目標管理制度(MBO)とは?メリットや対策について、実例も含めて解説

2025年12月12日

カテゴリ:総務

目標管理制度(MBO)は、組織の目標達成と個人の成長を両立させるためのマネジメント手法です。
従業員が自ら目標を設定し、その達成に向けて主体的に取り組むことで、モチベーション向上やスキルアップが期待できます。

しかし、適切な運用を怠ると、デメリットが生じたり、制度が失敗に終わったりする可能性もあります。

本記事では、目標管理制度の概要から、メリット・デメリット、そして運用を成功させるためのポイントについて詳しく解説します。

INDEX

目標管理制度(MBO)の概要と目的

目標管理制度(MBO)は、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱したマネジメント手法です。

企業全体の目標と従業員個人の目標を結びつけ、組織全体の成果向上と人材育成を目指すことを目的としています。
個々が自律的に目標達成に取り組むことで、業務効率の向上やモチベーション向上につながります。

目標管理制度(MBO)の定義

目標管理制度は、Management by Objectivesの頭文字を取りMBOと略されます。

経営学の父として知られるピーター・F・ドラッカーが1950年代から60年代にかけて提唱したマネジメント手法であり、従業員が上司と合意のもとで個人の業務目標を設定し、その達成度を評価する仕組みです。

MBOは、単なる人事評価制度ではなく、目標を通じて組織を動かすマネジメントの概念として位置づけられています。

目標管理制度の主な目的

目標管理制度の主な目的は、従業員一人ひとりが自身の業務目標に責任を持ち、主体的に行動する組織文化を醸成することです。
個人の目標と組織の目標を連動させることで、組織全体の目標達成に向けた一体感を高め、業績向上に貢献します。

また、従業員が自ら目標設定し、その達成に向けて努力することで、個人のスキルアップやモチベーション向上を促し、人材育成にもつながります。

さらに、目標が明確になることで評価基準の透明性が高まり、公平で納得感のある人事評価を実現することも目的の一つです。

目標管理制度と関連手法の違い

目標管理制度(MBO)と類似した目標管理手法として、OKR(Objectives and Key Results)やKPI(Key Performance Indicator)などが挙げられます。

これらの手法は、それぞれ目的や運用方法、評価軸に明確な違いがあります。

OKRと異なる点

OKR(Objectives and Key Results)と目標管理制度(MBO)は、どちらもマネジメントの手法ですが、その目的や運用方法に違いがあります。

OKRは、挑戦的で野心的な目標(Objective)と、その目標達成に必要な具体的な成果指標(Key Results)を組み合わせて設定するフレームワークです。

OKRの達成基準は60〜70%程度が理想とされ、あえて高い目標を掲げて従業員の成長を促す運用がなされます。

また、OKRは人事評価とは切り離して運用されることが多く、頻繁に(1〜3か月に1回程度)進捗確認が行われ、組織全体で目標達成に向けて一体感を持って取り組む文化が形成されやすいという特徴があります。

一方、目標管理制度(MBO)では、立場や役割に応じた適切な目標レベルで、達成基準は100%を目指します。
評価頻度は半年から1年に1回と比較的長く、その結果が人事評価や報酬に影響を与えることが一般的です。

目標管理制度のメリットとデメリット

目標管理制度(MBO)は、企業と従業員双方にとって多くのメリットをもたらす一方で、運用方法によってはデメリットや失敗につながる可能性もはらんでいます。

目標管理制度のメリット

目標管理制度を導入するメリットは多岐にわたります。

まず、組織と個人の目標や方向性を統一できる点が挙げられます。
従業員が会社のビジョンや経営方針を理解した上で自身の目標を設定することで、組織全体の目標達成に向けた貢献意識が高まります。

次に、従業員の主体性と自律性を向上させる効果があります。
自ら目標を設定し、その達成に向けて自己管理を行うことで、業務に対する自主性や積極性が高まり、モチベーション向上につながります。

また、目標が明確に設定されることで、評価の透明性と公平性が高まるというメリットもあります。
従業員は自分のパフォーマンスがどのように評価されるかを理解できるため、評価に対する納得感が生まれ、改善に向けた取り組みを検討しやすくなります。

さらに、目標達成に向けて創意工夫を凝らすことで、従業員のスキルやパフォーマンスの向上が期待でき、結果として組織全体の生産性向上にもつながります。

目標管理制度のデメリットと課題

目標管理制度には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや課題も存在し、これらが失敗につながることもあります。

まず、適切な目標設定が難しいという点が挙げられます。
定量化しにくい業務では曖昧な目標になりがちで、形骸化してしまうケースがあります。

また、従業員が低評価を恐れて達成しやすい低い目標を設定したり、逆に達成が困難な挑戦的な目標を設定することに抵抗を感じたりする可能性もあります。

次に、目標達成へのプロセスよりも結果のみが重視されがちになるリスクがあります。
これにより、短期的な数値目標を追い求め、本質的な成長や組織への貢献が見過ごされることがあります。

加えて、目標管理制度が単なるノルマ管理となり、従業員に過度な負担やプレッシャーを与え、モチベーション低下を招くこともデメリットです。

さらに、目標設定や進捗確認、フィードバックに多くの時間と労力がかかるため、特にメンバーが多い組織では管理職の負担が増大する傾向があります。

これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じなければ、目標管理制度は形骸化し、期待する効果を得られない可能性が高まります。

目標管理制度の運用ステップと成功のポイント

目標管理制度を効果的に運用するためには、いくつかの明確なステップを踏み、それぞれにおいて注意点を押さえることが重要です。
その運用を成功させるためには、適切なツールや研修の活用も不可欠です。

目標管理シートの書き方を理解し、振り返りや評価を適切に行うことで、制度の効果を最大化できます。

目標設定のステップと注意点

目標管理制度における目標設定は、従業員一人ひとりが自ら目標設定を行うことが最も重要です。

まず、経営層が明確な組織目標を決定し、それを管理職から現場の従業員に共有します。
この組織目標を基に、従業員は自身の個人目標を設定します。

この際、単なるトップダウンのノルマ設定ではなく、組織のビジョンを理解した上で自律的に目標を考えることが、従業員のモチベーション向上につながります。

目標設定の際には、「SMARTの法則」(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限設定)を意識することが重要です。

特に、目標は定量的で具体的な数値目標を設定し、誰が見ても達成度がわかるようにすることが効果的です。
曖昧な目標設定は、目標管理制度の形骸化やモチベーション低下につながる可能性があります。

また、目標は「少し頑張らないと達成できない」程度のストレッチ目標に設定することで、従業員の成長を促せます。

目標管理シートは、目標、評価基準、行動計画、達成期限、ウェイト、自己評価、上長評価、達成度、備考、所属長所見などの項目で構成され、具体的な書き方を参考にしながら作成することが求められます。

目標管理シートのテンプレートや例文を活用することで、スムーズな導入が可能です。

上司と部下で目標や進め方の認識を共有するために、十分なコミュニケーションと合意形成が不可欠であり、定期的な見直しも重要です。

効果的な振り返りと評価の実施

目標管理制度における効果的な振り返りと評価は、制度を成功させる上で不可欠な要素です。
目標設定と同様に、評価基準の透明性と一貫性を保つことが極めて重要です。

曖昧な評価基準や評価者ごとのばらつきは、従業員の不満や不信感を招き、制度そのものの信頼性を損なう可能性があります。
そのため、評価項目や判断基準をあらかじめ明確に示し、全従業員が共通認識を持てるようにすることが大切です。

目標管理シートには自己評価の項目が設けられており、従業員自身が目標達成度を振り返る機会となります。
この自己評価を基に、上司との間で定期的な面談を実施し、目標の進捗状況を確認するとともに、課題の把握と解決策の検討を行います。

フィードバックは、単に達成度を伝えるだけでなく、部下の成長を促し、目標達成をサポートする重要な機会として捉えるべきです。
評価の根拠をしっかりと伝え、次回の目標設定や行動計画に活かせるような建設的な対話が求められます。

特に、目標達成までのプロセスも評価の対象に含めることで、結果だけでなく努力や工夫が認められ、従業員のモチベーション維持につながります。

また、評価点数の定義を従業員に浸透させることも重要です。
例えば、目標数字100%達成が「3」評価となるなど、評価基準を明確にすることで、年度末の評価における認識のずれを軽減できます。

効果的な振り返りと評価は、従業員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献します。

運用を成功させるための対策

目標管理制度の運用を成功させるためには、いくつかの重要な対策を講じる必要があります。

まず、制度導入の目的を明確にし、その内容を制度設計や評価基準に反映させることが不可欠です。
目的が不明確なまま導入すると、単なる形式的な運用に陥り、制度そのものが形骸化してしまう可能性があります。

次に、従業員に制度の意義を理解させ、上司と部下間で目標や進め方の認識を共有することも重要です。
従業員自身が目標設定に主体的に関わり、上司がその過程をサポートする姿勢が求められます。

また、目標設定の段階から上司が部下と十分にコミュニケーションを取り、具体的な数値目標の設定や行動計画の策定を支援することが大切です。

特に、抽象的な目標設定になりがちな部署でも、目標を明確化し、管理職が具体的なアドバイスを提供できるよう、研修などを通じてマネジメント能力を向上させる必要があります。

管理職の負担を軽減するためには、目標管理ツールを導入することも有効な対策です。
これらのツールは、目標の進捗管理や評価プロセスを効率化し、管理職が部下へのフィードバックや育成に集中できる環境を整えます。

さらに、環境や組織方針の変化に応じて柔軟に制度を見直せる設計にすることで、常に実態に即した運用が可能になります。
定期的な研修を通じて、制度の目的や運用方法を従業員に再確認させ、モチベーションを維持する取り組みも重要です。

これらの対策を継続的に実施することで、目標管理制度は組織の成長と従業員のエンゲージメント向上に大きく貢献するでしょう。

人事評価システムの導入事例

目標管理制度(MBO)導入に際して、新たな制度対応に伴う業務負荷の増大やデータ管理の煩雑化など、いくつかの課題が発生することが想定されます。

そうした場合に、人事評価システムを活用することが成功の要因となる場合も少なくありません。

ここでは、WorkVisionでの具体的な導入事例を通して、成功のポイントを探ります。

流通業における人事評価システム導入事例

日本流通産業株式会社様では、これまで行ってきたExcel主体の評価制度から新たな制度への移行にあたり、社員への抵抗感の軽減と業務効率化を両立させるため、人事評価システムの導入を実施しました。

システムによって、これまでに使用してきた評価シートの形式を維持した状態で新制度へ移行できたため、スムーズに新制度を取り入れることができ、人事評価業務の評価者の負担をおよそ5割、人事総務の負担をおよそ6割削減することができました。

事例の詳細な情報については、下記のリンクよりご覧ください。

導入事例の詳細を確認する

製造業における人事評価システム導入事例

日本製紙株式会社様では、人事評価制度を取り入れているものの、進捗確認や評価・集計の業務効率に対して課題を抱えていました。

しかし、人事評価システムを導入することで業務進捗を可視化し、かつ情報の一元管理を可能にしたことで集計作業の業務負荷を大きく下げることができました。

事例の詳細な情報については、下記のリンクよりご覧ください。

導入事例の詳細を確認する

まとめ

目標管理制度(MBO)は、個人の目標と組織全体の目標を連動させるマネジメント手法であり、従業員の主体性やモチベーション向上に繋がるとされています。

MBOを導入する際には、経営目標や経営計画に沿った目標を設定し、今後の行動計画に基づいた資源や行動を分析し、準備を徹底した上で運用を推進することが成功のポイントとされています。

これにより、組織全体の目標達成率向上や部門パフォーマンスの改善、従業員のエンゲージメント向上といった効果が期待できます。

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