ウェルビーイングとは?意味や推進のポイントをわかりやすく解説

2026年01月08日

カテゴリ:総務

ウェルビーイングとは、身体的、精神的、そして社会的に良好で満たされた状態を示す概念です。

近年、個人の生き方や働き方が多様化する中で、企業経営においても従業員のウェルビーイングを高めることの重要性が認識されています。

この記事では、ウェルビーイングの基本的な意味から、企業が取り組むメリット、具体的な施策事例までを網羅的に解説します。

INDEX

ウェルビーイングとは?心と体の両方が満たされた状態を指す言葉

ウェルビーイングという言葉の定義は、1946年に署名されたWHO(世界保健機関)憲章の健康に関する前文にその起源を見ることができます。

そこでは、健康とは単に病気や虚弱でない状態を意味するのではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であると記されています。

この考え方が、現代のウェルビーイングの基本的な意味の土台となっており、一時的な幸福感とは区別される、持続的かつ多面的な幸福を表す概念として広く用いられています。

「ハピネス(Happiness)」との意味の違い

ウェルビーイングと「ハピネス(Happiness)」は、どちらも幸福と訳されることがありますが、その意味合いは異なります。

ハピネスは、喜びや楽しさといった一時的でポジティブな感情の状態を指すことが多いです。

一方、ウェルビーイングは、そのような短期的な感情だけでなく、人生に対する満足感や生きがい、心身の健康状態など、より広範で持続的な視点から見た幸福な状態を捉える概念です。

例えば、困難な目標に挑戦している最中は、必ずしも「ハッピー」な感情ではないかもしれませんが、その過程に意義を見出し、充実感を得ていれば、ウェルビーイングは高い状態にあると言えます。

ウェルビーイングを構成する2つの側面:主観的・客観的

ウェルビーイングは、大きく分けて主観的側面と客観的側面の2つの要素から構成されます。

主観的ウェルビーイングとは、個人が自身の生活に対して感じる満足度や幸福感といった内面的な評価を指します。

アメリカの心理学者エド・ディーナーは、この主観的ウェルビーイングを構成する要素として、人生への満足度、ポジティブ感情の多さ、ネガティブ感情の少なさを挙げています。

対照的に、客観的ウェルビーイングは、所得、学歴、健康状態、社会的地位など、外部から測定可能な指標に基づいています。

個人の状態を多角的に理解するためには、これら両方の側面から評価することが必要です。

ウェルビーイングが今、注目を集めている3つの理由

近年なぜ多くの企業や組織がウェルビーイングに注目するようになったのでしょうか。
その背景には社会や人々の価値観の変化が大きく影響しています。

働き方の多様化、経済的な豊かさだけではない幸福の追求、そして持続可能な社会への意識の高まりという3つの理由が挙げられます。

これらの潮流が個人と組織の関係性を見直し、ウェルビーイングを経営の中心的な課題として位置づける動きを加速させています。

理由1:働き方改革で個人の幸福度が重視されるようになった

働き方改革の推進は、ウェルビーイングへの関心を高める大きな要因となりました。

長時間労働の是正や多様な勤務形態の導入といった取り組みは、単に労働環境を改善するだけでなく、従業員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスを向上させることを目指しています。

これにより、従業員が心身ともに健康で、私生活においても充実感を得られる状態が、仕事における創造性や生産性の向上に直結するという認識が広まりました。

個人の幸福度が組織全体のパフォーマンスに与える影響の大きさが理解されるようになり、経営戦略として従業員のウェルビーイングを重視する企業が増加しています。

理由2:経済的な豊かさだけでは測れない価値観が広まった

社会が成熟するにつれて、経済面での成功や物質的な所有だけが幸福の指標ではないという価値観が浸透しました。

特に若い世代を中心に、自己成長の機会、良好な人間関係、社会への貢献といった非金銭的な要素を重視する傾向が強まっています。

就職や転職の際に、企業の理念や社会貢献活動、働きがいなどを重要な判断基準とする人が増えたことも、この変化を象徴しています。

企業は、従業員が仕事を通じて多面的な満足感を得られるような環境を提供することが、優秀な人材を惹きつけ、定着させる上で不可欠であると認識するようになりました。

理由3:持続可能な社会を目指すSDGsの目標と関連している

SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる社会像も、ウェルビーイングの重要性を後押ししています。

SDGsが目指す17の目標の中には、「すべての人に健康と福祉を(目標3)」や「働きがいも経済成長も(目標8)」など、人々の幸福に直接関連する項目が数多く含まれています。

企業がSDGsへの取り組みを推進することは、単なる社会貢献活動にとどまりません。

それは、従業員の健康や働きがいを尊重し、持続的な成長を実現するための経営戦略そのものと捉えられています。

社会全体の持続可能性を追求する流れの中で、その構成員である従業員のウェルビーイングが基盤となるという考えが定着しつつあります。

ウェルビーイングを高めるための代表的な考え方「PERMAモデル」

ウェルビーイングを具体的な要素に分解し、体系的に理解するためのフレームワークとして、ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・セリグマン博士が提唱した「PERMAモデル」が広く知られています。

このモデルは、持続的な幸福感を構成する5つの重要な要素の頭文字を取ったものです。

個人や組織がウェルビーイングを向上させるための具体的な行動指針となり、これらの要素をバランス良く満たすことが、より良い状態の実現につながるとされています。

P:ポジティブな感情(Positive Emotion)

PERMAモデルの最初の要素は「ポジティブな感情」です。これは、喜び、感謝、希望、楽しさ、愛情、誇りといった前向きな感情を日常的に経験することを意味します。

ポジティブな感情は、人々の視野を広げ、創造性や問題解決能力を高める効果があることが研究で示されています。

ポジティブな感情には、思考や行動の範囲を広げ、困難な状況に対する心理的な回復力(レジリエンス)を高める効果も確認されています。

職場においては、仕事の達成を認め合ったり、同僚と協力して成功を分かち合ったりする経験が、ポジティブな感情を育む機会となります。

E:物事への没頭(Engagement)

エンゲージメント(没頭)は、時間を忘れるほど何かの活動に深く集中している状態を指します。

一般的にフロー状態とも呼ばれ、強い充実感や満足感をもたらします。

人は、自身の持つスキルや強みを最大限に活かせる、適度な難易度の課題に取り組んでいるときに、この状態を経験しやすいとされています。

企業が従業員のエンゲージメントを高めるためには、挑戦的かつ達成可能な目標を設定させたり、業務に対する裁量権を与えたりすることが有効です。

没頭する経験は個人の成長を促すだけでなく、高いパフォーマンスにも直結する重要な要素です。

R:良好な人間関係(Relationship)

人間は本質的に社会的な存在であり、他者とのポジティブなつながりはウェルビーイングの基盤となります。

家族、友人、同僚といった人々との良好な人間関係は、精神的な支えとなり、人生に深い満足感をもたらします。

職場環境においては、信頼できる上司や同僚の存在、チーム内での円滑な協力体制が、従業員のエンゲージメントや定着率に大きな影響を及ぼします。

組織として、従業員同士のコミュニケーションを促進する機会を意図的に設け、誰もが安心して意見を言える心理的安全性の高い環境を構築することが、この要素を満たす上で欠かせません。

M:人生の意味や目的(Meaning)

意味・意義(Meaning)は、自分の存在が何か自分よりも大きなものの一部であり、それに貢献しているという感覚を指します。

単に快楽を求めるだけでなく、自分の行動に価値や目的を見出すことが、困難を乗り越える力となり、持続的な幸福感をもたらします。

企業においては、経営理念やビジョンを従業員と深く共有し、日々の業務が社会に対してどのような価値を提供しているのかを実感できる仕組み作りが重要になります。

自分の仕事に意味や目的を見出している従業員は、内発的なモチベーションが高く、組織への貢献意欲も強い傾向があります。

A:達成感(Accomplishment)

達成感は、目標を設定し、それを自らの力で成し遂げることによって得られる有能感や満足感を指します。

達成の経験は、大きな成功に限らず、日々の小さな目標を一つひとつクリアしていく過程でも得られます。

目標を達成することで自己効力感が高まり、それが自信となって次の新たな挑戦への意欲を引き出します。

企業としては、従業員が現実的で具体的な目標を設定できるよう支援し、その達成度を公正に評価し、適切なフィードバックを与える文化や制度を整えることが求められます。

成功体験を積み重ねる機会の提供が、従業員の成長とウェルビーイング向上に寄与します。

企業がウェルビーイング経営に取り組むメリットとは

企業が従業員のウェルビーイングを重視する経営、すなわちウェルビーイング・マネジメントを実践することは、社会的責任を果たすだけでなく、経営戦略上も多くのメリットをもたらします。

従業員が心身ともに健康で、仕事にやりがいを感じられる環境は、組織全体の活力を生み出し、企業の持続的な成長を支える基盤となります。

ここでは、ウェルビーイング経営がもたらす具体的な利点について、生産性や人材確保の観点から説明します。

生産性の向上や離職率の低下につながる

従業員のウェルビーイングが高い状態は、組織の生産性向上に直接的に貢献します。

心身が健康で、仕事へのエンゲージメントが高い従業員は、集中力や創造性を存分に発揮し、質の高い成果を生み出す傾向にあります。

また、働きがいがあり、良好な人間関係が築かれている職場は、従業員の満足度を高め、組織への帰属意識を強めます。その結果、離職率が低下し、採用や再教育にかかるコストの削減が見込めます。

企業はウェルビーイングを重要な経営指標と捉え、戦略的なソリューションを導入することが、競争力を高める上で有効な手段となります。

企業のイメージアップと人材確保に貢献する

従業員のウェルビーイングを大切にする企業姿勢は、社外に対してもポジティブなメッセージを発信します。

いわゆる「健康経営」や「ホワイト企業」としての評価は、企業のブランドイメージを向上させ、顧客や取引先からの信頼獲得にも貢献します。

特に、労働人口が減少していく中で、優秀な人材の確保は多くの企業にとって最重要課題です。

現代の求職者は、給与といった条件面だけでなく、企業の文化や働きがいを重視する傾向が強いため、ウェルビーイングへの積極的な取り組みは、採用活動において他社との大きな差別化要因となり、魅力的な人材を惹きつける力となります。

ウェルビーイング向上につながる企業の取り組み具体例

ウェルビーイング経営を実践するために、企業はどのような施策を導入しているのでしょうか。

そのアプローチは多岐にわたり、健康支援制度の導入から、働き方の柔軟性の確保、コミュニケーションを促す環境づくりまで様々です。

ここでは、多くの企業で採用されている具体的な取り組みの例を3つのカテゴリーに分けて紹介します。

これらの事例は、自社の状況に合わせて制度やシステム、サービスを検討する際の参考となるでしょう。

事例1:従業員の心身の健康をサポートする制度を導入する

従業員の心身の健康は、ウェルビーイングの土台をなす最も基本的な要素です。

多くの企業では、法定の健康診断に加えて、人間ドックの費用補助や婦人科検診の推奨など、より手厚い健康支援策を講じています。

また、メンタルヘルス対策として、専門家によるカウンセリングサービスを気軽に利用できる窓口を設置する例も増えています。

運動習慣の定着を促すために、スポーツジムの法人契約や、社内でヨガ教室、ランニングクラブといった活動を支援する企業もあります。

さらに、社員食堂で栄養バランスに配慮したメニューを提供するなど、食生活の面から健康をサポートする取り組みも有効です。

事例2:働きがいを高めるための柔軟な勤務体系を整備する

従業員一人ひとりのライフステージや価値観に合わせた働き方を可能にすることは、ワーク・ライフ・バランスの実現と働きがいの向上に直結します。

代表的な制度としては、場所を選ばずに働けるテレワークやリモートワークの導入が挙げられます。

また、始業・終業時刻を従業員が自主的に決定できるフレックスタイム制度や、育児・介護などと両立するための時短勤務制度も広く普及しています。

これらの制度は、従業員に時間的な裁量を与え、自律性を尊重することにつながります。

多様な働き方を選択できる環境を整えることが、従業員の満足度と組織の生産性の両方を高める上で効果的です。

事例3:コミュニケーションを活性化させるオフィス環境をつくる

良好な人間関係を育むためには、従業員同士の円滑なコミュニケーションが欠かせません。

そのための工夫として、オフィス環境を見直す企業が増えています。

例えば、部署や役職に関わらず誰もが自由に利用できるカフェスペースやリフレッシュエリアを設けることで、偶発的な会話が生まれる機会を創出します。

固定席を設けないフリーアドレス制の導入も、普段接点のない従業員同士の交流を促す効果が期待できます。

物理的な環境整備に加え、定期的な社内イベントの開催や、上司と部下が1対1で対話する1on1ミーティングの制度化なども、組織内の風通しを良くし、心理的安全性を高める上で有効な施策です。

自身のウェルビーイングを測るには?代表的な測定方法を紹介

個人や組織のウェルビーイングを向上させる取り組みを進める上で、まずは現状を客観的に把握することが第一歩となります。

現在では、個人の主観的な幸福度や満足度を数値化し、可視化するための様々な測定方法が開発されています。

ここでは、自身のウェルビーイングの状態を知るための代表的な測り方を紹介します。

これらの方法を用いることで、個人や組織の強みや課題を明確にし、より効果的な施策を検討することが可能になります。

人生の満足度をはしごに例える「キャントリルの梯子」

キャントリルの梯子(Cantril'sLadder)は、自身の人生に対する総合的な評価を直感的に測定するシンプルな方法です。

回答者は、0段目を「考えうる限り最悪の人生」、10段目を「考えうる限り最高の人生」としたはしごをイメージします。

そして、「現在、自分はそのはしごの何段目にいると感じますか」という問いに答えます。

さらに、「5年後には何段目にいると思いますか」と将来の予測についても尋ねることが一般的です。

この手法は、現在の満足度に加えて、将来への楽観度も測ることができ、個人の主観的な幸福感を捉えるための有効な指標として国際的な調査でも頻繁に用いられています。

5つの質問で幸福度を測る「人生満足度尺度」

人生満足度尺度(SWLS)は、心理学者のエド・ディーナーらによって開発された、主観的ウェルビーイングを測定するための信頼性の高い心理尺度です。

この尺度は、
① 私の人生は、ほとんど私の理想に近い
② 私の人生の諸条件は、すばらしい
③ 私は自分の人生に満足している
④ 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた
⑤ もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう
といった、5つの質問項目から構成されています。

回答者は、各項目について「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの7段階で評価します。

5項目の合計点数が高いほど、人生に対する満足度が高いと解釈され、個人の幸福度を客観的に比較・分析する際に広く利用されています。

国の幸福度を比較する「世界幸福度報告」

世界幸福度報告(World Happiness Report)は、国連の関連団体が毎年発表している報告書で、世界各国の国民の幸福度をランキング形式で示しています。

この報告書の主な指標となっているのは、「キャントリルの梯子」を用いた国民の主観的な人生評価です。

それに加え、一人当たりGDP、社会的支援(困ったときに頼れる人がいるか)、健康寿命、人生の選択の自由度、寛容さ(寄付などの経験)、腐敗の認識という6つの客観的な要因を用いて、各国の幸福度の背景を分析しています。

個人の状態だけでなく、国や社会といったマクロな視点からウェルビーイングを理解するための重要な資料となっています。

まとめ

ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に満たされた持続的な幸福の状態を指す言葉です。

企業経営において従業員のウェルビーイング向上に取り組むことは、生産性の向上や人材確保といったメリットをもたらし、組織の持続的成長の基盤となります。

このウェルビーイングの重要性は、ビジネスの領域にとどまらず、地域社会、福祉、教育といった分野でも広く認識されています。

企業が従業員一人ひとりの幸福を追求することは、組織を活性化させると同時に、より良い社会の実現にも貢献します。

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