標設定」が重要になってきます。では、社員のモチベーションを保つ続けるためには、どのように目標設定をすべきなのか、いくつかのポイントを見ていきます。
目標設定で大切な3つのポイント
社員のモチベーションを保つ目標設定の仕方には、以下の3つのポイントがあります。
1. 目標は公平であること
2. 実現可能な目標であること
3. 他人比較でなく自己比較できる目標であること
モチベーション高く仕事をしてもらうには、可能な限りまわりのメンバーと比較して難易度が同じであることが望ましいでしょう。もし同じ難易度の目標設定が難しい場合は、インセンティブの支給比率を変えるなど「報酬で差を付ける」という方法もあります。不平等な目標設定をされた社員は納得しないまま1年を終え、結果として組織の成果も半減します。
また、実際に設定される目標数値は「高すぎない」ことも重要です。目標を遂行するなかで期中に予見できないことが発生した場合は、目標の修正も必要かもしれません。とにかく「少し頑張ったら届く目標」また「他人との比較ではなく前年の自己実績×110%を目指す」など、実現可能な目標を設定することが大切なのです。
目標設定で絶対にやってはいけないこと
どんなに素晴らしい目標を設定したとしても、説明時間をとらずに「目標数字を書いた紙を渡すだけ」「メールで指示するだけ」といった目標の伝達には意味がありません。さきほども触れたとおり、目標を伝えるときには「自分の言葉で説明すること」がもっとも重要です。
さらに、部下に指示したあとは「本当に理解したのか」を確認することも重要です。目標を伝えたあと「では、この目標を自分なりにどう理解したのか言ってみてもらえますか?」と部下に語らせてみてください。きっと腹落ちしていない部下は表面的な回答しかせず、モチベーション高く取りくんでくれる部下は目をキラキラさせながら、目標達成までのビジョンを語ってくれることでしょう。
4. 社員のモチベーションを最大限引き出す「面談」の極意
社員のモチベーション維持には、上司と部下とのコミュニケーションが重要である点はさきほどもお伝えしたとおりです。ただ、やみくもに部下との時間を共有しているだけでは、部下の力を引き出すことはできません。ここからは、社員のモチベーションを維持するための「効果的な面談方法」について、いくつかのコツをご紹介します。
上司が話す割合は1割
部下との面談でよくあるケースとしてもっとも残念なのは「しゃべりすぎる上司がいる」ことです。面談の目的は部下の本音を引き出して弱い部分をサポートし、個人のパフォーマンスを最大化していくことです。効果的な面談での話す割合は「上司が1割、部下9割」です。また限られた面談の時間のなかで部下の本音を引き出すには、「上司の質問力」を鍛える必要もあるかもしれません。
1~2回の面談では本音は引き出せないと心得る
実際の職場では「年に1~2回業績面談を実施している」というところがほとんどだと思います。ただ、年に1~2回の面談では部下の本音を引き出すことはできません。もっとも、普段からプライベートを含んだ付き合いをしている部下ならまだしも、業務上の接点しかない部下ならなおさらです。
部下の本音を引き出して悩みを解決し、社員を成功に導くためには、最低でも3ヶ月に1度の面談、理想は1ヶ月に1度の面談を繰り返しおこなうことをおすすめします。「部下の本音は1度では引き出せない」と肝に銘じ、根気よく面談の時間を確保するようにしましょう。
面談で必要なキーワードは「なぜ?」ではなく「どうしたら?」
とくに業績評価の面談では実際の達成率などを目の前にし「この結果が出たのはなぜだと思う?」と、つい悪い成果が出た「理由を追求」してしまいます。もちろんPDCAを回すうえでは「原因を探るCHECK」はとても重要なポイントです。
ただ、過去を振り返る質問は部下のモチベーションアップにはつながりません。同じように成果が出なかった原因を探る場合でも「どうやったら改善できるだろうか?」と質問の仕方を変えてみて下さい。「なぜ?」と詰められるよりは、部下も前向きに改善策を考えてくれるはずです。
5. デジタルツールも使い方次第でモチベーションアップ
ちなみに、ここまでご紹介した「目標設定の仕方」「コミュニケーションのコツ」「社員のモチベーション管理」などを自己流でやるのは大変です。最後に社員のモチベーション管理に利用できる、いくつかのデジタルツールもご紹介しておきます。
Microsoft「Teams」
新型コロナウイルスの影響を受け、テレワーク中心のスタイルとなったいま、社内のコミュニケーションツールとしてTeamsを活用している企業も多いことでしょう。
たしかにTeamsがあればビデオ会議も可能ですし、上司と部下とのコミュニケーションも円滑にすすめることができます。ただ、「チームの掲示板を作ったのはいいが誰も投稿しない」「投稿した部下に上司が反応しない」といったことはよく聞く話です。このような状態になると、せっかくのデジタルツールも効果は半減します。
せっかくのコミュニケーションツールですから、ぜひ部下ひとり一人を理解するツールとして、全員が積極的に利用するよう心がけたいものです。
モチベーション管理にオススメ「人事評価シートDX」
日々の忙しい業務のなか、「目標管理とモチベーション管理」の両方をこなしていくためには、株式会社WorkVisionが提供する「人事評価シートDX」もオススメです。社員のモチベーションアップのためには今回のコラムでもご紹介したとおり「コミュニケーションの時間を多くとること」、そして「目標達成について社員ひとり一人が自分で考えること」がとても大切です。
■ わかりやすいシステムで目標が明確!
せっかく素晴らしい目標をたてたのに「目標管理システムが複雑」といった状態では、実績管理や数値入力に追われてしまい、社員が自己目標達成に向けて考える時間もなくなってしまいます。
「人事評価シートDX」は、普段使っている「Excel」がベースになったシステムですので、直感的にわかりやすく、煩雑な設定作業などもほぼ必要ありません。
■ 自己管理もカンタン
「人事評価シートDX」の実績管理はとてもシンプルなので、社員ひとり一人が自分の達成率をいつでも簡単に確認できるようになっています。
部下から上司へまたは上司から部下へ、タイミングを問わずチャット方式でコメントを共有できる機能もあります。
月次の達成度に合わせて、まずは部下に改善点を考えさせてコメントをもらい、その内容をもとに面談をすることも部下育成のためには有効かもしれません。
■ 気軽に面談できる仕組みを搭載
「頻繁な面談」といわれても、上司も部下も日々の仕事で追われているのが現実です。そのような忙しい現場においても「人事評価シートDX」はとても便利です。
「人事評価シートDX」には「面談予定機能」がついており、部下からも上司の予定をチェックして、空き時間に面談希望を入れることが可能です。「いつでも話を聞くよ……と言っておきながらいつも時間をとってくれない」という上司がいると、部下のやる気も半減します。
ぜひ「人事評価シートDX」の面談予定表機能を使って、継続してコミュニケーションをとることをおすすめします。
6. まとめ
社員のモチベーションを維持するためには、メンバーひとり一人の努力や改善が重要です。しかし、今回のコラムでもお伝えしたとおり、社員がモチベーションアップできるかどうかは、上司の意識や行動にかかっています。
社内研修やセミナーを通してメンバーレベルのスキルアップを図るのも大切ですが、なによりも優先すべきなのは「上司向けの教育計画」かもしれませんね。
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