2025年10月28日
カテゴリ:総務
経営企画とは、企業の持続的な成長を実現するために、経営層の意思決定をサポートし、会社全体の舵取りを担う職種です。
本記事では、経営企画の具体的な仕事内容から、求められるスキル、そしてその後のキャリアパスに至るまで、網羅的に解説します。
INDEX
経営企画とは?企業の未来を描く司令塔の役割
経営企画とは、企業の経営戦略を策定・実行する役割を担う職務や組織を指します。
その目的は、企業ビジョンを実現するために、経営陣の参謀として会社全体の方向性を定めることです。
コーポレート部門の中でも花形部署とされ、企業の未来を左右する重要なポジションといえます。
わかりやすく言うと、経営企画の役割は、企業の進むべき道筋を描き、経営を最適化するための司令塔です。
例えば、中期経営計画の策定や新規事業の投資判断など、その業務は多岐にわたります。
呼称として、「経企」と略されることもあります。
経営企画の具体的な仕事内容を4つのフェーズで解説
経営企画の仕事内容は非常に幅広く、企業によっては「何でも屋」と表現されることもあります。
しかし、その中核となる経営企画業務は、企業の課題を発見し、改善策を立案・実行する経営管理に集約されます。
具体的には、経営戦略の策定から予算管理、新規事業の立ち上げ、IR活動、M&Aの推進、さらには組織全体のマネジメントまで多岐にわたります。
つまり、経営企画部は、法務や総務といった管理部門と連携し、リスク管理を行いながら、経営陣が最適な意思決定を下せるようサポートする重要な組織です。
会社の方向性を定める経営戦略の策定
経営企画の最も重要な業務は、会社の羅針盤となる経営戦略を策定することです。
市場のトレンド、競合の動向、自社の強みや弱みといった内外の環境を多角的に分析し、会社が中長期的に目指すべき方針を明確化します。
この分析に基づき、具体的な数値目標を含む中期経営計画を策定し、全社で共有する目標を設定していきます。
どの事業領域に経営資源を投入し、どの分野を縮小・撤退するのかといった経営の根幹に関わる重要な判断材料を提供し、企業の持続的成長に向けた戦略を描きます。
戦略を具体的な事業計画へ落とし込む
策定された経営戦略は、それだけでは絵に描いた餅に過ぎません。
経営企画は、この抽象的な戦略を、各部門が実行可能な具体的な事業計画へと落とし込む役割も担います。
全社的な目標を達成するために、各事業部や部署ごとのKPIを設定し、それに基づいた予算策定や予算編成を行います。
このプロセスでは、戦略を具体的な数字に変換する能力が不可欠です。
各部署と密に連携を取りながら、現実的かつ挑戦的な予算を組み立て、戦略の実行性を担保することが求められます。
各プロジェクトの進捗管理と効果測定
計画を立てて終わりではなく、その実行を管理し、成果を評価することも経営企画の重要なタスクです。
策定した経営戦略や事業計画がスケジュール通りに進んでいるか、各部署のKPI達成度を定期的にモニタリングします。
進捗が芳しくない場合は、その原因を分析し、軌道修正のための改善策を提案しなければなりません。
また、実行された施策が実際にどれほどの効果をもたらしたのかを、客観的なデータや統計を用いて評価し、次の戦略立案に活かすためのフィードバックを行います。
経営陣の意思決定をサポートする情報提供
経営企画は、経営陣が的確な意思決定を下せるよう、質の高い情報を提供する役割も担います。
取締役会や経営会議といった重要な会議に向けて、議題に関する市場データ、競合分析、社内状況などの情報を収集・分析し、資料としてまとめます。
単なる情報収集に留まらず、複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを明確にすることで、役員が最適な判断を下せるようにサポートします。
時には経営陣の秘書的な役割を担い、取締役の議論が円滑に進むようファシリテーションを行うこともあります。
経営企画と事業企画の役割はどう違うのか
経営企画と事業企画は混同されやすい職種ですが、その役割には明確な違いがあります。
経営企画が全社的な視点から、企業の持続的成長を目指す長期的な経営戦略を扱うのに対し、事業企画は特定の事業部に所属し、担当事業の売上や利益を最大化するための短中期的な戦略を立案・実行します。
つまり、経営企画は「全社最適」を追求し、複数の事業を横断的に見るのに対して、事業企画は「事業最適」を追求する立場です。
この視点の違いが、両者の役割を分ける最も大きなポイントになります。
経営企画に求められる6つの必須スキル
経営企画の職務を遂行するためには、高度で多岐にわたるスキルが求められます。
企業の現状を正確に把握するための会計知識やデータ分析能力、未来の戦略を描くための企画力、そして社内外の関係者を動かすためのコミュニケーション能力など、必要なスキルは非常に多いです。
会社の財務状況を読み解く会計・財務知識
経営企画には、企業の財政状態や経営成績を正確に把握するための会計・財務知識が不可欠です。
損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)といった財務諸表を読み解き、自社の経営課題を数字の面から発見する能力が求められます。
特に、事業部門ごとの収益性を分析したり、投資判断の材料としたりする際には、管理会計の知識が重要になります。
経理などの管理部門が作成したデータをただ受け取るだけでなく、その数字が持つ意味を深く理解し、経営戦略に結びつける力が不可欠です。
事業の課題を見つけ出すデータ分析能力
客観的な事実に基づいて経営課題を特定するために、データ分析能力は極めて重要です。
営業データや市場調査の結果、財務情報など、社内外に存在する膨大なデータを収集・分析し、そこから意味のある示唆を導き出すスキルが求められます。
例えば、特定の製品の売上が落ち込んでいる場合、その原因が市場の変化にあるのか、あるいは営業活動に問題があるのかをデータから突き止めます。
これにより、感覚的な判断ではなく、事実に基づいた戦略立案やリスクの特定が可能になります。
論理に基づいた戦略を立てる企画力
収集・分析した情報をもとに、企業の進むべき道筋を描く企画力は、経営企画の核となるスキルです。
現状分析から課題を抽出し、その解決策として具体的で実行可能な戦略を論理的に組み立てる能力が問われます。
なぜその戦略が最適なのか、どのようなプロセスで実行し、どのような成果が期待できるのかを、誰に対しても分かりやすく説明できなければなりません。
企業の経営資源には限りがあるため、優先順位をつけ、最も効果的な打ち手を立案する戦略的思考が不可欠です。
市場や競合の動向を掴むマーケティングスキル
自社が置かれている市場環境を正しく理解するために、マーケティングスキルは欠かせません。
顧客のニーズや市場のトレンド、競合他社の戦略などを常に把握し、自社の事業戦略に反映させる必要があります。
特に、日本国内だけでなく海外市場も視野に入れる場合、各地域の市場特性を理解した上での分析が求められます。
これらのマーケティング情報を基に、自社の強みを活かせる市場機会を発見したり、競合の脅威に対する対抗策を講じたりすることが、企業の競争優位性を確立する上で重要です。
関係者を動かすためのプレゼンテーション能力
どれほど優れた戦略を立案しても、それが経営陣や各部門の担当者に理解され、実行されなければ意味がありません。
経営企画には、自身の考えを論理的かつ説得力をもって伝えるプレゼンテーション能力が求められます。
複雑なデータや分析結果を分かりやすく図やグラフにまとめ、ストーリー性のある説明で相手の納得感を引き出す技術が必要です。
特に、経営会議などの場で、限られた時間内に意思決定者たちを説得し、全社的な協力体制を築くための調整を行う上で、この能力は不可欠となります。
社内の調整を円滑に進めるコミュニケーション能力
経営企画の仕事は、社内のさまざまな部署と連携して進めることがほとんどです。
全社的な戦略を実行するためには、事業部門、管理部門、技術部門など、立場や意見の異なる関係者の協力を得る必要があります。
そのため、相手の意見に耳を傾ける傾聴力と、異なる意見をまとめ上げる調整力を兼ね備えた高度なコミュニケーション能力が不可欠です。
各部署との信頼関係を築き、時には粘り強く交渉することで、全社一丸となって目標に向かう体制を作り上げることが求められます。
こんな人が向いている!経営企画で活躍できる人材の4つの特徴
経営企画は、企業の中枢を担う重要なポジションであるため、誰にでも務まるわけではありません。
この職務には特有の適性があり、特定の志向性や能力を持つ人材が活躍しやすい傾向にあります。
高度な専門知識を身につけるための研修機会が用意されることもありますが、それ以前に個人の資質が問われることが多いのです。
ここでは、経営企画に向いている人や、この分野で成功する人に共通する特徴を解説します。
会社全体の成長に貢献したいという意欲がある人
経営企画は、特定の事業や部署の成果ではなく、会社全体の成長をミッションとする仕事です。
そのため、部分的な最適化に留まらず、常に全社的な視点から物事を考え、企業全体の発展に貢献したいという強い意欲を持つ人が向いています。
自分の仕事が会社全体の未来に直結するという事実にやりがいを感じ、企業の成長を自分自身の喜びとして捉えられることが重要です。
この当事者意識が、困難な課題に直面した際の原動力となり、質の高いアウトプットを生み出す理由となります。
部署や役職にとらわれず広い視野で物事を考えられる人
経営企画の業務では、特定の部署や役職の利害にとらわれず、常に会社全体にとっての最適解が何かを考える必要があります。
各事業部門からは、自部門の利益を優先する意見が出てくることも少なくありません。
そうした状況下で、客観的かつ俯瞰的な視点を保ち、利害関係を調整しながら全社的なゴールへと導く力が求められます。
過去の慣習や既存の枠組みに固執せず、常に広い視野で物事を捉え、ゼロベースで思考できる柔軟性を持つ人材が活躍できるでしょう。
複数のタスクを同時に効率よく進められる人
経営企画の担当者は、中期経営計画の策定といった中長期のプロジェクトから、経営会議の資料作成といった短期的な業務まで、性質の異なる複数のタスクを同時に抱えることが常態化します。
特に、少数精鋭で運営されることが多いスタートアップやベンチャー企業では、その傾向が顕著です。
そのため、優先順位を的確に判断し、限られた時間の中で効率的に業務を処理するマルチタスク能力が不可欠です。
よって、タスク管理能力と自己管理能力に長け、計画的に仕事を進められる人が求められます。
プレッシャーの大きい環境でも成果を出せる精神力がある人
経営企画は、会社の経営を左右する重要な意思決定に深く関わるため、その責任は非常に重く、大きなプレッシャーが伴います。
経営陣からの高い期待に応え、時には厳しい意見や批判を受け止めながらも、冷静に業務を遂行し、着実に成果を出す必要があります。
また、扱うテーマは抽象度が高く、簡単に答えが出ない難しい問題ばかりです。
このようなストレスフルな環境下でも、精神的な強さを保ち、粘り強く課題解決に取り組めるレジリエンス(精神的な回復力)を持つことが、この職務で成功するための重要な資質です。
経営企画の仕事で得られるやりがいと厳しさ
経営企画は、企業の「花形」部署と称されることもある魅力的な職種ですが、その裏には大きな責任と厳しさが伴います。
経営層と近い距離で働き、会社全体の成長に直接貢献できる点は、他では得難い大きなやりがいとなります。
一方で、その影響力の大きさゆえに、常に高い成果を求められ、全社を巻き込む重圧と向き合わなければならないという厳しさも存在します。
ここでは、経営企画の仕事がもたらす光と影の両側面を見ていきます。
やりがい:会社の中核として事業成長を牽引できる
経営企画の最大のやりがいは、会社経営の中枢に身を置き、自らの手で企業の未来を創り上げていける点にあります。
経営陣と直接対話し、自らが策定に関わった戦略によって会社が成長していく過程を間近で見届けることができます。
自分の仕事が全社の事業に影響を与え、多くの従業員の働きがいにも繋がるという実感は、大きな達成感をもたらします。
また、経営の視点を養うことができるため、将来の幹部候補として見なされることも多く、キャリアアップの観点からも「出世コース」と見なされることが多い職務です。
厳しさ:全社を巻き込む責任の重さと求められる成果
経営企画の仕事には、常に大きな責任が伴います。
立案した戦略の成否が、会社全体の業績、ひいては従業員の生活にまで影響を及ぼす可能性があるため、そのプレッシャーは計り知れません。
特に大手企業では、動かす金額や関わる人数が大きくなるため、一つの判断ミスがもたらす影響も甚大です。
また、経営陣からは常に高いレベルの成果を求められ、客観的なデータに基づいた厳しい評価にさらされます。
各部署との利害調整も多く、全社を巻き込む難しさや板挟みになるストレスも、この仕事の厳しさの一つです。
経営企画へのキャリアチェンジに役立つ資格3選
経営企画への転職やキャリアチェンジにおいて、資格が必須というわけではありません。
しかし、特定の資格を保有していることは、求められる専門知識やスキルを有していることの客観的な証明となり、選考過程で有利に働くことがあります。
特に未経験からの挑戦の場合、学習意欲やポテンシャルを示す上で役立つ資格は大きな武器になります。
ここでは、経営企画の業務に親和性が高く、キャリアチェンジに役立つ代表的な資格を3つ紹介します。
経営コンサルティングの国家資格である中小企業診断士
中小企業診断士は、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格です。
この資格の学習過程では、企業の経営戦略、財務・会計、組織論、マーケティングなど、経営に関する幅広い知識を体系的に学ぶことができます。
そのため、資格取得のプロセスを通じて、経営企画に必要な知識と思考のフレームワークを網羅的に身につけることが可能です。
特に、中小企業の経営課題を分析し、具体的な改善策を提案する能力は、企業の規模を問わず経営企画の業務に直結するため、高く評価されます。
経理・財務の基礎知識を証明する日商簿記検定
日商簿記検定は、企業の財務諸表を読み解き、経営状況を数字で理解するための基礎的なスキルを証明する資格です。
特に、2級以上を取得していると、経理・財務に関する一定レベルの知識があると見なされ、高く評価されます。
経営企画の仕事では、予算策定や業績管理、投資判断など、財務データに基づいて意思決定を行う場面が数多くあります。
そのため、簿記の知識は必須の素養といえ、この検定を通じて得られる会計リテラシーは、あらゆる業務の土台となります。
会計分野の最高峰資格である公認会計士
公認会計士は、会計・監査のプロフェッショナルであることを証明する最高峰の国家資格です。
財務諸表の作成や監査に関する深い専門知識は、M&Aにおけるデューデリジェンス(企業価値評価)や、精度の高い業績分析、内部統制システムの構築など、経営企画の高度な業務において絶大な強みを発揮します。
会計士としてのバックグラウンドを持つ人材は、企業の財務戦略を担う上で非常に貴重であり、経営企画部門においても即戦力として高く評価される傾向にあります。
経営企画で経験を積んだ後のキャリアパス
経営企画部門での経験は、経営に関する包括的な知識とスキル、そして全社的な視点を養う絶好の機会です。
そのため、経営企画経験者は、その後のキャリアにおいて多様な選択肢を持つことができます。
社内での昇進はもちろん、より専門性の高い職種への転職や、経営幹部への道も開かれています。
企業の採用求人においても、経営企画での経験は高く評価されるため、自身のキャリアを戦略的に築いていく上で大きな強みとなります。
ここでは、代表的なキャリアパスを紹介します。
企業の課題解決を支援する経営コンサルタント
経営企画で培った課題発見能力、戦略立案スキル、論理的思考力は、経営コンサルタントの業務に直結します。
自社という内部からの視点だけでなく、客観的な第三者としてさまざまな企業の経営課題解決を支援する仕事です。
多様な業界や企業のプロジェクトに関わることで、より視野を広げ、専門性を高めることができます。
また、経営企画経験者は、事業会社側の事情を深く理解しているため、クライアントに寄り添った現実的な提案ができるという強みがあります。
企業の財務戦略を担うCFO(最高財務責任者)
経営企画の業務を通じて培った財務分析能力や予算管理、資金調達、M&Aなどの経験は、企業の財務戦略全体を統括するCFO(最高財務責任者)へのキャリアパスに繋がります。
CFOは、CEOのパートナーとして、財務的な観点から企業価値の最大化を目指す重要な役職です。
経営戦略と財務戦略を一体として考える経営企画の経験は、CFOに求められる資質と合致しており、COO(最高執行責任者)と並んで経営の根幹を担うポジションへの有力なステップとなります。
企業のトップとして舵を取るCEO(最高経営責任者)
経営企画として、経営者の視点で全社的な意思決定に深く関与した経験は、将来的に企業のトップであるCEO(最高経営責任者)を目指す上での強力な基盤となります。
会社全体の事業運営を俯瞰し、中長期的なビジョンを描き、組織を牽引していく能力は、CEOに不可欠な資質です。
社内で昇進を重ねてCEOに就任する道だけでなく、経営企画で得た知見を活かして自ら起業し、自身の会社のCEOとなるキャリアパスも考えられます。
まとめ
経営企画は、企業の経営戦略策定から実行支援までを担う、極めて重要な役割を持つ職種です。
その業務は多岐にわたり、高度な専門知識とスキルが求められる一方で、会社全体の成長を牽引できる大きなやりがいがあります。
金融機関出身者や新規事業の立ち上げ経験者が活躍する事例も多く、企業の規模によって部門の人数や担当範囲は異なりますが、経営の意思決定に深く関与する点は共通しています。
本記事で解説した仕事内容やキャリアパスを参考に、自身のキャリアプランを検討してみてはいかがでしょうか。
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