必要なことは「業務フローの抜本的な見直し」と「総務人事部門の再編」

2020年09月24日

カテゴリ:社会保険労務士

第14回 アフターコロナに向けて行うべき総務・人事業務の見直し②

INDEX

社会保険労務士 深瀬 勝範

日本企業は、アフターコロナに向けて、「リモート化、ペーパーレス化、複雑な労働時間管理への対応」および「戦略人事」の4つをキーワードとして、総務・人事業務の見直しを行っていかなければなりません。今回は、総務・人事業務の見直しのポイントと進め方について、説明します。

1. まず、現在の業務フローの抜本的な見直しから始めること

「業務のリモート化、ペーパーレス化は、従来の仕事をパソコンで行えばよいだけ」
「どんなに複雑な労働時間管理が必要になっても、従来の業務フローで対応できる」
などと考えている人がいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。
総務・人事業務のリモート化、ペーパーレス化および複雑な労働時間管理への対応を行うときに、まず必要になることは、「従来の業務フロー(仕事の流れ)の抜本的な見直し」です。今の業務フローを残したままIT化や働き方改革対応を進めようとしても、うまくいきません。

業務のリモート化、ペーパーレス化を進める上では、まず、一つひとつの書類の作成から提出までの一連の流れを見渡して、そこで行われているチェックをAI(人工知能)等により自動的に行うことができるようにする、上司による承認などの手続きを極力少なくする等、業務フローの抜本的な見直しを行うことが必要です。

このような業務フローの見直しが行われないままリモート化やペーパーレス化を進めると、総務人事担当者が電子申請された書類をわざわざ紙に打ち出してからチェックしなければならない、メールを開かない上司がいると承認の流れがストップして手続きが遅れてしまう等の問題が生じて、かえって業務効率が落ちてしまいます。

また、テレワークやフル・フレックスタイム制などの「各自が働く場所と時間を選ぶ仕組み」が広がってくると、「従業員が一つの場所で働いていて、上司が部下の労働時間を目で見て確認できる」という大前提が崩れてくる、あるいは「2時間働いたら、1時間プライベートの時間とする」というように就業と不就業が混在する働き方が出てくるなど、従来の労働時間管理の業務フローでは対処できなくなります。

したがって、各自の労働時間の把握を上司の確認以外の方法で客観的に行う(例えば、パソコンのログイン・ログオフの時刻を記録する)、各人の就業、不就業時間の状況をAIが確認する等のことができるように、業務フローを変えなければなりません。

このように、総務・人事業務のリモート化、ペーパーレス化および複雑な労働時間管理への対応を行うときには、まずは、従来の業務フローを抜本的に見直したうえで、新しい業務フローについてシステム化していく、という段取りで進めることが必要です。

2. 労働時間の把握を客観的に行うには、クラウド打刻サービスの利用が有効

なお、テレワークで各自の労働時間の把握を上司の確認以外の方法で客観的に行うには、クラウド打刻サービスを利用するのが有効です。

クラウド打刻サービスは、テレワークでの出勤・退勤、休憩時間・終了、パソコンのログイン・ログオフの各時間を客観的に記録し、 そのデータを勤怠管理システムへ連携できます。パソコン、タブレット、スマートフォン、ICカード活用など、多様な打刻方法が提供されています。

3. 現在の「総務人事部門の組織体制」が、業務フロー見直し・システム化の障害になりうる

さて、総務・人事業務の業務フローの見直しとシステム化を進めるにあたり、大きな障害になるものが一つあります。それは、現在の「総務人事部門の組織体制」です。

中堅企業や大企業の総務人事部門は、採用課、人事課、総務課などの職務ごとに細分化された組織が構築され、それぞれの組織ごとに、採用システム、給与計算システムなどの業務支援を行うシステムを運用しています。この総務人事部門の中で複数のシステムが存在することが、データの受け渡しに伴う確認などのムダな作業を発生させるのです。

業務フローの抜本的な見直しやシステム化を進めるときには、業務全体を見渡してムダな作業を大胆に削減できるように、現行の総務人事部門を大ぐくりな組織体制に再構築することが求められます。

なお、ここで紹介したような業務フローの見直しを行うと、総務人事部門は、これまで多くの時間をかけて行ってきた書類のチェック、労働時間や給与の計算等の作業から解放され、その分の時間を、人事情報の分析や人事戦略の構築に振り向けることができるようになります。

つまり、業務フローの見直しにより、総務人事部門は「経営企画部門」として再編することが可能になり、そこでアフターコロナに向けたキーワードの4つ目にあげた「戦略人事」を実現していくのです。

4. アフターコロナは、「戦略人事」によって、企業間競争の優劣が決まる

アフターコロナの時代には、「経営企画部門」として再編された総務人事部門が、「戦略人事」を実現できているかどうかによって、企業間競争の優劣が決まるといってもよいでしょう。

ですから、総務人事関係者は、厳しい状況下にあっても、アフターコロナに向けて「業務フローの抜本的な見直し」と「総務人事部門の再編」を進めて、戦略人事を実現する体制を整えていかなければなりません。

ところで、総務・人事業務の見直しを行う中で、現行の人事総務システムを再構築すること、または、給与計算などを委託している業者(アウトソーサー)の見直しを検討すること等が、一つの課題となります。そこで、次回のコラムでは、人事総務システムの再構築やアウトソーサーの選定のポイントについて説明したいと思います。

投稿者プロフィール欄

社会保険労務士 深瀬 勝範

Fフロンティア株式会社代表取締役。人事コンサルタント。社会保険労務士。
1962年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社などを経て、経営コンサルタントとして独立。
人事制度の設計、事業計画の策定などのコンサルティングを行うとともに執筆・講演活動など幅広く活躍中。

深瀬 勝範

人件費の適正化、コンプライアンス、
社員の健康管理サポートなど、
働き方改革に対応する就業管理システム

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